第八十一話 米海軍の復活
大学の入学式やらで遅くなりました。
―――4月15日ニューヨーク沖―――
ニューヨーク沖に、巨大な産業力で復活したアメリカ艦隊が隊列を整えて巡航で航行していた。
―――アメリカ艦隊旗艦アイオワ―――
「……ようやく……ようやくここまで来たぞ……」
呟くのは車椅子に座っているルーズベルト大統領である。
ルーズベルトの傍らにはノックス海軍長官とスチムソン陸軍長官がいた。
「はい、合衆国国民のおかげで戦艦八隻、正規空母十二隻、中型空母六隻、護衛空母四十隻、巡洋艦二十四隻、駆逐艦八十隻が復活しました」
「引き続いて残りの艦艇の建造を急がせるのだ」
「了解しました」
ノックスが頭を下げる。
「やはり来年かね?」
「残念ながらそうです。練度が最低です」
ノックスが断言する。
「分かった。チャーチルとヒトラーと相談しよう」
実際、二人も決戦は来年と考えていた。
ルーズベルト達はそのままホワイトハウスに戻った。
「スチムソン」
「は」
「マスタングを空母機に改造できないだろうか?」
『……は?』
二人は思わず目が点になった。
「……大統領。それは本気ですか?」
スチムソンが我に還って問う。
「出来んことはないだろう。海軍の艦上戦闘機はヘルキャットとコルセアだが、マスタングはヘルキャットよりサイズが小さいからうまくいけるのではないか?」
確かにヘルキャットとマスタングのサイズはヘルキャットの方が大きい。
「……分かりました。あまりにも奇抜ですが、やってみましょう」
スチムソンは納得いかない表情だったが大統領命令だから仕方ない。
ノックスは少し期待していた。
「(マスタングならゼロを充分対処出来るが……デビル(烈風)やハンプ(陣風)だと苦戦するな。……だが……あのゴッド(特戦)には到底敵わないだろうな……)」
ノックスは戦場から送られてくる敵戦闘機の情報や写真を見てる時、ある一機の戦闘機の写真を見た。
烈風や陣風や零戦とは違う戦闘機。
形は零戦に似ているが戦場からの情報は大きく異なっていた。
『あいつはジークだと思って近づいたらいつの間にか落とされていた』
『あんなに綺麗な空戦をする戦闘機は初めてだ』
『敵の戦闘機なのに乗ってみたい』
と、恐れられたり憧れられたりしていた。
ノックスはこの戦闘機をゴッドと名付け、戦闘機部隊に「ゴッドと遭遇したら迷わず逃げろ」と布告していた。
「(恐らく、このアメリカでゴッドを倒せる奴はいないに近いだろう)」
ノックスとスチムソンはルーズベルトに頭を下げ、部屋を出た。
「……ノックス。日本を戦争に引きずり込むのは失敗だったな」
廊下を歩きながらスチムソンが口を開いた。
「……あぁ。だが、やるしかないだろうな」
「……海軍に全て押し付けてしまうな」
「なに、大丈夫だ」
「今度、一杯奢るよ」
「ありがとう。ところでスチムソン」
「何だ?」
「大統領はまたマンハッタンを進めてるみたいだ」
スチムソンは呆れ顔をした。
「またか……。大統領も好きだな」
「仕方ないさ。ではまた後で」
「あぁ」
二人は別れるがノックスは考えていた。
「(大統領はまたマンハッタンを始めてどうする気だ?………まさかッ?!)」
ノックスは何かを思い付いた。
「(……いや大統領もそこまではしないはずだ。……だが、我が…いや連合軍艦隊を捨てる気なら……考えるのはやめよう。少し疲れたな……)」
ノックスは自室へと向かうが一旦考えたルーズベルトの疑問を薙ぎ払う事は出来なかった。
「……何としてでもマンハッタンは成功せねばならんな」
大統領の自室でルーズベルトが眼鏡を取る。
「ヒトラーから科学者達を貸してもらうか。……ジャップが世界を握る事は絶対にさせてたまるか。決戦時に我が合衆国国民を犠牲にしてでも完成させねばな……」
ルーズベルトは徐に電話を取った。
「ロスアラモスに繋げ」
「ヘルキャットとマスタング。マスタングの方がサイズ小さくね?」とふと思い考えました。f^_^;
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