第三十九話 ハバロフスクヲ空爆セヨ
ソ連軍が満州に侵攻してから一ヶ月後の一月中旬、関東軍は守勢だったが中国軍や内地の援軍を借りて攻勢に回った。中国国民党もようやく共産党軍を中国から追い出すのに成功した。共産党軍はモンゴルのウランバートルに逃げ込んだ。
関東軍は援軍を貰い、怒涛の快進撃をした。
今の最前線はチタである。
だがハバロフスクには各地で敗退したソ連軍が集結していた。
陸軍部隊を援護するために海軍から第二機動艦隊が樺太の間宮海峡まで進撃した。予断だが既に樺太は日本軍の手に落ちている。
―――空母瑞鶴飛行甲板―――
「んじゃ行ってくるで」
「あぁ、私達の分まで頑張ってくれ」
「頼むぜ、将斗隊長ッ!!」
「まーくん、気をつけて」
「気をつけろよ、将斗」
将斗の敬礼に香恵、琥珀、翡翠、昴が答える。そこへ瑞鶴が来た。
「将斗、波はだいぶ収まったぞ」
「そうか、ありがとう瑞鶴」
「たいしたことない……ハクシュンッ!!」
瑞鶴がくしゃみをした。鼻水たらたらである(笑)
「おい、大丈夫か瑞鶴?」
将斗はポケットからハンカチを取り出し、瑞鶴の鼻水を拭く。
「ま、まひゃと……」
瑞鶴は顔を真っ赤にして頭から湯気が出てる。その光景を翡翠達が羨ましそうに見つめている。
「……これでよし。んじゃ行ってくるな」
「…あぁ…」
将斗が手を振るが瑞鶴は先程の行為の影響でポーとしている。
各空母では搭載機が飛行甲板に並んでいるが翔鶴と瑞鶴にはなかった。……いや瑞鶴に零戦九機が並んでいた。
今回の作戦には撫子新撰組は外された。理由は乗機が撃墜され脱出してもソ連軍に凌辱される可能性があると判断したからだ。そのため出撃は取りやめとなったが将斗以下九名の男は自分達だけでも出撃してもらえるよう頼んだ。その九名はというと。
将斗、笹井、坂井、西沢、太田、管野、近藤、松田、岩本である。
将斗は零戦を乗ると発艦開始の合図が出た。
『帽振れぇーーッ!!』
整備長の号令で対空火器員や整備員達が帽を振る。艦橋でも山口多聞長官以下の者も帽を振っている。
波が荒かったが将斗は難無くと発艦していった。各空母でも攻撃隊が発艦している。
やがて攻撃隊は編隊を組むとハバロフスクへ向けて飛行していった。
―――攻撃隊―――
零戦七十二機。(隊長・椎名将斗少佐)
九九式艦爆七十二機(隊長・江草隆繁少佐)
九七式艦攻七十二機(隊長・市原辰雄大尉)
攻撃隊は陸地に入る。将斗は周囲を見渡すが敵機はいない。
『将斗。敵機見えへんで』
蒼零が将斗にテレパシーを送る。
『そうか。ならこのままハバロフスクまで突き進むで』
編隊がハバロフスクへと進むと上空には僅か三機の戦闘機しかいなかった。それを見た将斗は素早く無線に向かって怒鳴った。
「制空隊全機につぐ。直ちに突撃せよ。思いきり暴れろッ!!」
将斗は操縦桿を倒すと急降下に入った。
地上では、攻撃隊に気付いた兵士達が慌てて戦闘配置につく。上空にいた戦闘機が急降下してる将斗を追い掛ける。がその背後に坂井、西沢、管野が回り込み機銃弾を浴びさせた。三機は瞬くまに爆発四散した。
将斗が狙ったのは離陸寸前のYaK-1戦闘機である。
「くらえッ!!」
ダダダダダダダッ!!
機銃弾は吸い込まれるようにエンジンに命中した。
炎に包まれたYaK-1は滑走路から外れて格納庫とぶつかった。
将斗はもう一回、滑走路にいた数十機のYaK-1を機銃掃射して二千まで上昇すると九七式艦攻隊が中隊を組んで今まさに爆撃しようとしていた。
―――市原大尉機―――
「全機投下用意ッ!!」
「ヨーソローッ!!」
市原大尉の号令に偵察員が了承し、照準器を覗く。
だがその時、市原大尉は掩体壕の外側にこんもりと盛り上がった小山を見つけた。直径は五十メートル程。緑の草に覆われているがどうもカムフラージュくさい。
市原大尉は中隊を率いてこの小山に狙いをつけた。
「右です右ッ!!ヨーソローッ!!」
偵察員が伝声管を通じて市原に伝える。
直ぐさま市原は機体を右に向ける。
「撃てーーーッ!!」
「投下ーーーッ!!」
偵察員が市原のを復唱して爆弾投下索を引いた。
ヒュウゥゥーーン。
腹に抱えていた五百キロ爆弾一発が、落下する。
市原隊は敵飛行場上空からの離脱をはかる。市原大尉は旋回し、傾いた機体から後方の眼下を見る。
パパパパッ!!
立て続けに地上に光の輪が明滅した。
その直後、白い硝煙と土煙が地表をおおい、完全に視界を閉ざした。
一瞬の間を置いて、地上を覆ったはずの硝煙と土煙が、地中で発生した大地が割れるような大爆発によって、空中高く吹き飛ばされた。
「おおッ!!やはり火薬庫があったかッ!!」
市原大尉は喜びの声を上げる。その頃、江草隆繁少佐の艦爆隊はというと。
―――江草隆繁少佐機―――
江草の眼下には多数の戦車や装甲車が集結している。
地上から高角砲を撃ち上げてくる様子はない。
「かかれッ!!」
江草少佐は、主翼をバンクさせ、攻撃開始を知らせた。
七十二機の九九式艦爆は主翼後縁についたフラップを全開にし、主翼前縁下についたエアブレーキから魔女の叫び声のような風切り声をあげながら急降下をする。
慌てて機銃に飛びついたソ連兵が、急降下で迫る九九式艦爆に銃口を向ける。だが、銃弾を発射するよりも早く頭上に二百五十キロ爆弾が降ってきた。
ヒュウゥゥーーン。
江草機の腹から切り離された二百五十キロ爆弾は弾頭の風車が回転して安全装置を解除した直後、地上にいたT-34戦車に命中した。
グワアァーーンッ!!
T-34戦車は二百五十キロ爆弾の直撃を受け、砲塔を吹き飛ばした。
江草の後続の列機も次々とT-34戦車を狙う。
空中に放たれた二百五十キロ爆弾は、空気を切り裂く不気味な音を立てながら、円弧を描いて戦車に迫り、直撃弾、もしくは近接弾となって爆発した。
ハバロフスクにいたソ連軍は既に壊滅状態であった。攻撃隊が帰投後、待機していた関東軍がハバロフスクを目指して進撃を開始した。
ハバロフスク守備隊は士気がまったくなく、次々とソ連軍兵士は銃を捨てて投降し、ハバロフスクは無血占領となった。
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