第四話 空母瑞鶴と宴会後編
自己紹介文で将斗達の身長が書いてなかったので載せます。 将斗身長164センチ 信一身長175センチ 長門身長157センチ 陸奥身長155センチ 瑞鶴身長154センチ 金剛身長156センチ 榛名身長151センチです。
宴会は盛り上がっていた。
「おらおら飲むぞ〜」
「おい、信一飲み過ぎやで。少し抑えろや」
「ん?そうかしゃぁねぇな」
二人ともすでに顔が赤い。将斗も辺りを見回すが修羅場になっている。あるとこ泣いているし、またあるとこでは刀振り回して暴れてる所もある。そこへ5〜8人の女性が来た。
「あれぇ?人間がいるよ。あんたら誰?」
長髪のポニーテールをしてる二十代の女性が二人に質問する。
「俺は、瑞鶴制空隊隊長の椎名将斗や。んで、こっちが連合艦隊首席参謀の鞍馬信一や」
女性達はピシっと固まってしまった。5分位たってようやく我に帰った。
「椎名将斗と鞍馬信一って空戦の神様と作戦参謀の神様の人ですよね?」
「あ、あぁまあ他の奴らからはそう言われてるけど…」
「きゃああああ!空母のみんな!ここに空戦の神様と作戦参謀の神様がいるよ!あ、あたしは空母赤城の艦魂赤城です」
ポニーテール赤城がペコリとお辞儀をする。
「自分は空母天城の艦魂天城です。以後よろしく」
「あぁこちらこそ」
長髪の礼儀正しい天城が頭を下げる。
「私は空母加賀の艦魂加賀です。いろいろ噂は聞いてますよ。なんでも憲兵隊の二個小隊を全員病院送りにしたそうですね」
長髪の加賀が笑顔でしゃべる。
「ははは」
「あの………空母土佐の艦魂土佐です」
長髪で前髪のせいで、少し目が見えない女性が頭を下げる。急いで加賀の後ろに隠れる。
「ごめんなさいね。土佐は恥ずかしがり屋さんなの」
「いやぁ気にしてないさ」
「自分は空母蒼龍の艦魂蒼龍です」
ショートヘアの蒼龍が恥ずかしそうに頭を下げる。
「あぁよろしく」
「あたしは空母飛龍の艦魂飛龍です」
顔を真っ赤にしたままツインテールの飛龍が頭を下げる。
「あぁよろしく」
ふと、将斗は彼女らの後ろに懐かしい人物を見た。
「龍驤!龍驤やんか!」
名前を呼ばれた女性が振り返る。長髪で風がなびいたらさらさら流れそうな髪だった。
「おぉ将斗じゃないか!
人間がいると聞いてな、まさかお前だったとはな…」
関心したように龍驤が頷く。すると横から瑞鶴がひょっこりと顔を出す。
「将斗、龍驤を知ってるのか?」
「あぁ、中国に派遣される際、龍驤に乗って中国まで行ったんだ。そうだ、三笠や肥前、松島は元気か?」
「うむ、皆さん元気すぎて困ってるよ。もうすぐ来ると思うんだが」
その時、扉が開いた。入ってきたのは金髪のショートヘアをした女性だった。他の艦魂達はその女性を見た瞬間、一斉に立ち上がり敬礼をした。
金剛が一歩前を出てしゃべる。
「三笠長官、お久しぶりです。わざわざこのような所に来てていただき光栄です」
「いや、気にするな。もう私は長官ではない。所で大和は誰だ?」
「自分です」
14〜16才の長髪の女の子が一歩前へ出る。
「ふむ、君が大和か。これからよろしく頼むよ。君の活躍期待してるからな」
「は、はい!ありがとうございます!」
大和は感激し、もう泣きながら頭を下げる。それもそうだ、何せ日本海海戦でロシアのバルチック艦隊を撃滅した立役者なんだから。
「よう三笠!はよ飲もうや」
将斗が三笠に声をかける。金剛ら艦魂はさあーっと顔が青くなった。恐れ多くも三笠に気軽に声をかけるとは信じられなかった。
「将斗久しぶりだな。内地に戻ったって聞いたけど、まさかここにいるなんて、どこの空母に配属になったんだ?」
「瑞鶴の制空隊の隊長だよ。ついでに少佐やし。所で松島や肥前はどうした?」
「松島さん達は今佐世保に行ってるんだ。輸送船を護衛してな。私は呉行きの輸送船の護衛で来たんだ」
「ふ〜ん。ご苦労なこった」
さて読者の皆さんもすでにお気づきだろう。松島は日清戦争の黄海海戦で活躍した防護巡洋艦「松島」である。台湾の馬公で爆沈したが、浮揚、整備して海上護衛隊の護衛巡洋艦部隊の旗艦となった。余談だが松島が爆沈した際、僚艦橋立にいた永野修身(当時大尉)が素早く短艇を出して、救助に向かったエピソードがある。
「椎名、貴様空母の搭乗員なのか?」
「そうだけどって、今ゆってたやん!」
金剛の問いに突っ込む将斗。途端に、金剛と榛名のが険しく表情になって将斗を睨む。
「空母の搭乗員てことはてめぇなんで戦艦の艦魂の所にいやがる!」
「なんでなん?俺戦艦好きやで」
将斗が平然と答える。
「じゃあなんで空母の搭乗員なんだよ?」
「時代の流れや。もう戦艦だけの戦いはないってことや」
「なんだと貴様!?それは私達戦艦を侮辱してるも同然!!!」
金剛がもの凄い形相し、将斗の前に来る。
「貴様にはもう一度海軍魂を叩きこんでやる。立て!尻を出せ!歯を食いしばれ!」
だが、将斗はゆらりと立ち上がり背中の刀を握る。
「………金剛。調子に乗るのもいい加減にせーや」
将斗が放った殺気はさっきの物ではなく、全く別の殺気だった。一気に部屋の気温が下がり、将斗の殺気を恐がり泣き出す艦魂もいた。
「…くっ。(なんだこの殺気は…こ、殺される!)」
金剛と榛名はふと足元を見ると足が震えてるのに気付く。
「こ、この私が震えるとは…」
「どうした、こないのか?」
「くっ。でぁぁぁ!」
金剛が竹刀を将斗に振り下ろす。ちなみに榛名は戦闘には参加してない。いや、将斗の殺気に戦意を失ってしまったからだ。
「………遅い」
「え?!」
金剛は呆然とする。後ろには金剛の首に刀で今にも斬りそうな将斗がいた。ほんの数秒前まで、自分の目の前にいたのにいつのまにか自分の後ろにいた。 金剛は泣いていた。悔しいからではない、むしろ恐怖感に煽られたからだ。
「えー加減にせんかいボケー!!!」
『スパーーーン!!!』
信一が将斗に思いっきり、ハリセンで叩いた。え?なんで持ってるかって?それは内緒や。(作者)。
「将斗〜。目さめたかぁ?」
「おう、なんとかな」
倒れてた将斗が立ち上がる。将斗は金剛と榛名を見て深々と頭を下げる。
「金剛、榛名。すまんかった。金剛大丈夫か?」
「はっ。あぁ、だ、大丈夫だ」
涙目で答える金剛。
「すまん。俺切れたら、手がつけられへんからな。大丈夫だよ、滅多に切れへんから」
将斗は艦魂一人一人謝り回った。特に艦魂の中で多く泣いていたのが駆逐艦と潜水艦の艦魂だった。最後はなんとか泣き止んだが、艦魂達の心の中では、(将斗さんを怒らせたら駄目。殺される)
という戦訓が残った。かくして、宴会は終了した。
―翌日。
十数機の零戦が瑞鶴の上空で訓練をしている。もちろん訓練を指揮しているのはこの人である。
「こらーー!敵が怯んだら突っ込めー!」
零戦二十一型の操縦席の中で、航空無線電話に向かって将斗が吠えている。
「いいか?必ず三機小隊で戦闘をしろ。一機だと必ず敵に囲まれて撃ち落とされるからな。全機それを肝にしろよ」
「「「「「「「「「了解!!!」」」」」」」」」
再び訓練が開始された。さらに離れた所では、村田重治少佐率いる艦攻隊が空母を標的にして訓練中であり、さらに江草隆繁少佐、高橋赫一少佐、千早猛彦大尉率いる艦爆隊は戦艦長門らを標的に訓練中で、淵田美津雄中佐率いる水平爆撃隊が同じく戦艦を標的に訓練である。また制空隊は椎名将斗少佐の他にも、板谷茂少佐、進藤三郎大尉、志賀淑雄大尉、二階堂易大尉、菅波政治大尉、岡嶋清熊大尉、佐藤正夫大尉、兼子正大尉、飯田房太大尉、能野澄夫大尉らが制空隊を率いて訓練中である。そこへ訓練が終わったのか将斗の零戦隊が次々と着艦してきた。将斗は一番最後に着艦した。防空指揮所の所に瑞鶴を見つけ駆け寄る。
「よぉ瑞鶴。二日酔いか?」
「うむ、朝から頭がガンガンする。それにしても、椎名少佐は酒は平気なのですか?」
「ああ、俺は酒は強い方だからな。所でなんで俺のことを少佐て呼ぶんだ?普通に将斗と呼べばいいのに、しかも敬語だし」
「そ、それはあなたがあの空戦の神様だとは気付かなかったからです」
将斗が何故空戦の神様と呼ぶのは理由がある。第一連合航空隊に所属してる時に、中国空軍戦闘機八十九機、爆撃機二十八機、さらに中国航空義勇軍「フライング・タイガー」のP40九十六機の計二百三機をも撃墜した猛者中の猛者である。ちなみに鞍馬信一は中国空軍戦闘機七十九機、爆撃機二十二機、P40八十三機、計百八十四機撃墜してる。瑞鶴はこのことを知らず(姉の翔鶴から聞いた) 出来るだけ、敬語を使うようにした。
「別にいいよ。敬語なんか使わなくて、むしろ普通のがいい」
「そうか?ならそうさせてもらうぞ」
いきなり敬語から戻ったので将斗が苦笑した。そして将斗が蒼い空を見上げる。
(運命の開戦まで後少しか…。未来では救えなかった艦魂達や多くの人間の命。せめてこの世界の艦魂達や人間は助けてあげたい)
将斗はそう思いながら再び訓練を再開するため瑞鶴と別れ、防空指揮所から愛機の零戦へと向かった。
御意見や感想をお待ちしてます。次はいよいよ運命の開戦です。