第八十二話 新国家と連合陸軍の侵攻
1944年4月18日、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツといった国々の支援を受けて、モスクワを首都とする新生ロシア連邦が建国された。
大本営はこれに危機感を感じて、ロシアの最前線のノヴォシビルスクから撤退を決定。
しかし、ノヴォシビルスク守備隊司令官の牟田口廉也中将が大反発。
陸軍参謀総長の梅津美治郎大将は牟田口に大激怒。梅津は即刻、牟田口を解任して予備役に編入した。
後任には宮崎繁三郎中将が着任して守備隊の撤退を開始した。
―――4月25日―――
ブオォォォーーーッ!!
一機の艦上偵察機彩雲がバラビンスク上空を飛行していた。
「……ーーーッ!!あれはッ!!」
操縦士が何かを見つけた。
機長が見ると地上が黒い塊に覆われていた。
「通信士ッ!!ノヴォシビルスクに打電ッ!!敵機甲師団発見ッ!!」
「後方より敵機ッ!!」
機長が振り返ると三機のメッサーシュミットがいた。
ダダダダダダダダダッ!!
グワァァーーンッ!!
機銃弾がエンジンに命中して、彩雲は爆発四散した。
だが、彩雲が放った電文はノヴォシビルスクに届いた。
―――ノヴォシビルスク司令部―――
「連合軍の進撃が速い。下準備は完了していたようだな」
司令部で宮崎中将が呟く。
ノヴォシビルスクにはまだ一個中隊が残っていた。
「……だがこちらも下準備は完了している。全員、零式輸送機に搭乗だッ!!急げッ!!」
宮崎達中隊二百人は零式輸送機で一気にイルクーツクまで撤退した。
翌日、ノヴォシビルスクはロシア軍を主力とする連合軍に占領された。
「……もぬけの殻……か」
呟くのはロシア陸軍総司令官のジューコフ元帥である。
「どうやら敵はここを放棄して、クラスノヤルスク辺りまで逃げたのでは?」
参謀長のブルガーエフ大将が問い掛ける。
「恐らくそうだろう。だが、油断してはならん」
「はぁ…。ですが、ハルハ河では総司令官は勝利したのではないですか」
ブルガーエフの言葉にジューコフは苦笑した。
「確かに勝利はしたが、実質的には痛み分けだ」
「だがなブルガーエフ。ヤポン(日本)を侮ってはいかんぞ?」
ジューコフは宿舎に戻った。
ブルガーエフはジューコフの背中から何かを感じた。
―――十日後、クラスノヤルスク―――
「……いませんでしたな」
無人と化した街をジューコフとブルガーエフが歩く。
「奴らは何処まで逃げたのでしょうか?」
「……恐らくイルクーツクだ」
「何故ですか?」
「最初はクラスノヤルスクかと思ったが、主力をクラスノヤルスクに集めたら敗走時はタイシェトやトゥルンにある険しい山並みを越えなければならない。逆にイルクーツクだと険しい山並みはないし、またウランウデには日本軍が建設した多数の滑走路を持つ航空基地がある。イルクーツクで防衛したらウランウデの航空隊で上空支援をしてもらうつもりだろう」
「あッ?!しかし、どうしますか総司令官?」
「……とりあえずトゥルンまで進撃してみよう。それからだ」
「分かりましたッ!!全軍出撃だッ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴッ!!!
百両以上のT―34が地響きを上げて進撃した。
―――トゥルン―――
ジューコフは念入りの偵察をさせて5月15日にトゥルンを占領した。
「ここで援軍を待とう。モスクワに打電だッ!!」
それから五日間、連合軍はジューコフ元帥の要請を受諾してシベリア鉄道を利用して兵員や戦車、野砲、重砲をトゥルンに送った。
「報告します。兵力は我がロシア軍が八十万、ドイツ軍が三十万、イギリス、アメリカ軍が五万ずつで計百二十万です。戦車はT―34が三百両、スターリンが二百両、ティガーが二百両、四号戦車が三百両、クルセイダーが二百両、M4が四百両の計千六百両です。また、野砲は十万門、重砲は五万門です。航空機は戦闘機が二千機、爆撃機が一千機です」
「ご苦労だブルガーエフ」
スッとジューコフが椅子から立ち上がる。
「では……」
「うむ、これくらいの航空支援なら何とかなるだろう。……全軍ッ!!進撃を開始せよッ!!目標、イルクーツクだッ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴッ!!!
ジューコフ元帥率いる連合陸軍は全兵力を上げてイルクーツクを目指した。
だが、日本軍もただでは済まさない予定である。
次回は戦車戦になると思います。
またトゥルンの辺りが山並みだとか書いてますが地図帳を見て判断してますのでご了承下さい。
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