第三十六話 ウラジオストクを攻略セヨ
―――ウラジオストク沖約二百キロ地点―――
ソ連との戦闘開始一週間後、空母を中心に輪形陣を組んだ艦隊が航行していた。第二機動艦隊である。
その前方約百キロに輸送船団を護衛している高橋中将率いる第三艦隊がいた。
―――戦艦安芸―――
「初登場ですッ!!」
「……そうだな」
安芸の防空指揮所で姉の薩摩が大声で叫び、隣で妹の安芸がボソッとしゃべる。
「んもーーーッ!!安芸ちゃん元気ないよッ!!」
ニカっと薩摩が笑う。
「……私は普通だけど後ろにいる人達にはかなり迷惑だと思う」
「はにゃ?」
薩摩が振り返るとそこには松島ら三景艦や、三笠達がいた。
「あわわわッ。松島さん、三笠さんお久しぶりですッ!!」
薩摩が慌てて松島達に敬礼する。むろん安芸もしている。
「薩摩…。はしゃぐのはいいが、場所は弁えろよ」
松島が薩摩に注意する。
「は、はい気をつけますッ!!」
薩摩は慌ててしゃべる。
「たくっ。いいか。我々は……」
松島がぐだぐたと説教を始める。十五分後、説教がまだ続いてる。
「だから……ん?何だ?」
飛行機の爆音が聞こえてきた。
「第二機動艦隊からの攻撃隊だな」
三笠が呟くと爆音とともに飛行機の編隊が見えてきた。
「ウラジオストクの攻撃は陸攻隊がしたんじゃないのか?」
松島が三笠に問う。
「飛行場や基地施設は壊滅したがまだウラジオストクにはソ連艦隊がいる。それの攻撃隊です」
三笠が答える。
「てゆーかなんで三笠ちゃん達がいるの?」
橋立が問う。
「だから敵航空隊は壊滅したので攻略部隊に急遽臨時ですが配属されました」
「あー、そうなんだ」
ぽんと手を叩く橋立。
ワイワイと松島達が言う中、攻撃隊は一路ウラジオストクを目指して飛行していた。
だが一機の零戦が少しふらふらしながら飛行していた。
「将斗ッ!!もう少しちゃんと飛びーやッ!!」
「しゃーないやろ。爆弾が重いねんから」
将斗機である。ふらふらしているのは腹に二十五番爆弾を搭載しているからだ。その理由は、最初は左右の主翼に六番を搭載するつもりだった。(ちなみに将斗機以外は六番爆弾搭載)だが、将斗が。
「六番?別に二十五番でもいいで」
と冗談半分で言ったら本当になってしまったのだ。
「マリアナ沖で散った爆装零戦や特攻隊員の気持ちが分かったで」
『少しは言葉に気をつけろよ』
無線で昴が注意する。
『燃料はもつのか?』
香恵が問う。
「大丈夫や。そんなんでは落ちるかいな」
蒼零が胸を張っていばる。
「隊長。話しの最中ですがウラジオストクに着きましたよ」
二番機の坂井が告げる。
「ほんまやな。敵機もおらんな」
将斗が辺りを見回すが何処にも敵機はいなかった。
「全機突撃ッ!!」
攻撃隊長の村田重治少佐が突撃命令を出して、全機が突っ込む。高橋少佐率いる艦爆隊は残存する敵施設を爆撃する。艦攻隊は雷撃ではなく爆撃である。
「よし、行くでッ!!」
将斗が一隻の重巡に急降下爆撃をする。将斗機を追うように坂井、翡翠、昴、香恵、琥珀機が突入する。
この時、ウラジオストクには重巡四隻、駆逐艦二十八隻がおり、将斗が狙った重巡はカリーニンであった。
ガタガタと機体が揺れる。対空機銃もあまり飛んでこない。
「撃ぇーーーッ!!」
将斗が渾身の気合いとともに二百五十キロ爆弾を投下した。
ヒュウゥゥーーーンッ。
将斗が上昇しようとした時、敵重巡の防空指揮所に白人の少女を見つけた。少女もこちらを見たが一瞬の出来事で機体は上昇した。
グワアァァーーーンッ!!
爆弾は重巡の十八センチ砲に命中した。
さらに立て続けに六番爆弾が重巡に降り注いだ。
グワアァァーーーンッ!!
グワアァァーーーンッ!!
グワアァァーーーンッ!!
装甲は貫くことは出来なかったが重巡の対空火器が破壊された。
「戦果はまぁまぁやな」
将斗は風防を開けて眼下を見下ろしている。
「蒼零。敵機は?」
『辺りにはおらん。やっぱ俺らが攻撃する前になんどか攻撃してたからそれで全滅したんとちゃう?』
蒼零がテレパシーを将斗に送る。
『隊長。今回は据え物斬りでしたね』
笹井醇一中尉が無線で将斗に話す。
「しゃーないやろ。後は三笠達に任すか」
将斗はそう呟くと制空隊をまとめ、村田らとの攻撃隊と一緒に帰投した。
―――数時間後第三艦隊―――
「砲撃開始ッ!!」
第三艦隊旗艦薩摩の艦橋内に司令長官の高橋伊望中将の声が響くと合わせるかのように薩摩の三基の主砲も唸りを上げた。
ズドオォォーーーンッ!!
ズドオォォーーンッ!!
空襲にも逃れまだ残っていた施設が炎上する。
そこへ陸軍部隊が突入する。今回の上陸部隊は二個師団である。
「順調なようだな」
三笠の艦橋で三笠が呟く。
ウラジオストクは燃えていた。攻略したのはそれから一日たってからだった。
御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m次回は番外編です。