第六十四話 世界状況2
久々の一週間に二回の投稿です。
―――1943年十一月十日ホワイトハウス―――
「それで…インドの戦況は?」
重々しく米大統領フランクリン・D・ルーズベルトが口を開く。
「はい……かなり緊迫した状況です。インド軍人の相次ぐ反乱や、民衆によるジャップの支援等で、防衛線はラクナウ――ボパール――ボンベイまで後退しています」
陸軍参謀総長のマーシャルが答える。
「ドイツ軍まで投入しているというのに何てことだ」
ルーズベルトが深いため息をついた。
「ドイツのタイガー戦車はかなりの役に立っています」
「それが何故負けるんだ?」
「実は、ヴァル(九九式艦爆)の両翼に大型の対戦車砲を装備しているらしく、これのためタイガー戦車は次々とやられていくのであります」
九九式艦爆は三十七ミリ機関砲二門を両翼に装備して、新たに九九式対戦車爆撃機となっている。
さらに、旧陸軍航空隊の百式重爆呑龍の機首に四十七ミリ速射砲を搭載し、翼下に二十ミリ機銃四門を搭載した三式襲撃機火龍も大活躍していた。
「海軍の再建はどうかね?」
ルーズベルトの言葉に海軍長官のノックスが答えた。
「現在、エセックスを筆頭に大型空母四隻、インディペンデンス級中型空母五隻、護衛空母二十二隻が竣工し、訓練中です。アトランタ型防空巡も七隻が竣工しています」
「ふむ。戦艦はどうだね?」
「アイオワ型六隻が建造中ですが、まだ半年は掛かります。さらに、モンタナ型六隻も現在建造中です」
「だが、それは四十センチ砲搭載艦だろ?」
「はい」
ノックスが頷く。
「ノックス。四十六センチ砲搭載艦も建造してくれないか?ヤマトを破るのにはやはり同じ四十六センチ砲戦艦を作らなければならないだろう。それにチャーチルも四十六センチ砲戦艦のライオン型を建造中だというしな」
「分かりました。急いで建造を開始します。しかし、我々の生産力で一年で実現出来ますが、その間の太平洋戦域は……」
「手詰まりだな」
ルーズベルトがまたため息をつく。
「太平洋戦域の最前線はフィジー諸島です。何故かジャップはここを占領してませんが……」
「補給……だろうな。フィジー諸島の要塞化は?進んでいるのか?」
「はい、時たまに輸送船団が雷撃を受けますが何とか順調です」
ノックスが答える。
「そうか、ならいい。それと……インド戦線だが、もしインドが落ちたとなると後方にある中東の防衛だがどうかねマーシャル?」
ルーズベルトが眼鏡を掃除しながらマーシャルに問い掛ける。
「現在、ドイツ軍四十万、イギリス軍三十万、我が陸軍三十万、さらにドイツからの武器援助で中東一の軍事大国のイラク軍三十万の兵力に戦闘機約五千機、爆撃機約三千機が各地の航空基地に配備されています」
「うむ。それで中東を持ちこたえてもらいたいな」
「大統領。心配には及びません。中東方面司令長官にドイツのロンメルを任命させました」
「オォォッ!!砂漠の狐かッ!!それなら大丈夫だろう」
ルーズベルトは安心したかのように息をはく。
「二人とも、きついが何とか一年を耐えてくれ」
ルーズベルトの言葉にノックスとマーシャルは敬礼で返した。
―――柱島泊地―――
「あ〜。ひまやなぁ〜」
空母瑞鶴の飛行甲板に将斗が寝転がっている。
今、第二機動艦隊の半数の乗組員は半舷上陸をしている。
むろん、撫子新撰組航空隊も半舷上陸をしている。
将斗達は留守番である。
「このまま寝たろ」
将斗は日陰を探し見つけるとそのまま大の字で寝だした。
そこへ、蒼鶴と三笠が来た。
「全く…。何をしてると思えば寝てるのかよ」
「ふむ、将斗の隣で寝るのもいいな」
三笠が呟くと艦魂の力を使って枕を取り出した。
「力をそんなのに使うなよ」
蒼鶴がため息をつく。
「いいではないか。さて…「将斗ーーーーーッ!!」何?」
三笠が将斗と一緒に寝ようとした時、瑞鶴がやってきた。
「ぅん?瑞鶴か?」
将斗が眼をしばしばしながら起きる。
「うぇッ?!えッ?!」
三笠は無残にも将斗と一緒に寝るタイミングを逃した。
「将斗。そこにいたか。山口長官が……って三笠さん。何ですか?」
三笠が瑞鶴に思いっきり睨んでいた。
「いや…何でもない」
今にも人を殺せそうな殺気を瑞鶴に繰り出しているが、瑞鶴は受け流している。
「んで瑞鶴。何や?」
「うむ、横須賀航空隊基地が将斗宛ての電文を送ってきたんだ」
瑞鶴が将斗に通信紙を渡した。
「何々…『椎名将斗中佐、鞍馬信一中佐、近衛翡翠少佐、近衛昴少佐ノ四名ハ至急横須賀航空基地ニ来ラレタシ。新型戦闘機ヲ提供スル』か…」
「何だ?新型戦闘機とは?」
三笠が将斗に聞く。
「さぁ?今、空母部隊は新型機に転換中やからな。多分それやろ」
空母部隊は二日前から新型機に転換中であった。
性能等は次回あたりに語ろう。
主な新型機は、艦戦烈風、艦爆彗星、艦攻天山である。
又、小型空母には烈風は搭載出来ないので零戦の改良型六二型が配備中である。
「もうすぐしたら零戦三機が揃うから翡翠と昴を集めてくれだと山口長官が言ってた」
「分かった」
五分後、将斗が二人を連れてくると既に飛行甲板に零戦三機があった。
瑞鶴も速度二十ノットで走っている。
「ほんじゃ行ってくるわ」
将斗がぷらぷらと瑞鶴達に手を振る。
「せっかく瑞穂と一緒に風龍にメイド服を着せたかったのに〜」
「はぁ…(-.-;)」
そして、三機は瑞鶴から発艦して横須賀に向かった。
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