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新大東亜戦争  作者: 零戦
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第六十二話 コーチンヲ攻撃セヨ



小沢第三機動艦隊がカルカッタを、塚原第一機動艦隊がマドラスを、そして山口多聞中将率いる第二機動艦隊はコーチン沖約三百キロにいた。


輪形陣の中核には歴戦の空母蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴、龍驤、神驤といった空母がいる。


さらに捕獲した空母風龍ふうりゅう・レキシントン雪龍せつりゅう・サラトガもいる。


が、今回はまだいた。


その他六隻の空母もいた。


雲龍型空母である。


雲龍、天城、葛城、阿蘇、笠置、生駒の六隻だ。


史実では葛城までが竣工し、阿蘇、笠置、生駒の三隻は船体が完成したがそのまま放置されたが、この世界では竣工している。


さらに、史実では十五隻の建造計画があったが、この世界ではこの六隻の他にも五隻が現在建造中である。


ちなみに二番艦の天城は第一機動艦隊の天城と一緒になってしまうが、あえてのこのままでいくと決定で第二機動艦隊所属となった。


余談だが、第一機動艦隊の天城が直接山本長官に直訴という名の恐喝をしたと艦魂達の噂になっている。


話しを戻す。


第二機動艦隊所属の空母飛行甲板では航空機が翼を並べていた。


そして、航空機の搭乗員達はお握りを頬張っている。


「あんま食うなよ。途中で眠たくなるで」


将斗が、女性搭乗員達に注意する。


ちなみに将斗のお握りの中味は鰹節である。


「全員食い終わったか?なら行くぞッ!!目標敵基地壊滅それだけだッ!!」


「行ってきますッ!!」


山口多聞中将が激励して将斗が山口に敬礼する。


「かかれッ!!」


飛行長の芹沢仁美少佐の号令でバラバラと搭乗員達が愛機に駆け寄る。


「瑞鶴。行ってくるわ」


「うむ、将斗気をつけてな」


「あぁ」


将斗と瑞鶴が互いに敬礼する。


すると発着艦指揮所で青い旗が振られる。


瑞鶴は防空指揮所に転移して将斗を見送る。


『帽振れぇぇぇーーーーーッ!!』


将斗機が瑞鶴から発艦する。


他空母でも制空隊の零戦が発艦している。


攻撃隊が揃ったのは四十分後だ。


攻撃隊隊長は江草隆繁中佐である。


今回のコーチンには敵艦はいないため村田重治中佐は外された。



―――攻撃隊―――


制空隊隊長椎名将斗中佐。


零戦百八十機。


艦爆隊隊長江草隆繁中佐。


九九式艦爆百五十機。


水平爆撃隊隊長楠美正中佐。


九七式艦攻百五十機。


の計四百八十機は一路コーチンを目指す。


さらに、この攻撃隊の前にセイロン島から零戦百二十機、疾風百二十機。一式陸攻百二十機、銀河九十機、呑龍百五十機、飛龍九十機の爆撃隊がコーチンを目指して飛行していた。




―――江草機―――


「総隊長。セイロン島の基地攻撃隊が現在、コーチンを空爆中とのことです」


発艦から一時間。


偵察員の石井特務中尉が伝声管で江草に告げる。


「そうか。基地攻撃隊の奴らには迷惑をかけるな」


江草が呟く。空母搭乗員は中々補充が効かない。


基地航空隊は不沈の空母なため発着艦が苦手な搭乗員でも楽に出来る。


が、洋上の空母はいつも波に揺れている。当然事故もある。


そのために搭乗員は中々育たないのだ。


話しを戻す。


再び石井特務中尉は江草に告げた。


「基地攻撃隊より追加電です。敵コーチン基地はほぼ壊滅状態とのことです」


「うむ…だが、油断は出来んな」


江草はそう言い、全機に警戒を当たらせたが徒労に終わる。


『コーチン上空……』


今日も、九九式艦爆の飛魂のクゥは風防の上にいる。


「(そうだな。クゥ、上空を見張ってくれ)」


『(分かった)』


クゥが了承する。


江草はコーチンを見る。先の空爆でところどころで黒煙が上がっている。


「全機突撃ッ!!」


江草が叫び、石井特務中尉がト連装を打っている時、クゥと零戦隊の零戦虎徹の岩本徹三少尉が叫んだ。


「『敵機急降下ッ!!」』


江草の反応は早かった。


「全機散開ッ!!それぞれ単機突撃せよッ!!」


思わぬ事態だが、古参の搭乗員達は次々と急降下や水平爆撃を開始する。


もちろん翔鶴と瑞鶴の撫子新撰組航空隊もだ。


「行くぞッ!!」


江草は急降下をして目標に向かっていった。



さて、将斗は急降下してくる迎撃隊の機銃弾を難無くとかわしていた。


将斗が後方を振り返ると撫子新撰組航空隊の零戦隊は全機無事であったが、二機の零戦が火を噴きながら落ちていくのが見えた。


「くッ!!全機につぐッ!!敵機を生きて返すなッ!!」


連合軍の迎撃隊は五十機程しかいなかった。


先の空爆のせいだろう。


それでも迎撃隊の士気は旺盛である。



―――迎撃隊―――


「奴らを生きて返すなッ!!」


メッサーシュミットの操縦席で迎撃隊隊長のアーサー・ヘイル少佐が吠える。


『隊長。熱くなるのはよくないですよ』


無線から相棒のミハエル・アーロン大尉がヘイルに告げる。


「黙ってろアーロンッ!!」


『へぇへぇ』


二人はそう言いながら二機の零戦を落とした。これが先程将斗が見た物だ。


「アーロンッ!!あれをやるぞッ!!」


ヘイルのメッサーシュミットが向かう先は低空にいる零戦二機だ。


「待っていろ日本人ッ!!」


ヘイルが急降下で突撃する。


ヘイルは日本人を嫌う。バトルオブブリテンの最中にアーロンはその理由を知った。


アーロンは初出撃の前日の夜に酒場へ命の洗濯に出掛けたが、パートナーを見つけることが出来ずさみしく一人で帰路についた。


その帰り道、隊舎へ続く未舗装路の脇に、横転した自転車とそばで仰向けに倒れてた当時中隊長のヘイルを見つけた。


「……隊長、隊舎までお供します。帰りましょう」


彼に肩を貸そうとしたアーロンは、信じられない光景を見た。


自分では処理しきれない怒りや哀しみの感情を煮えたぎる言葉に変え、酒臭い息とともに吐き出す隊長がそこにいた。


「聞いたかアーロンッ!?我が帝国は日本人と同盟を結んだそうだ。信じられるかッ!?総統は連中を嫌っていたんじゃなかったのか?冗談じゃない……冗談じゃないぞッ!!日本人など、目障りで欝陶しくて、邪魔なだけだッ!!この地球上から消してしまえばいいんだッ!!」


ヘイルは立ち上がるがフラッと枯れ草の上に倒れ込む。そこでヘイルは再び喚きはじめた。


「俺は憎いッ!!この体の中を駆け巡る日本人の血がッ!!…俺の婆さんは日本人だ。医者として日本に渡った爺さんが、連れて帰った嫁が日本人だった。おかげで俺は…見ろッ!!この髪、この目ッ!!黒、黒、真っ黒だッ!!くそぅッ!!どいつもこいつも俺に言うんだ。黒い目は悪魔の証拠だ、血が汚れているから黒くなるんだと……バカ野郎ぅ……負けてられるか、俺はな、そういう連中を片っ端からぶっとばし…相手が大人だろうが官憲だろうが知ったことではない。戦って、戦って、ガキのころから戦いづめで…チクショウ…俺が軍人になってここまでくるのにどれだけ戦ったと思っているんだ…それなのに日本人と同盟だとッ!!ようやく遠ざけた悪夢がまた俺の前に姿を見せやがったッ!!ふざけるなッ!!連中なぞ地上から消えてしまえばいいんだッ!!チクショウッ!!チクショウーーーーーッ!!」


翌日、軽い頭痛がするヘイルにアーロンが前夜のことを話すと顔を真っ赤にしながらアーロンに言った。


「公言したければするがいい……」


アーロンはヘイルの右手が震えているのを見た。


「誰にも話しません」


アーロンは声に出してヘイルに誓い、いまにいたっているのだ。


話しを戻す。


ヘイルとアーロンに追われているのは原田琥珀中尉と土方香恵中尉だ。


「あぁくそッ!!どうしたらいいんだよッ!!」


琥珀が苛立ちながら言葉を出す。


『熱くなるな琥珀。焦るな』


香恵が無線で告げる。


「分かってるよ。しかし…どうしたら…」


その時、琥珀の眼に二機の零戦が向かってくるのが見えた。


「行くぞ笹井ッ!!」


『了解ッ!!』


将斗は先程はるか下方で巴戦をしている四機の戦闘機を見つけた。


正確には零戦二機が追われている。


将斗は近くにいた笹井醇一大尉と共に降下した。


この時将斗の高度は三千。四機の高度は五百あまり。


一気に二千メートル以上も降下したとき、左垂直旋回でぐるぐる回っている零戦の一機は、メッサーシュミットの射線に入ろうとしていた。


将斗はとっさに機銃を放つ。


ダダダダダダダダッ!!


メッサーシュミットの機首めがけて十二.七ミリを撃ち込む。


あくまで敵の鼻面を押さえるための威嚇だ。


食いついたのはヘイルだ。


ヘイルは威嚇に迅速に反応し、今までの左旋回を右旋回に切り替え、右に上昇旋回すると、勢いあまってつんのめる恰好になった将斗の左腹下にぐんと食い込んできた。


「やるな……」


将斗が呟く。


ヘイル機は将斗機の下腹からぐんぐん突き上げてくる。


坂井三郎がいつも得意とする戦法だ。


将斗はエンジンを絞りぎみにしながら、左旋回に入るきっかけを探した。


まだ急降下の勢いが残っていて、スピードがつきすぎているのだ。


二度三度と回るうちにようやくきっかけがつかめた。


すかさず小回りで左旋回に入る。


ヘイル機もついてくる。


左垂直旋回で巴戦に入った。


機体はほとんど垂直になっている。自分の体は真横になってGに引っ張られる。


血が全部体の後ろに下がっていくかと思われるほど苦しい。


しかも、首をねじまげ、ヘイル機を視界の片隅に捉えていなければならない。


しかし、いつまでも続けていられる姿勢ではない。強烈な荷重のために脳貧血寸前となる。


こうなると我慢比べだが、ヘイルは耐えられなかった。


旋回を解き、反転にかかる。


将斗は機体を捻って追尾をする。


ヘイルも速度を増すと斜め宙返りで反撃してきた。


しかし実はこれが将斗の思う壷だった。


斜め宙返りは零戦の得意技であり、将斗も頻繁に使う素早い左捻り込みに持っていけるからだ。


あっという間に将斗機はメッサーシュミットの後ろに回っていた。


「くそッ!!」


ヘイルは必死になって連続宙返りをしながら振り切ろうとするが出来ない。


ヘイル機との距離は五十メートル。


将斗は機首の十二.七ミリ機銃弾を放った。


ダダダダダダダダッ!!


機銃弾は見事に機首に命中し、黒煙を噴き上げる。


「チッ!!」


ヘイルは風防を開けて脱出をした。


「隊長ッ!!」


アーロンはヘイル機が黒煙に包まれるのを見た。


一瞬、最悪の状況を頭の中が浮かんだが、ヘイルがパラシュートで脱出するのが見えた。


ホッとため息をついた瞬間、後ろに殺気を感じて振り返ると笹井の零戦がいた。


ダダダダダダダダッ!!


ガンガンガンッ!!


機銃弾がエンジンに命中。


白い煙りを噴く。


アーロンは舌打ちをしながらヘイルと同様にパラシュートで脱出をした。


『隊長、助かりました』


琥珀が片手で拝むようなまねを見せる。香恵は律儀に将斗に笑顔で敬礼した。


「全く」


将斗は苦笑し、二人の頭を小突くまねをした。


「よし、帰るで。もう爆撃はすんだみたいや」


四機が上昇しようとした時、地上の対空機銃がたまたま上昇が遅れた笹井機に弾丸を放った。


ドドドドドドドッ!!


ボォゥッ!!


弾丸は左主翼の燃料タンクに命中し、瞬く間に炎が広がる。


「くッ!!隊長ッ!!不時着しますッ!!」


『分かったッ!!気をつけろよ』


笹井はコーチン近郊の草原に胴体着陸を決めてゆっくりと高度を下げる。


幸いにも操縦系統は生きていた。


草原に着陸しようとした時、それは起きた。


ボォゥンッ!!


軽い爆発と共になんと主翼が吹き飛んだのだ。


のちに中島や三菱の飛行メーカーが原因解明をしたが、結局分からずじまいだった。


「「「笹井(大尉)ッ!!」」


三人の血相を変えた絶叫もむなしく、主翼を失った零戦は草原の手前にあった森林の深みめがけて滑空し、三人の視界から消えた。


五分程三機は森林の上空を旋回していたが、ゴォンと黒煙が噴き出た。


恐らく零戦が爆発したのだろう。


将斗達は黒煙が噴き出るところに敬礼して瑞鶴に帰還した。


帰還後、将斗は山口に笹井の状況を報告。


生還している可能性もあると考えられ、山口は攻略船団の速度を上げさせ、予定より二日早くにコーチン上陸作戦を開始。


第二機動艦隊も三波にも及ぶ上空支援を展開。


上陸から五日後にコーチンをほぼ占領。


一個連隊が笹井が墜落した森林を捜索したが見つかったのは笹井の零戦だけだった。


要塞好きさん、ヘイルとアーロンの件ありがとうございますm(__)m ヘイルはハーフ?にしてみました。御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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