第四十二話 敵艦隊出撃ス
―――ドイツキール軍巷―――
「た、大変だ……」
一人の青年がキール軍巷で見た光景を報告するために小屋へ向かう。
青年が小屋に入ると中には電信機があった。青年は電信機を操作する。
『敵独海軍出撃ス。艦隊ノ後方ニ輸送船団アリ』
―――連合艦隊旗艦大和―――
「ちょ、長官ッ!!」
バタバタしながら宇垣参謀長が長官室に入る。
「どうした宇垣?ゼ○の使○魔ならとっくに始まっているぞ」
「それなら大丈夫です。録画してますので……って違いますよッ!!」
「じゃあ何だ?」
宇垣の右手には電文用紙があった。
「米、英、独に潜入していた諜報部隊から緊急入電です。連合軍艦隊が出撃したとのことです」
報告を聞いた山本は顔を険しくする。
「やはり来たか…」
「はい。それと各艦隊の後方に敵輸送船団もいるとのことです」
「………」
山本が黙る。
「やはりセイロン攻略でしょうか?」
宇垣が山本に質問する。
「だろうな。セイロンを攻略しないと日本攻略の一歩がないからな」
「連日、敵がセイロンを空襲しているのもあいますね」
「うむ。宇垣、練習航空隊を除いた全ての海軍航空隊をセイロン島に集結させろ。陸軍にも要請するんだ」
「はい、それと部隊の名前はどうしますか?」
「……第一航空艦隊でいいだろう」
思わず宇垣が苦笑する。
「史実のマリアナ沖海戦ですか?」
「あぁ。だが今回の第一航空艦隊は大丈夫だ。なんせベテラン揃いだからな」
山本も苦笑してしまう。
「司令長官の方はどうしますか?」
「大西でいいだろう」
「分かりました。早速、指示してきます」
宇垣は山本に敬礼して部屋を出る。
「……決戦だな」
部屋に残った山本はぽつりと呟く。
「……決戦ね」
後ろから声にするの山本が振り返ると金髪の美少女がいた。
「何だ日進か」
「何だとは何よ。……まぁいいわ。遂に来たわね」
「あぁ。俺も死ぬかもしれんな」
山本がそう言うと日進が山本に抱き着く。
「……馬鹿…。死ぬなんて言わないで。それにあの時から言ってるでしょ?死ぬ時は二人一緒だって」
「……そうだな。日本海海戦で俺が負傷した時、かなり泣いてたもんな」
途端に顔を朱くする日進。
「馬鹿……。忘れてよそれ」
フフフと笑う二人であった。
―――空母瑞鶴艦橋―――
「山口長官………」
「……将斗君。遂に来たよ」
将斗は山口に呼ばれて艦橋に来ていた。
内容は敵連合軍艦隊が出撃した事だった。
「それで山本長官は?」
「全艦艇にセイロン島に急行するよう指示されたよ。むろん海上護衛隊の艦艇もだ」
「なら急ぎましょう」
「もちろんだ」
それから二人は言葉を発する事なく、無言だった。
瑞鶴は防空指揮所にいた。
「………」
瑞鶴は黙っている。敵連合軍艦隊が出撃したということは少なからず仲間が死ぬという事を……。
第二機動艦隊所属艦艇の艦魂達も同じ事を考えていた。
艦魂達は無言のままセイロン島を目指した。
―――連合軍艦隊総旗艦キングジョージ五世―――
「遂に糞猿ジャップを滅ぼす事が出来るわよッ!!ジャップを一人残らず地球上から消すわよッ!!」
そう連合軍艦隊所属艦艇の艦魂達に話していたのは総旗艦のキングジョージ五世である。連合軍艦隊総司令長官は英海軍のサー・ジョン・トーベイ大将である。
艦魂達もキングジョージ五世の演説に酔いしれている。
だがある艦魂達はあまり乗り気ではなかった。
「………」
「どうしたのビスマルク?」
黙っているビスマルク以下ドイツ艦隊の艦魂達を見た英空母アークロイヤルが尋ねる。
(史実のアークロイヤルは41年に沈んでいるがこの世界では沈んでいない)
「……日本海軍の事で少しな…」
尋ねられたビスマルクはそう返す。
「…ジャップがどうかしたの?」
「奴らの多くの航空隊はベテラン揃いだと聞いている。セイロン島沖で一方的に叩かれるかもしれん」
ショートカットのビスマルクがアークロイヤルに話す。
「確かにね……。でも大丈夫よ、貴女達のパイロットにはメルダースとハルトマンがいるでしょ?」
アークロイヤルは安心させるようにビスマルクに話す。メルダースとハルトマンの二人も今回の作戦に加わっている。
「……ならいいんだが…」
ビスマルクはそう言うと手に持っていたワインを飲む。既に他の艦魂は出来上がっておりキングジョージ五世なんかは。
「アハハハハハッ!!ジャップなんか私の主砲で一撃よ。アハハハハハッ!!」
とまぁこんなふぅになっている。
連合軍艦隊は大西洋を南下して補給基地のマダガスカル島を目指した。
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