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新大東亜戦争  作者: 零戦
66/131

第五十七話 原爆研究所ヲ爆撃セヨ

遅くなりましたf^_^;



―――ハワイ・オアフ島ヒッカム飛行場―――


今だに山岳地帯で銃撃音が時たま聞こえるオアフ島。


ヒッカム飛行場では富嶽隊が今まさに発進しようとしていた。


バラ…バラッ…バラバラバラッ!!


六基ある発動機のプロペラが次々と回り出す。


『帽振れェェェーーーッ!!』


拡声器から聞こえてきた声にその場にいた整備員達は一斉に帽を振る。


むろん指揮所にいた山口長官や将斗や翡翠、昴達も振っている。


上空ではもしものためとして最新鋭局地戦闘機紫電改五十四機が上がっている。


ブアァァァーーーンッ!!


信一を隊長とする富嶽一番機が発進する。


隊長機に続けとばかりに後続の富嶽が発進していく。


三十分後には富嶽十二機は大空へと飛び立っていた。


「……行ったか…」


山口長官が指揮所で呟く。


「信一なら大丈夫です。必ず作戦を成功させますよ」


山口の隣で将斗が言う。


「しかし、今回の作戦に何故信一君は出撃したかったのだ?」


「………」


山口の言葉に将斗達は黙ってしまう。


『………』


辺りに静寂な雰囲気が漂う。


「……すまん。今のは忘れてくれ」


山口は何か尻尾を踏んだと思い、将斗達に謝る。


「いえ、いいですよ。長官が謝る事じゃありません」


将斗は飛び去っていく富嶽を見つめる。


「……信一もけじめが必要なんですよ」


「……そうか…」


将斗の言葉に山口はもう何も言わなかった。




「隊長」


「ん?何や?」


ゴォォーンと高度一万を飛行中の富嶽一番機。


桜花が正操縦席に信一に話し掛ける。ちなみに副操縦席には桜花が座っている。


「……出番がないからやはあかんか?」


「あかんに決まってますよ」


桜花の容赦ないツッコミに冷や汗が出る信一。


「……しゃあないな……ほら」


信一が首に掛けていたロケットを桜花に渡す。


パカッと開けると写真が貼ってあった。


「……これはあたしか?」


写真の人物はショートカットで桜花そっくりの女性だった。


「……お前やない。元日本海軍空母飛龍制空隊所属の剣御琴つるぎみこと大尉や」


そこで一旦信一が言葉を止める。そしてゆっくりと喋りだす。


「俺や将斗達が未来から来た日本人やってのは知ってるやろ?」


「あぁ。俄かに信じがたいが、音楽が聞こえる機械を聞かされたら納得したよ」


音楽の機械とはウォークマンの事だ。


「御琴とは……まぁ一応恋人関係だった」


「だった?」


そこで信一が黙る。


「原爆の犠牲になったんや」


「ーーーッ!!」


桜花はゴクリと息を呑む。


「あの日、小笠原諸島沖でニューヨーク級四隻から核ミサイルらしき物が四発打ち上げられた。横須賀航空隊から制空隊が発進した。そん中に俺と御琴もいた。結局、四発とも誤報でな。全基落としたんや。……けど、それは囮やった」


「囮?」


桜花の問い掛けに信一が頷く。


「ひそかに空母二隻を主力とする米艦隊が東京に向かっていたんや。出撃していた俺らは急遽、米艦隊を攻撃した。空母二隻は炎上した。ここまでは良かった。撤退しようとした時、機関砲弾がエンジンに命中したんや。火は噴かんかったけど、墜落するのは当然やった。脱出しろと俺は言ったが御琴は断った」


「…脱出装置が故障したのか?」


「…違う。脱出は出来た。けど御琴は米軍の捕虜になるのは嫌やったんや」


「嫌だった?」


「……その二ヶ月前にハワイで翡翠と昴が米兵に凌辱されて殺されたからや」


桜花はゴクッと唾を呑んだ。


「その時、生き残っていた敵艦から核ミサイルが放たれた。俺達攻撃隊は全速でその場から離れた。俺が機内に積んでいたレーダーを見たらたまたま御琴の下に核ミサイルが来た。そしたら御琴はミサイルに突っ込んだ。そして、御琴は俺に向かって『信一。あたしは信一を愛してる。だから、あたしの分まで生きて』それを言った後、……急降下して御琴は消えた……」


信一はロケットの御琴を見つめるとまた首にかけた。


「……幸い、俺は原爆が爆発した地点からかなり離れてたから助かった。俺は原爆の爆風から逃げながら泣いたわ。どうしてあいつを護れなかったのか。どうしてあいつが死ななければならないのか。何度も思った。けどな、御琴が還ってくることはない。俺は決めた。出来るだけ長生きをしてあいつの分まで生きてやろうと思った。それが御琴に対する礼儀やと思う」


信一が話しを終える。


二人は黙ったままだ。聞こえるのは快調に回り続ける誉発動機の音だ。


「だから今回の作戦に参加したのか」


ようやく桜花が口を開いた。


「………」


信一は何も言わずに頷く。


「ではあたしは、御琴に似ているから副隊長にしたのか?」


「御琴は御琴。桜花は桜花や。そんなん関係ないわ。それに御琴に関してはとっくの昔に吹っ切れてるわ」


信一は桜花の頭を撫でる。


「ーーーッ!!」


ボゥッと顔が赤くなるのを桜花は感じた。


「そっそうか。ならいい」


ぷいと桜花はそっぽを向いた。


そんなかんやで二時間が経過した。




「隊長ッ!!海岸ですッ!!」


胴体前部にいた偵察員の報告に信一は双眼鏡で確認する。


「……よし、二番隊はサンディエゴを爆撃やッ!!」


『了解ッ!!』


富嶽十二機の内、半分の六機がサンディエゴへ向かう。


「俺達一番隊はこのままロスアラモスに向かうで」


残り六機の一番隊は一路、ロスアラモス原爆研究所を目指した。




―――サンディエゴ―――


『敵機来襲ーーーッ!!』


『ウウゥゥゥゥゥ〜〜〜ッ!!』


空襲警報が鳴り響くなか、パイロット達が滑走路にある愛機に乗り移る。


「急げ急げッ!!」


防空指揮所でサンディエゴ防衛司令官兼太平洋艦隊司令長官のニミッツ大将が叫んでいる。


この時、サンディエゴ防衛には三百機の戦闘機がいたが、一万まで上がれる機体はP―38しかいない。しかも、サンディエゴには僅か二十機しかいなかった。大部分は次の戦場となる可能性が高いインドに配備されていたのだ。


しかもパイロットの腕はほとんどが素人だ。さらに基地のレーダー員も素人に近い。


そのため、富嶽隊が西海岸に近づいて発見されても味方機だと判断したため報告が遅れたのだ。


ニミッツは何もかもついてないのだ。


「市民の避難は?」


「はい、全員郊外に避難しております」


伝令がニミッツに伝える。


「よし、ならば我々も防空壕に退避だ」


ニミッツが幕僚達に告げ、防空壕に逃げ込む。


全員が防空壕に入ると同時に富嶽の爆撃が始まった。




―――富嶽機内―――


「投下用意ィィーーーッ!!」


機長の怒号が響く。


「ヨーソローッ!!」


胴体前部にいた爆撃手が了解する。目標はサンディエゴ軍巷だ。


「撃ェェェーーーッ!!」


「投下ァァァーーーッ!!」


機長の命令に爆撃手は復唱してボタンを押した。


ヒュウゥゥゥゥゥッ!


爆弾倉が開き、中から二百五十キロ爆弾が次々と軍巷目掛けて落ちていく。



ドドオォォォーーンッ!!


ドドオォォォーーンッ!!


「命中ッ!!命中ですッ!!」


爆撃手が歓喜しながら機長に伝える。


「よし、全機投弾したら帰投だ」


その時、伝声管から悲痛な連絡が入る。


『後上方から敵機急降下ッ!!』


それは胴体上部にいる機銃員からの報告だ。


「全機につぐッ!!任務は終わった長いは無用だ。帰るぞ」


機長は速度を上げる。P―38でも追いつけない最大速度七百八十五キロだ。史実の計画案で考えられた速度に近い。本来なら計画案より遅いと思われるが作者はあえて計画案に近い速度にしました。



話しがずれた。


迎撃のP―38二十機は驚愕した。


何せ爆撃機が戦闘機よりも速いのだ。


「ガッデムッ!!追いつけない。仕方ない全機帰投だ」


迎撃隊長はそう言うと列機を率いて帰投した。




「司令長官。迎撃は失敗です。敵爆撃機はもの凄い速さで逃げたと迎撃隊長が言っています」


防空壕の中で報告にきた伝令がニミッツに報告する。


「そうか。死傷者は?」


「市民にはありません。軍での死傷者は三百程度です。また、空襲によりサンディエゴの六分の一が焼けました」


「むぅ。敵は軍巷を目標にしてたからな。これはよかったと思うな」


だが、ニミッツは釈然としない。


「(何だ?何かおかしい。胸騒ぎがする)」


それはすぐに分かった。


「長官ッ!!ロスアラモス原爆研究所より入電。敵爆撃機が向かっているとのことですッ!!」


報告を聞いたニミッツは壕に備えていた机を叩いた。


「奴らの狙いはロスアラモスかッ!!」




「米の迎撃網も対したはないな」


富嶽一番機の機内で正操縦席にいた信一がぼやく。


「ぼやくな隊長。緊張くらいしろよ」


はぁと桜花がため息をつく。


その時、胴体前部にいた爆撃手から報告が入る。


「見えましたッ!!原爆研究所ですッ!!」


報告を聞いた信一は目を細めた。


「全機攻撃用意ィィーーーッ!!」


隊員が慌てて準備をする。


十秒たって「完了ッ!!」と報告する。


「よし、勝負は一度きりやッ!!外すなよ」


信一が黙る。そして、怒鳴った。


「撃ェェェェェーーーッ!!」


「投下ァァァーーーッ!!」


爆撃手が復唱して投下索を引いた。


バァンッ!!


富嶽から大きな物体が落ちた。


………キイィィィーーンッ!!


そして物体の後ろから噴射が始まり、研究所に向かって飛翔していく。むろん列機も物体を投下し、物体も噴射を開始して研究所に向かう。


物体の正体は―――桜花だ。


史実では人間爆弾と言われ、神雷部隊が有名だ。


むろん翼もある。が、操縦席はない。ではどうするか?


桜花に赤外線追尾方式を入れたのだ。


熱源探知なため切り離された桜花は一直線に研究所に向かう。


研究所からも対空砲火を放つが当たらない。


遂に桜花は研究所に命中した。


ドゴオォォォーーーンッ!!


ドゴオォォォーーーンッ!!


続いて残りの五機も命中する。


「よし、爆撃は成功やッ!!全機全速退避やッ!!」


六機は最大速度の七百八十五キロに上げて退避する。


充分離れたその時だった。


カァッ!!ドドドゴオォォォーーーンッ!!


「ーーーッ!!」


風圧によりガタガタと揺れだす。元々、揺れていたがそれ以上の揺れである。


信一が振り返ると原爆の特徴であるキノコ雲がもくもくと上がっていた。


「……御琴…安心して寝ててくれよな……」


信一は無意識に胸にしまい込んだロケットを握っていた。


隣にいた桜花は黙っていた。



その後、爆撃隊はハワイ沖二百キロに到達。


ここで信一以下の搭乗員は落下傘で脱出した。


機体が汚染されているという万が一に備えてだ。


人間がいない爆撃隊は高度三千を飛行。


そして戦艦三笠、初瀬、扶桑、山城、伊勢、日向の艦砲射撃により六機は爆発四散した。


アメリカはロスアラモスを原爆研究所を破壊されたため、一から原爆の作り直しを余儀なくされた。


御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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