第六十五話 特別艦上戦闘機
八月八日は第一次ソロモン海戦やソ連満州侵攻がありますが、何と八月八日は自分の誕生日です。
連絡を受けた将斗達は瑞鶴から零戦で発艦して、横須賀航空基地に着陸した。
「久しぶりだな」
将斗達を出迎えたのは海軍技術中将の川嶋元治だった。
「お久しぶりです」
将斗が敬礼をする。
「うむ、久しぶりだな。また一段とかっこよくなって。艦魂達の苦悩が浮かぶわい」
川嶋がニヤニヤする。
「それは言わんで下さいよ。で、俺達を呼び出した理由は何ですか?」
「おっと、そうだったな。皆、格納庫に来てくれ」
ぞろぞろと五人と護衛の兵士四人が格納庫に向かう。
―――格納庫―――
ガラガラガラガラッ!!
整備員が格納庫のシャッターを開けた。
そこには真新しい四機の戦闘機がいた。
「川嶋中将。これは?」
川嶋はニヤッと笑った。
「この戦闘機は君達四人の戦闘機だ。正式名称は十五式特別艦上戦闘機と言うがな」
『特別艦上戦闘機ッ!!』
「そうだ」
コクりと川嶋が頷く。
「よく軍令部や、航本(航空本部)を納得させましたね」
「阿呆ぬかせッ!!お前が日本軍が誇るエースパイロットからだッ!!それじゃなかったら却下されてるぞ」
川嶋がため息をつく。
「さて、機体を紹介だ。真正面のは椎名君のだ」
将斗が機体を見る。
「これがこの戦闘機のデータだ」
川嶋が将斗に紙を渡す。
『椎名将斗専用十五式特別艦上戦闘機。最大速度七百三十三キロ。航続距離二千八百キロ。武装。機首十二.七ミリ機銃×二。主翼三十ミリ機銃×二(一門につき二百十発。ベルト給弾式)。搭載エンジン蒼発動機。最大馬力二千四百八十馬力。排気タービン付き』
「川嶋中将。蒼発動機とは?」
「あぁ。蒼発動機は誉の発展型だ」
「発展型ですか?」
「といっても史実の誉四二型のをモデルにしたやつだ。四二型は二千二百馬力だが、こいつは二千四百八十馬力もだす」
「何で誉四二型なんですか?」
「…実はな。私の曾祖父が誉四二型の開発に加わってたらしいんだ。まぁその設計図は終戦と同時に廃棄されたらしいんだが、たまたま私の曾祖父は持っていて廃棄しなかったみたいでな。小さい頃、飛行機好きの祖父とよく図面を見ていたよ。うろ覚えだったが、誉開発者達と作った結果、史実よりも二百八十馬力上がったよ。それと、両翼の燃料タンクは四百リットルに減らして三十ミリ機銃弾を増やしてる。そのかわりに操縦席の後ろの胴体に百二十リットル、投下式燃料タンクは三百リットルから四百五十リットルになっている。これは全機使用できる。これでなんとか二千八百までいける」
「零戦に似てますね」
翡翠が川嶋に告げる。
「うむ。二一型をモデルにしているがな」
「うむ。椎名君のは真正面だ。右のは翡翠君、左は昴君、後ろのは鞍馬君のだ」
川嶋は三人に、それぞれの戦闘機のデータを渡した。
『近衛姉妹及び鞍馬信一専用十五式特別艦上戦闘機。
最大速度七百三十キロ。航続距離二千八百キロ。武装機首十二.七ミリ機銃×二、主翼三十ミリ機銃×二(弾丸は椎名機と同じ)。最大馬力二千四百五十馬力。搭載発動機、蒼発動機。排気タービン付き』
「本来なら椎名君のも、近衛君達のと同じ性能なんだが、何故か椎名君の発動機の調子が思ったよりよかったんだ」
川嶋が追加報告をする。
「乗ってもいいですか?」
将斗が川嶋に聞いた。
「構わんよ」
そして、四人はすぐさま離陸して空の人なる。
四機は壮絶な空中戦を展開しており、地上で見ていた整備員や搭乗員達は驚きの連続だった。
三十分後、満足したのか四機は着陸した。
「川嶋中将。こいつは凄いですよ。なぁ蒼零?」
「そうやで。なんか体がむっちゃ軽く感じんねん」
蒼零が嬉しそうにはしゃぐ。
「そうか。そいつはよかった。なら、機体の名前を決めてくれないか?名無しだと可愛そうだからな」
川嶋中将の言葉に将斗は少し悩んだ後、顔を上げた。
「……蒼零…川嶋中将、こいつの名前は蒼零ですッ!!」
将斗が高らかに宣言をした。
「えェェェーーーーーッッ!!ほんまかいな将斗ッ!!ウワァ〜うち、むっちゃ嬉しいでッ!!」
蒼零が喜びながら大きい胸を将斗の腕に押し付ける。
「あ〜、それとなんだが……彗星と天山は空母から下ろすことになった」
『えェェェーーーッ!!』
川嶋の言葉に将斗達は言葉を失う。
「山本長官の命令でな。『後から流星改が出るのに無駄遣いだ』と言ってな」
詳しくなると彗星は機首の他にも主翼に十二.七ミリ機銃を二門を搭載して戦闘偵察機となった。
史実のマリアナを教訓として新型艦偵の彩雲と二機ペアで索敵をすることにしたのだ。
また、小型空母には戦闘偵察型ではなく普通の艦爆彗星を搭載する。
天山は主に基地航空隊で使用することになり、機動艦隊が航空戦で流星改を損失した場合には天山が送られることになった。
また、海上護衛隊の護衛空母に対潜哨戒としての搭載が決定した。
中型や小型空母には新しい改良型の零戦六二型が搭載決定。
六二型の発動機は誉である。
ここで零戦六二型の他にも流星改の機体説明をしよう。
――零戦六二型――
誉発動機。
二千八十馬力。
最大速度六百四十五キロ。
航続距離三千キロ。
武装 機首十二.七ミリ機銃×二、主翼二十五ミリ機銃×二。
史実のような戦闘爆撃機ではない。
――流星改二一型(艦爆用)――
誉発動機。
千八百三十馬力。
最大速度五百七十五キロ。
航続距離二千九百キロ。
武装 主翼二十ミリ機銃×二、十二.七ミリ旋回機銃×一、八百キロ爆弾×一、五百キロ爆弾×一、二百五十キロ爆弾×二、六十キロ爆弾×八。
特徴――艦爆用なので三座ではなく二座である。
――流星改二一型(艦攻用)――
発動機や、、航続距離等は艦爆用と同じであり、最大速度は五百六十五キロ、武装はほぼ同じだが、八百三十キロ航空魚雷×一である。
史実の流星改である。良質のガソリンを使用しているため、速度は速い。
艦爆用の流星改は二座のため、全長11.49メートルから10.40メートルまで小さくしたのだ。
――烈風二一型――
ハ43発動機。
二千二百五十馬力。
最大速度六百七十五キロ。
武装 主翼二十五ミリ機銃×四、ロケット弾×六。
ほぼ、史実の烈風である。最大速度等は良質のガソリンを使用しているからだ。
烈風は大型空母に搭載する予定だ。
四人は川嶋中将と別れ、空路で瑞鶴に向かった。
「♪〜♪〜♪」
風防のアンテナの後ろに立っている蒼零は上機嫌である。
「そういや、三人は名前決めたんか?」
将斗が何気なく三人に聞いた。
『あたしは、蒼姫やで』
翡翠が無線を入れる。
『俺は蒼神や』
昴が当たり前だと言わんばかりの言葉だ。
『俺は蒼刃やな』
四人とも最初の文字は蒼からだ。
「何で蒼からなん?」
将斗が三人に質問すると、同時に返ってきた。
『未来で使ってた機体名やしな』
そうなのだ。今言われた名前は全て未来で乗機していた戦闘機の名前をわざわざ名付けたのだ。
飛魂の蒼零も、未来で乗機して戦闘機の名前だ。
「まぁそうするやろと思ったけどな。ほならちゃっちゃと帰るで」
四機は速度を上げ、柱島泊地の瑞鶴を目指した。
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