第七十一話 世界状況3
―――ホワイトハウス―――
「……そうか。インドはほぼ落ちたか」
「申し訳ありません大統領」
ルーズベルトにマーシャル参謀長が謝る。
「まぁやむを得ないな。だが、中東はしくじるな」
「はい」
「ハリー、B―29の生産はどうなっている?」
ルーズベルトは顧問官のハリー・ホプキンスに尋ねる。
「は。それが、シアトルの工場を爆撃されましたので約半年余りは大量生産は不可能です。他の社に任しますと一ヶ月の生産は二十機が限度です」
「やはり、シアトル爆撃が効いたな」
「はい、ですが民間の工員が死亡したので国民の間では『ジャップ撃滅』の声が高くなりました」
ハリーの言葉にルーズベルトがニヤリッと笑う。
「これで徹底抗戦の道が開かれたな」
「(それでいいのだろうか?)」
海軍長官のフランク・ノックスはルーズベルトの言葉に心の中で疑問を上げた。
「(我々の目的はナチス撃滅のはずではないのか?確かにジャップは野蛮な奴らだが、そこまで倒すべきではないはずだ。むしろ、仲間になるべきではないのか?インド洋大海戦でキングは捕虜になったが、奴らに親切な待遇を受けて韓国の海軍長官になったと聞いている。それに対してナチスはどうだ?ユダヤ人を迫害していると聞く。奴らに騎士道というものは無いのか?ジャップは武士道というが、ジャップのほうがいいのではないのか?)」
ノックスの疑問に答える者はいなかった。
―――1944年三月十日柱島泊地―――
「あ〜久しぶりの内地や」
第二機動艦隊旗艦瑞鶴の防空指揮所で椎名将斗中佐がぼやく。
「確かにな。将斗がぼやくのも無理はないな」
防空指揮所にいた榛名が呟く。
「B―29の迎撃のためインドにと第一機動艦隊が損傷したからハワイにと転戦したからな。……って榛名。何故貴様が此処にいる?」
瑞鶴が何故榛名が此処にいるのか疑問の声を上げる。
「ん?艦にいても暇だからな。てゆーか他の奴らもいるしよ」
榛名が指指す先には飛龍や金剛達がいた。
「……もう何も言わん」
瑞鶴はため息をついた。
「ところで将斗。空母に何を補給するのよ?」
白根が将斗に聞く。
「ん?ロケット弾やで。ようやく大量生産になったからな」
「へぇ〜ようやく配備出来たんだ」
「赤外線とレーダー追尾方式があったけど二つも勿体ないからレーダー追尾方式を採用してさらに三式弾を改造した噴進三式弾が正式採用されたからな。まぁ敵がレーダー追尾方式を無効にしたら赤外線追尾方式にするけどな」
将斗が瑞鶴達に説明する。
「よーするに金か」
「手痛いな」
白根の発言に将斗が苦笑する。
「将斗君。作戦が……って瑞鶴達もいたのか」
そこへ山口が来た。
「山口長官どうしました?」
「次回の作戦について話しがあるのだが……邪魔だったようだな」
「いえ、大丈夫です。……それで作戦とは?」
「うむ、次回は第一機動艦隊と共同作戦をする予定だ」
「おいおい、山口。今、第一機動艦隊はハワイだぞ?一体何処を攻撃するんだよ?」
榛名が山口に聞く。
「アリューシャン列島とアラスカの攻略作戦だ」
『ーーーッ!!!』
山口の言葉に瑞鶴達は驚愕の表情をした。
「……狙いはアラスカの資源ですね?」
「うむ、それもあるが米国の領土を直接攻略するという意味もある。ハワイはあまり効果が無かったからな」
そこへ通信兵が来た。
「山口長官。連合艦隊司令部より緊急入電ですッ!!」
通信兵の言葉にその場にいた全員が固まった。
「…あの…長官?」
通信兵は固まった二人(通信兵には艦魂が見えていない)に慌てた。
「お、おぉすまん」
山口は通信兵から通信紙を受け取った。
通信兵は山口と将斗に敬礼をして立ち去る。
「…一体何だろうか?」
山口が通信紙を見た。
「……何?」
山口が再び固まった。
「長官?」
翡翠が尋ねる。
すると山口は無言で将斗に紙を渡した。
紙を一目した将斗は声を出した。
「…『第二機動艦隊ハ、直チニ舞鶴ニ出撃セヨ。日本海デ不審ナ漁船数隻ガ舞鶴ニ向カッテイル。第二機動艦隊ハソノ不審漁船ヲ臨検セヨ。漁船ガ無視スル場合ハ、撃沈モ認メル』……以上や」
「ちょっと待て将斗。臨検ってどうゆう事だ?」
昴が将斗に聞く。
「……おそらくは韓国が原因やな」
韓国との言葉に全員が反応した。
この世界の韓国は日本からの独立後、李承晩が初代大統領となり、抗日連合軍長官だった金日成が副大統領になった。
本来なら金日成は暗殺する予定だったのだが、暗殺するたびに金日成ではなく影武者、また影武者といつの間にか変わっていたのだ。
将斗達は何とか暗殺したかったが、その前に独立をさせたので結局うやむやになってしまった。
そして、ひそかに大本営が韓国に諜報員を送っていたが、一ヶ月前、諜報員がある情報を手に入れた。
「金日成の親衛隊と称する部隊が漁船を整備して、何処かへ出港しようとしている」と報告された大本営は日本海を徹底的に索敵をしたが、一隻も見当たらなかった。
そこで、連合艦隊司令長官の山本五十六に舞鶴への艦隊駐留を頼み込んだ。
山本は期限付きならいいと承諾して今に至るというわけだ。
「……俺的に嫌〜な予感しかしぃひんねんなぁ」
将斗が冷や汗を流す。
「追加電です」
再び通信兵がやって来て、山口に通信紙を渡す。
「……将斗君。当たりだ」
山口が将斗に紙を渡す。
そこには『既ニ漁船ラシキ船ガ日本ニ到着シテイル可能性アリ』と書かれていた。
「……はぁ」
将斗がため息をついた。
山口多聞率いる第二機動艦隊は資材の積み込みが完了後、即座に出撃、速度二十七ノットに上げて舞鶴に向かった。
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