第六十一話 マドラスヲ攻撃セヨ
小沢第三機動艦隊がカルカッタを攻撃する中、塚原第一機動艦隊はマドラス沖に進出していた。
―――赤城艦橋―――
「長官。第三機動艦隊がカルカッタを薄暮攻撃を決行したそうです」
草鹿参謀長が塚原に報告する。
「うむ。我らも薄暮攻撃をしようと思うがどうだ?」
「は。行けると思いますが、我が第一機動艦隊の搭乗員の練度は史実の南太平洋海戦後です。ここは明日の攻撃にしましょう」
「むぅ、やむを得んな。全空母に発光信号『攻撃ハ明日ナリ』と打て」
「ハッ!!」
草鹿が敬礼する。
「長官。自分は赤城の皆に知らせてきますッ!!」
航空参謀の源田実大佐が塚原に具申する。
塚原は「頼む」と頷き、源田は敬礼して艦橋を降りた。
しかし十分後、伝令の兵が艦橋に入ってきた。
「伝令ッ!!源田航空参謀が負傷ッ!!」
この報告に塚原と草鹿は驚いた。
「何ッ!!一体何があった?」
「それが、源田参謀が各隊員に攻撃延期を知らせてたんですが誤ってラッタルを踏み外して転落。幸い左足の捻挫の軽傷です」
草鹿は報告に頭に手を当てて呆れ、塚原は誰にも聞こえないように呟いた。
「阿呆………」
―――翌日―――
「では、行ってきます」
飛行服を着た淵田総隊長が塚原に敬礼する。
「うむ、頼んだぞ」
塚原も返礼する。
「源田。気をつけや」
「あぁ、分かってるよ」
艦橋を出る時、淵田と源田が言葉を交わす。二人とも海兵の同期のため敬語ではなく、普通に接する。
淵田は艦橋を降り、さらに下部飛行甲板に降りる。そして愛機の九七式艦攻の機長席に乗る。
ババババババババッ!!
上部飛行甲板で青い旗が振られた。
『発艦セヨ』の合図だ。
零戦隊の一番機である板谷茂中佐機がゆっくりと動き出し、綺麗に発艦していく。
板谷機に続けとばかりに二番機、三番機が発艦していく。
その一連の動きを艦魂の赤城は防空指揮所で敬礼しながら見ていた。
第一次攻撃隊は赤城、天城、加賀、土佐からの四百三十二機である。
「み…皆…頑張って下さい…」
土佐の防空指揮所で土佐は帽子が飛ばされないように左手で頭を押さえながら敬礼をする。
攻撃隊は淵田大佐を総隊長とし、編隊飛行をしながらマドラスへと向かった。
マドラスはセイロン島に近い。
そのおかげで連日に渡り、セイロン島にいる基地航空隊から空襲を受けていた。
当初は約七百機はいた戦闘機隊も連日の空襲により約二百機まで低下していた。
『敵機来襲ーーーーーッ!!』
『ウウゥゥゥゥゥゥゥーーーーーッ!!』
それでも、連合軍のパイロット達は空襲があるたびに出撃していった。
「畜生ッ!!ジャップの野郎何回も何回もきやがってッ!!」
ライトニングの操縦席で迎撃隊長のマッキリー少佐が怒鳴る。
少佐が後方を振り返ると百五十機程の戦闘機が上昇している。
「何としてもジャップを叩き落とせッ!!」
マッキリーが部下を励ます。
そして、迎撃隊は第一次攻撃隊に向かうが、零戦隊が迎撃隊を遮った。
―――零戦隊―――
「一機も近づけさせるなッ!!かかれッ!!」
零戦隊隊長の板谷茂中佐が吠えて板谷機が敵戦闘機群に突撃する。
列機も隊長に続けとばかりに突撃する。
ドガガガガガガガッ!!
敵、味方の機銃弾が飛び交う。
ボウゥッ!!
火を噴いた零戦が落ちていく。
その反対に連合軍の迎撃隊も落ちていく。
しかし、落ちていくのは迎撃隊のが多かった。
戦闘機の激しい空戦のなか、艦爆隊と艦攻隊がマドラスに向かう。
「全機突撃準備やッ!!」
淵田の言葉に機銃席の水木一飛曹が打電を打つ。
『トツレ』
突撃態勢を作れの合図だ。
水木一飛曹が打電を終えた時、十数機の敵機が迫ってきた。
「後方より敵戦闘機ッ!!十数機ッ!!」
「密集体形やッ!!急げッ!!」
淵田が慌てて無線で列機に伝える。
列機は固まる。
襲ってきたのはスピットファイヤー十四機だ。
タタタタタタタッ!!
ドドドドドドドッ!!
スピットファイヤーから放たれた七.七ミリ機銃弾と二十ミリ機銃弾が艦攻隊を襲う。
だが、艦攻隊も負けてはいない。
後部機銃席から十二.七ミリ機銃弾がスピットファイヤーを襲う。
グワアァァーーンッ!!
グワアァァーーンッ!!
九七式艦攻五機が機銃弾を浴びて火を噴いた。
「脱出やッ!!急げッ!!」
淵田の言葉通りに五機に乗っていた搭乗員達が落下傘を開いて脱出をする。
しかし、そのお返しとばかりにスピットファイヤー三機が火を噴いた。
「総隊長ッ!!零戦隊が来ますッ!!」
水木の言葉に淵田が振り返ると二十機程の零戦が艦攻隊の危機を見て、駆けつけた。
「零戦隊よ頼むでッ!!」
淵田が機長席で零戦隊に声援を送る。
そして零戦隊は期待通りの働きをみせた。
僅か十分程で、艦攻隊を攻撃していたスピットファイヤー隊を追い散らした。
「今やな。全機投弾用意ッ!!」
淵田が狙うのはマドラスの軍港だ。
「てぇぇぇーーーーーッ!!」
ヒュウゥゥゥーーーーーッ!!
五百キロ爆弾がくるくると回りながら落下していく。
それに続いて列機の爆弾も落ちていく。
ズガアアァァーーーーーンッ!!
ズガアアァァーーーーーンッ!!
爆弾は倉庫に命中して火の手があがる。
「命中ッ!!命中ッ!!」
双眼鏡で見ていた水木一飛曹が声をあげる。
「中々の戦果やな。全機集合や。家に帰るで」
艦爆隊も既に投弾が終了して集合していた。
「総隊長。司令部にはなんと報告しますか?」
水木一飛曹が淵田に聞く。
「う〜ん。見る限りやと第二次はいらんと思うけどな」
双眼鏡でマドラスを見る。
あちらこちらで黒煙が上がっている。
「総隊長ッ!!司令部より入電『第二次ガ後五分デ到着ス』とのことです」
「徹底的に破壊やな。全機揃ったな?ほな帰るで」
淵田大佐率いる第一次攻撃隊は集合して帰投していく。
しかし、全機が無事ではない。
零戦七機、九九式艦爆十四機、九七式艦攻八機を喪失しているが半数以上の搭乗員は落下傘で脱出している。
第一次攻撃隊と入れ違いになった第二次攻撃隊はマドラス上空に到着。入佐少佐の指揮の元、攻撃を開始する。
―――空母赤城―――
「長官。第二次攻撃隊の入佐少佐より入電。マドラスの基地機能はほぼ喪失したとのことです」
草鹿が電文を読み上げる。
「うむ、全艦に打電。これよりマドラスを艦砲射撃する。総員戦闘配置につけッ!!」
「ハッ!!」
塚原第一機動艦隊は速度を上げてマドラスを目指した。
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