第五十八話 内地の状況
―――柱島泊地―――
ハワイ諸島にいた第二機動艦隊は内地に帰投した。
そして空母瑞鶴の上空では制空隊な零戦二機が訓練である模擬空戦をしている。
そしてその瑞鶴の飛行甲板で将斗は空を見上げている。
「あ、太田の野郎。また由華梨に負けよった」
将斗がため息を漏らしながら言った。
上空を見ると太田飛曹長の零戦は、完全に背後を取られていた。
「全く……。史実でモレスビーに坂井達と編隊宙返りをした男が負けんなよ…」
将斗はそう呟くと少し離れた艦橋の掲示板前に控えている週番士官に告げた。
「太田三連敗ッ!!罰として、着艦後飛行甲板二十周ッ!!当番、記録しといてくれッ!!」
週番士官は、両手で丸を描いて将斗に合図する、黒板にキコキコとチョークで今の伝言を書き始めた。
模擬空戦を行っていた二機の零戦は、そのまますっと別れ、それぞれ着艦体勢に入った。
二機が着艦したのを確認すると、訓練空母に籍を置いている鳳翔、鳳龍神鳳鳳鶴の飛行甲板から練習機になっている九九式艦爆一一型、九七式艦攻三号、零戦二一型、九六式艦戦が飛行甲板から発艦していく。
この他にも、廃船した客船を海軍が徴用し、訓練用空母に改装した翔鷹型五隻が伊予灘で訓練中である。
「平和やな〜」
今日何度目かの言葉を呟く。
練習航空隊が訓練するのを除いたら本当にのどかである。
「何してんのよ?」
将斗が振り返ると白人の少女と飛龍と瑞鶴がいた。
「いやなに、のどかやなと思ってな」
「あんた、本当に暇ね」
白人の少女が将斗に言う。
「それは痛いで白根」
白根と呼ばれた少女は以前、ウラジオストクで捕獲した重巡カリーニンである。
「まぁいいじゃないの白根?久しぶりの内地だし」
白根の右隣にいる飛龍が間に入る。
「べ、別に将斗のことじゃないわよッ!!乗組員のことを言っているのよッ!!分かったッ?」
顔を真っ赤にして説得力があまりない。将斗は苦笑してはいはいと頷く。
「それに……日本も大分変わったからな」
瑞鶴が言う。
日本は大々的な改革を遂げていた。
まずは帝國主義から民主主義に変わった。史実の日本国憲法とほぼ同じ憲法を発布したのだ。(むろん戦争放棄はない)
これには陸軍は大反発し、一時はクーデター計画もあったが、天皇の勅命により鎮まった。
国会については戦争が終わった時に再開する。
さらに、医療面では医師の数を大幅に増やす措置が行われた。
また、有名なハンセン病に関しては患者の隔離は無くなり、天皇が直接ラジオで国民に対して「ハンセン病は隔離すべき病気ではない」と話した。ハンセン病の患者には政府から賠償金が支払われた。
交通面では木炭車は全面廃車となった。さらにトロリーバスが運行中である。道路も整備を行い、現在、横浜―東京間の高速道路を建設中である。近畿地方では名神、阪神、中国道が建設中だ。
住宅面では東京を中心にアパートやマンションを建設中だ。
鉄道面では、汽車の生産も縮小され、電車が試作されている。
ちなみに新幹線も試作中だ。
環境面では水力発電や風力発電がさかんに設営されている。
具体的にすると、風力発電の風車は北海道で最高五十基、東京で二十基、大阪は二十四基。他の県でも平均二十基ほど設営してる。一番最低なのは沖縄の十八基だ。
「あらあら、皆さんどうしました?」
先程話していた空母鳳翔達が瑞鶴にやってきた。
鳳翔の髪は腰まで長髪で時折、潮風が彼女の髪をなびかせる。
「フフッ。どうせ将斗君絡みでしょ」
金髪でツインテールの髪型をした空母鳳龍がクスクスと笑う。
「何や、鳳翔四姉妹やん。どないした?」
「いやね、仕事から抜け出してきたのよ。そしたら瑞鶴の飛行甲板に将斗さん達を見つけたから暇潰しと思ってきたのよ」
本来ならフューリアスが長女だが、空母としては鳳翔が長女なのだ。(世界初の最初から空母として設計され、竣工したからだ。ここらへんは海軍の意地があった)
「そういや陸軍航空隊が解散したからな……」
将斗が苦笑する。
陸軍航空隊は43年の八月に解散。航空隊の三分の一は日本防空隊と名を代えている。(使用機は二式戦鍾馗と三式戦飛燕)これには海軍航空隊も参加している。
残りは全て海軍航空隊に編入された。
一部の陸軍の士官(辻政信)は反発したが、天皇の勅命だと言われたら渋々と下がった。
一式戦の隼は韓国、中国、タイといった国に半数が売却された。残りの半数は訓練機や防空隊になった。
陸軍の搭乗員は徹底的に洋上飛行や対艦攻撃をさせられた。
「まぁ戦闘機隊は戦闘に関してはいいですが。洋上飛行だけでいいですからね、艦爆隊や艦攻隊はまだ駄目です。ようやく史実の南太平洋まで練度が上がりましたよ」
フゥと鳳翔がため息をつく。余程搭乗員が下手だったようだ。
「た、隊長ーーーッ!!」
そこへ通信紙を手に持った笹井と坂井と霧島が走ってきた。
「どないしたんや?」
将斗が少し驚く。
ゼェハァと笹井が息を整える。
「隊長大変ですッ!!」
「何が大変なんや?坂井と霧島の結婚でも決まったんか?」
「「違いますよッ!!」」
坂井と霧島が顔を真っ赤にして否定する。
「じゃあ何やねん?」
「り、陸軍の部隊が反乱して帝都を占拠したんですッ!!」
「何やてッ!!」
将斗が笹井につかみ掛かる。
「誰やッ!!誰が首謀者やッ!!」
「……こいつです」
笹井が通信紙を将斗に渡す。
将斗が通信紙を見た瞬間、将斗は通信紙を破り捨てて、東京の方向を見て叫んだ。
「やはり貴様かッ!!辻政信ゥゥゥッ!!」
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