第七話 シンガポール奇襲上陸作戦
十二月八日、シンガポールから東北東約二百五十キロ地点に空母艦隊がいた。空母の数は八隻。真珠湾攻撃部隊と一緒である。だが八隻の空母には二段空母はいない。その空母艦隊は角田少将率いる第三機動部隊である。空母は龍驤、神驤、飛鷹、隼鷹、瑞穂、日進、神威、能登呂、戦艦扶桑、山城、伊勢、日向、筑波の五隻を主力とする艦隊である。 ―――第三機動部隊旗艦龍驤艦橋―――
「角田長官、攻撃隊発進準備完了です」
後ろから参謀の声が聞こえる。角田少将は振り向かず海を見たまま叫ぶ。
「全機発艦せよ!目標敵英東洋艦隊!」
各空母から第一次攻撃隊が発進する。と同時に戦艦五隻が速度を上げる。行き先はシンガポールだ。この作戦は宣戦布告と 同時にシンガポールを攻撃し、戦艦部隊による艦砲射撃を実行、英東洋艦隊をシンガポールから出さず、陸軍が上陸し占領する作戦だ。タイからくる部隊とシンガポールからくる部隊で敵英陸軍を挟み撃ちにする作戦でもある。シンガポール上陸の陸軍は六万六千人と海軍陸戦隊が四千五百人の計七万五百人の上陸部隊である。むろん、史実のコタバルからの上陸作戦も敢行する。発進した第一次攻撃隊の数は零戦五十四機、九九式艦爆八十一機、九七式艦攻八十一機、がシンガポールを目指して飛行中である。攻撃隊隊長は神驤の艦攻隊の橋本少佐である。艦爆隊は吉野大尉、制空隊は三沢大尉である。第一次攻撃隊発進二十分後、第二次攻撃隊が発進した。零戦五十四機、艦爆六十三機、艦攻六十三機、発進した。攻撃隊隊長は瑞穂の山下少佐である。
―シンガポール上空―
「全機突撃せよ!」
橋本少佐は攻撃隊に命じる。橋本少佐は艦攻隊を率いて英東洋艦隊を攻撃する。
「艦攻隊全機につぐ!三機小隊に分かれて突入。狙いは敵英国東洋艦隊をシンガポールから出さないことだ!」
橋本少佐は訓示する。艦攻隊は三機小隊に分かれて各艦艇を狙う。橋本少佐はプリンスオブウェールズを狙った。
「魚雷投下用意!」
「魚雷投下用意!」
橋本少佐の後部座席の偵察員が復唱する。プリンスオブウェールズまで後、八百メートル。
「魚雷撃てぇー!」
「魚雷投下!」
偵察員が魚雷を投下する。橋本は機首を上に上げて離脱する。上昇中に電信員が報告した。
「魚雷三本命中!」
「ようし。帰還しよう」
橋本少佐は機首をひるがえして列機と一緒に母艦へと帰還していった。
―――制空隊三沢大尉機―――
「敵戦闘機はいないな。まだ離陸してなかったのか。これは好都合だ。制空隊全機につぐ敵飛行場を銃撃だ。一機も空に飛び立たすな!」
三沢大尉は今まさに離陸しようかとしている英戦闘機ハリケーンに狙いを定めた。
「くらえ!」
ダダダダダダダダダダッ。
ドドドドドドドドドッ。
機銃弾はハリケーンに命中しハリケーンはよろよろとよろけながら滑走路に墜落した。三沢配下の零戦隊はシンガポールの航空戦力をほぼ壊滅させた。
―――艦爆隊隊長吉野大尉機―――
「狙うは敵防衛陣地だ!行くぞ!」
吉野大尉は機体を急降下させる。吉野大尉が狙ったのは対空機関銃陣地だ。吉野大尉は二百五十キロ爆弾と六十キロ爆弾を投下する。爆弾は対空陣地に見事に命中した。
第一次攻撃隊の攻撃が終了しかけに再び大編隊がやってきた。第二次攻撃隊である。
―――第二次攻撃隊隊長天野少佐機―――
「全機突撃せよ!」
攻撃隊は所定の位置に分かれて突撃する。
―――角田艦隊―――
「角田長官!攻撃隊より入電!「我奇襲ニ成功セリ」さらに前進している日向より入電!「我コレヨリシンガポールニ艦砲射撃ヲ敢行ス」とのことです」
若い通信兵が電文を読み上げる。角田長官は「うむ」と言っただけで前方の海を見ている。この時戦艦は艦隊を護衛していなかった。理由はシンガポールを艦砲射撃するためだ。第一次攻撃隊が発進後、五隻の戦艦は護衛の駆逐艦を率いて速度を上げた。戦艦部隊の司令は日向の松田千秋大佐である。史実では、レイテ沖海戦で伊勢、日向の第四航空戦隊を率いて小沢治三郎中将のオトリ部隊を護衛し、空母四隻が沈む中、伊勢と日向は見事な回避運動をし、なおかつ敵機を多数撃ち落として生還してる。松田千秋大佐は戦後、面接の制度を取り入れた人物でもある。
すでにシンガポール海軍基地はほぼ壊滅状態だった。そこへ松田大佐の戦艦部隊がやってきた。
―――戦艦伊勢防空指揮所―――
そこには、長髪のさらりとした女性がいた。年は、二十代前半である。
「伊勢姉ちゃん」
伊勢が振り向くと長髪のポニーテールの格好をした女性がいた。
「日向どうしたの?」
「松田司令が距離二万メートルになったら射撃開始するってさ」
「そう…」
「どうしたの姉ちゃん?」
「うん、とうとう始まったんだなと思ってね」
「姉ちゃん。やっぱり戦争嫌い?」
日向が伊勢に問う。元々伊勢はあまり戦いは好まない。平和な時代に生まれたからだろう。
「嫌いよ。でもね、日本の国土が荒れ果てるのは嫌だから戦うよ」
伊勢はため息をつきながら返答する。
「姉ちゃん…」
「相変わらず仲がいいわねぇ」
そこへ二人の女性が現れる。
「扶桑義姉さん、山城義姉さん」
一人は長髪の女性、もう一人はショートカットでボーイッシュな女性である。
「ほらほら、早く戻りらなきゃ。後五分で射撃開始するわよ」
扶桑に言われた二人は伊勢と日向甲板を見ると主砲がシンガポールの方向に向いていた。
「本当だ。じゃあね姉ちゃん」
日向が光に包まれて消えていく。
「伊勢。平和はもうなくなったけど、またくるわよ」
扶桑がウィンクして消える。
「悩みすぎないように」
山城が本を読みながら消える。ちなみに読んでる本は西村京太郎の小説『寝台特急殺人事件』おいおい山城古いよ…。
「……そうだね。今は日本を守ろう。平和はそれからだね」
伊勢は吹っ切れた様子でシンガポールを見る。
―――日向艦橋―――
「主砲砲撃準備!」
司令官の松田大佐が部下に指示を飛ばす。
「準備完了です!」
部下の声に松田は頷き。
「目標シンガポール!主砲撃ち方始め!!!」
ドドォーーーンッ!
五隻の戦艦が一斉に火を噴く。
―――筑波防空指揮所―――
「やっぱり戦艦の砲撃はいい」
長髪の女性がうんうんと頷く。この女性はもちろん艦魂の筑波である。ねっからの大艦巨砲主義者でもある。ちなみに大艦巨砲主義者は三笠等の旧式戦艦や金剛、扶桑、日向といった者たちだ。
筑波は目をキラキラと輝きながら自分の主砲を見る。
「四十一センチ砲はいいな。一発で吹き飛ぶ」
筑波が防空指揮所でいい気分に浸ってる間、五隻の戦艦は主砲弾をシンガポールにドカドカとぶち込む。輸送船からは、上陸用舟艇が次々とシンガポールに向かっていく。上陸は順調にいってるようだ。上空では角田艦隊から放たれた、零戦が三個中隊が上空を飛んでいる。………5時間後シンガポールは日本軍に占領された。むろん、英軍が降伏のさい、司令官の山下中将の「無条件降伏するのか、YESか!NOか!」が出た。英軍司令官は即答で「YES」と降伏した。もちろん英東洋艦隊も鹵獲した。
御意見や感想をお待ちしてます。 次回は史実では完敗だったウェーク島沖海戦をします。 瑞鶴「私らの出番はまだなのか?」 榛名「そうだ!そうだ!」 金剛「よもや考えてはいないと言ったら許さんぞ」 飛龍「私の刀で串刺しにするわよ」 後二話程出てこないよ多分ね。 三笠「なんだと!皆の者奴を討ち取るんだー!」 ふん。俺がそう簡単にやられはしないわー! 将斗「あーあ、みんな行っちゃった。ではみんなまた次回」