第七十話 デリー陥落ス
―――コタ飛行場―――
『帽振れェェェーーーッ!!』
拡声器からの声に、暇な対空火器員や、整備員達が惜別の意味である帽を振る。
整備員達が見詰める先には次々と滑走路を蹴り、広い大空へと飛び立っていくデリー攻撃隊がいた。
「さぁて、決戦だ」
双発爆撃機一式陸攻のなかで攻撃隊隊長の野中五郎中佐が呟いた。
攻撃隊は零戦五二型百二十機、六二型九十機、九九式艦爆百二十機、九七式艦攻九十機、一式陸攻百五十機、銀河百二十機、深山百二十機、疾風百二十機、五式戦闘機九十機、呑龍百二十機、九九式襲撃機百二十機、飛龍九十機が飛び立っていく。
五式戦闘機とは史実の五式戦闘機である。
名前がないため、五式戦闘機の名前募集しています。
攻撃隊は編隊を組むと銀翼連ねてデリーへと目指した。
同じ頃、地上部隊もデリーを占領するべく進撃を開始した。
「全軍出撃ッ!!」
デリー攻略部隊司令官の本間中将の号令と共に、部隊が動き始めた。
―――野中五郎中佐機―――
「デリーまで後何分だ?」
「後二十分もすればデリーです」
野中の問いに副操縦士が答える。
「二十分か……。俺は寝るぞ……Zzz」
野中は操縦を副操縦士に任せると寝だした。
「……敵基地に向かうっていうのに暢気な人だな」
副操縦士は溜息をついて前方を見た。
―――デリー航空基地―――
「全機出撃急げェェェーーーッ!!」
迎撃隊長のアーサー・ヘイル少佐は叫びながら愛機のメッサーシュミットに乗り込む。
ヘイルは計器に異常がないと確認するとエンジンにムチを入れて滑走路を飛び立った。
ヘイルが後ろを振り返ると相棒のミハエル・アーロン大尉が飛び立っていたところだった。
「アーロン。今度こそ奴らを叩きのめすぞッ!!」
『コーチンの仕返しですね』
「そうだ。今度こそ叩き落としてやるッ!!」
二機のメッサーシュミットは、後から上がってきた機と編隊を組むと奇襲をかけるべく上昇していった。
―――攻撃隊―――
「隊長。そろそろデリーですよ」
「ん……あ…あぁよく寝たな」
野中の攻撃隊は高度四千を飛行していた。その時、野中のレシーバーから前方を飛行している彩雲から報告が入る。
『敵戦闘機接近中ッ!!繰り返す、敵戦闘機接近中ッ!!数は約百五十機なりッ!!』
野中は動いた。
「制空隊は直ちに突撃だッ!!爆撃隊は密集隊形を作れッ!!」
『了解ッ!!』
制空隊隊長の新郷英樹少佐機と副隊長の横山保少佐機が前に出て、バンクをする。
『ヘイル隊長ッ!!ゼロが来ますッ!!』
アーロンがヘイルに告げる。
零戦は世界中で恐れられている戦闘機であった。
「格闘戦に巻き込まれるなッ!!一撃離脱で戦うんだッ!!」
ヘイルが慌てて列機に命令を出すが既に時遅く、格闘戦に巻き込まれてしまった。
「全機突撃準備だッ!!」
野中の命令に通信士が『トツレ』の電文を列機に送る。
ドオォォーーンッ!!
ドオォォーーンッ!!
地上からは対空砲火が火を噴いている。
「深山から爆撃開始だッ!!」
野中の命令を受けた深山隊は機体の腹にある爆弾倉を開いた。
ヒュウゥゥゥ……。
ヒュウゥゥゥ……。
爆弾倉から次々と小型の六十キロ爆弾と焼夷弾が地上に落ちていく。
ズズウゥゥーーンッ!!
ズガアァァーーンッ!!
町並みが次々と破壊されていくが、デリーには民間人はいない。
連合軍が無理矢理追い出したらしい。
普通なら民間人を楯にするが、逃げ出してきた民間人によるとデリー自体を要塞化にしたというのだ。
どうやら市街戦をやるみたいである。
だが、攻略部隊司令官の本間中将は大損害を嫌い、航空攻撃で出来るだけ敵の戦力を弱らせる事にしたのだ。
実際、デリー爆撃は野中らは二回目である。
「銀河隊、一式陸攻隊、飛龍隊、呑龍隊も爆弾を開始だ」
四隊も深山同様に爆弾倉を開いて大型の五百キロ爆弾や八百キロ爆弾を投下した。
これは地下道や弾薬庫を叩くためだ。
ズズウゥゥーーンッ!!
ズズウゥゥーーンッ!!
噴煙があちらこちらから舞い上がる。
「戦果は……判らんな。通信士、九九式艦爆隊、九九式襲撃隊に打電。『突撃セヨ』。九七式艦攻隊は敵飛行場を爆撃だ」
「了解ッ!!」
通信士がキーを叩き出す。
野中機の無電を傍受した九九式艦爆隊、九九式襲撃隊が急降下、低空攻撃に移る。
九七式艦攻隊も高度三千から敵飛行場に爆撃を開始した。
「おぅおぅ、順調だな」
野中が眼下の地上を見ていた。
その時である。
「……アァアッ!?」
奇妙なうめき声を野中が上げた。
野中の目に九機編隊の内、五機の九九式襲撃機がいきなり火を噴きながら落ちていくのが写っている。
「どーなってんだ?」
野中は首を傾げる。
もしや、敵の新型兵器かと思ったが副操縦士の声が聞こえた。
「違います隊長ッ!!あれですッ!!今の五機はあれにやられたと思いますッ!!」
副操縦士の指さす先には何ともけったいな形の砲塔を装備している対空戦車がいた。
「隊長ッ!!あれはドイツ軍の4号対空戦車ヴィルベルヴィントですッ!!」
「何ィィィーーーッ!!」
流石の野中も驚きの声を上げた。
「超兵器のヴィルベルヴィントかッ!?」
「何でやねんッ!!」
後部にいた機銃手が思わずツッコミを入れた。
「……そのネタ分かる人いるんすか?」
若干冷や汗を描きながら副操縦士が呟く。
「多分、分かる奴はいるだろう」
野中がヴィルベルヴィントの数を数える。
「全部で八両か。む〜、全機投弾完了したか?」
「いえ、まだ九九式艦爆隊の十二機と九九式襲撃機七機が残っています」
「ヴィルベルヴィントは攻撃するなと伝えろ。下手をすると十九機とも落とされてしまう」
通信士がキーを打とうとした時、まだ腹に二百五十キロ爆弾を抱えている九九式艦爆十二機がヴィルベルヴィントに向かって急降下を開始した。
「馬鹿野郎ッ!!攻撃を中止しろッ!!」
野中が慌てて中止命令を出すが、急降下に入った九九式艦爆には聞こえない。
ドドドドドドドドッ!!
ヴィルベルヴィントから放たれる機銃弾が次々と九九式艦爆に命中する。
ボゥ…ボゥ…ボゥ…。
たちまち八機の九九式艦爆が火を噴いて地上に落ちていく。
残りの四機は四両のヴィルベルヴィントに二百五十キロ爆弾を叩きこんだ。
ズガアァァーーンッ!!
ズガアァァーーンッ!!
さらに、九九式襲撃機七機がヴィルベルヴィントの隙をついて、撃墜覚悟の低空飛行から二百五十キロ爆弾を投下した。
ヒュウゥゥ…ズガアァァーーンッ!!ズガアァァーーンッ!!
残っていた四両も破壊されてしまった。
結果的に八両とも破壊したが、先の五機を合わせると十三機も失ってしまったが、大多数の搭乗員は脱出している。
「……たく。帰ったらお灸をすえなゃあかんな」
野中は深いため息をついた。
攻撃隊は傷つきながら帰還した。
「砲撃開始ッ!!」
ドドオォォーーンッ!!
ドドオォォーーンッ!!
五時間後、本間中将の攻略部隊がデリーを包囲して、海軍から譲ってもらった二十.三センチ砲を改造した二百三ミリ榴弾砲三十門で砲撃を始めた。
ズガアァァーーンッ!!
ズガアァァーーンッ!!
噴煙が次々と舞い上がる。
「戦車部隊は突撃せよッ!!」
本間中将が突撃命令を出し、三式戦車が突撃をする。
ドオォォーーンッ!!
ドオォォーーンッ!!
三式戦車の百五ミリ砲が狙撃兵が隠れていそうな所を手当たり次第砲撃する。
「司令官。戦車部隊から入電です。敵はほとんどいないみたいです」
参謀の報告に本間は頷く。
「うむ、なら歩兵部隊も突撃しろ」
「ハッ!!」
歩兵部隊もデリーに突入するが、連合軍はデリーを放棄したらしい。
足止め用として歩兵五百名がいたが、最初の三式戦車の突撃に恐れをなして我先にと逃げ出してしまった。
逃げ遅れた約五十名が捕虜となった。
こうして、インドはほぼ日本の領土となった。
大学受かりました(#^.^#)
いや〜よかったよかったです。五式戦闘機の性能は次回辺りになります。
最近ネタが無くなりつつありそうですf^_^;
まぁそれでも最後までやりますけどね。御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m