第三十四話 歓迎会
―――シンガポール―――
二週間後、セイロン及びアッズ環礁を占領した第二機動艦隊と第三機動艦隊はシンガポールに入港した。さらに他に、見慣れない艦艇がある。それはセイロン島で捕獲した旧英東洋艦隊である。日本内地で改装を受ける予定だが艦艇のほとんどが損傷しているため急遽シンガポールで応急修理をすることになった。
―――空母瑞鶴第三会議室―――
会議室に第二機動艦隊と第三機動艦隊の艦魂が集まっている。そこへ別の艦魂達が入ってきた。
『……………』
入ってきた艦魂達のほとんどは頭や手に包帯を巻いている。彼女らと向き合うと瑞鶴がすっと前に出た。
「日本海軍連合艦隊所属第二機動艦隊旗艦空母瑞鶴だ。貴官達はこれから我が連合艦隊に編入する。悔しいだろうが我らと戦ってくれ」
瑞鶴が頭を下げる。彼女達は黙っている。急に一人の女性が前に出た。
「旧英東洋艦隊旗艦のウォースバイトだ。老齢艦ばかりだがよろしく頼む」
ウォースバイトと瑞鶴が握手すると周りから拍手が贈られた。その時、三笠ら古参組が会議室に入ってきた。
「さぁ、今日は飲もう。たくさん主計科からパクってきたからな」
「いいのか三笠さん?」
「四〜五本だから大丈夫だ。後は小沢から貰った」
「貰ったんじゃなく無理矢理奪ってきたんだけどね」
三笠の後ろからひょっこりと肥前が現れる。
「黙ってろ肥前」
「だって、久しぶりの登場なんだからいいじゃない」
「あのぅ……」
三笠と肥前が睨み合っているとウォースバイトが来た。
「なんだ?」
「さっき、この人が貴女を三笠と言ったが本当ですか?」
ウォースバイトが三笠を見る。
「うむ、確かに私は三笠だが……」
途端にウォースバイトの目が輝く出す。
「あ、貴女が日本海海戦でロシアのバルチック艦隊に勝った三笠様ですかッ?!」
『三笠様ッ?!』
思わず、日本艦魂達はハモる。
「お、お会いできて光栄ですッ!!じ、自分は旧英東洋艦隊旗艦ウォースバイトですッ!!」
ウォースバイトが三笠に最敬礼をする。さらに後ろにいる英艦魂達も最敬礼をしている。
「い、一体何なんだ?」
三笠が少し後ずさる。
「はい、我々英東洋艦隊の戦艦部隊は三笠様ファンクラブの一員ですッ!!」
『ファンクラブッ!!』
またも日本艦魂はハモる。
「なんで私のファンクラブなんだ?」
「はいッ!!三笠様以下の連合艦隊は当時、世界最強艦隊と言われていたロシアバルチック艦隊をわずか四隻の戦艦と二十もいかない巡洋艦でバルチック艦隊を撃ち破りました。我々、イギリス艦魂達は感動しました。勝つ事は無理と言われていたのにバルチック艦隊に勝ったからです」
興奮した様子でウォースバイトが喋る。
「うむ、確かにあの時は凄まじかったな。東郷ターンが出なかったら負けてたかもな」
「やはりそうですか」
リベンジがうんうんと頷く。
いつの間にか三笠達は会議に入ってしまった。
「……あ〜、仕方ない。私達だけでやろうか?」
「それが正しいわ。皆もやろう」
飛龍の言葉で他の艦魂が動き出し、ささやかであるが歓迎会が始まった。
「私は空母インドミタブルだ、よろしく」
「私は戦艦金剛だ」
「貴女がイギリス生まれの日本戦艦か」
金剛とインドミタブルが握手をする。
また違う所では。
「へぇ〜ロンドンってアニメオタクなんだ」
「はい、ガン○ムS○EDとか好きです」
「ふ〜ん。私はナ○シコとかエ○ァだね」
ロンドンと瑞穂がアニメトークで盛り上がっている。
そんなこんやで盛り上がっていると一時間後。
「よぅッ!!飲んでいるか?」
「酒の補充よ」
「つまみも持ってきたぞ」
「ちょっとほんまに離れてや」
将斗に翡翠、昴、そして何故かいた信一が部屋に入って来る。さらに、
「お邪魔するよ」
「三笠〜ッ。俺の酒を掻っ払うなッ!!」
第二機動艦隊司令長官の山口多聞中将に第三機動艦隊司令長官小沢治三郎中将が来た。さらに、
「お邪魔します」
「霧島いるか?」
「イギリスの艦魂がいるぞッ」
笹井や坂井達も来た。
「ふむ。将斗や坂井達が来たのは分かるが小沢。なんで来た?」
「三笠が俺の酒を掻っ払ったから取り返しに来たんだ」
「悪い、もう無くなったぞ」
三笠が空になった酒ビンを上に上げてひらひらとする。
「お……俺の酒が……」
小沢ががっくりと膝をつく。小沢の隣にいた山口が小沢を慰める。
「まぁまぁ小沢さん。酒を持ってきたから飲みましょう」
「うぬぅ…。仕方ないな」
小沢は山口から酒を貰うとがばがばと酒を飲む。
「ねぇ信一君。隣にいる子は誰?」
翔鶴が信一に問う。
「ああ、実はな「姉様ッ!!」えっ?」
信一が声のする方向を見るとインドミタブルがいた。
「姉様。何故そのような奴に体を引っ付けているんですか?」
若干、インドミタブルから殺気が出ている。
「だって信一様は私の旦那様だからよ」
『旦那様ッ!!』
思わず日英の艦魂がハモる。事情を知っている将斗や山口達は笑いを堪えている。
「……将斗。説明してくれないか?」
―――とある所―――
「はッ!!誰かが私に説明してと求めているッ!!」
「イ○ス。どうした?」
「なんでもないわア○ト君」
―――空母瑞鶴―――
「ん?今なんかおかしな場面があったような……」
「どうした将斗?」
瑞鶴が尋ねる。
「いや、なんもない。説明やったな。実はな、会議室に行こうと通路を歩いてたんや」
―――回想―――
『さて、第三会議室に行くか』
『盛り上がっているやろな』
ドンッ!!
『わ(キャッ)ッ!!』
「信一とトイレ帰りのフォーミダブルがぶつかった。フォーミダブルは倒れそうになった時、信一が助けた」
パシッ。
「だが、信一が引っ張る力が強かったため、フォーミダブルは信一の胸に飛び込んだ」
ポスッ。
『あ……』
『大丈夫か?』
ズキュウゥーーンッ!!
「信一の笑顔はフォーミダブルにとって強烈だった」
『は……はい…旦那様…』
『はっ?』
『今、私は貴方に一目惚れしました。結婚して下さい』
『ええぇーーーッ!!』
『と、とりあえず部屋に入ろうか』
『ああ、そうだな』
『行きましょ、行きましょ』
『あ、お前ら待てやッ!!』
『あッ!待ってください旦那様ッ!!』
―――回想終了―――
「と、そうゆうことや」
シーンと部屋の中が静まり返る。何人かは鼻血を出したりとかしている。肝心のインドミタブルはというと。
「……………」
強烈な殺気を信一に送っている。信一も分かっているのか顔が青ざめている。
「……信一」
翡翠が信一に近寄る。
「……なんや?」
「今の事は全て陸奥にゆっとくわ」
「や……止めてくれ」
「無理やね〜。あ〜楽しみ〜」
翡翠は物凄く楽しそうだ。
「てゆーかなんで信一君、ここにいるの?」
翔鶴が問う。
「ほんまは、英戦艦の改装をどうするかシンガポールまで飛んできたんや」
将斗が信一の代わりに答える。
「成る程ね」
「まぁ、内地に帰っても無事に生きれるかどうかが問題やな」
「それは言えてるな」
再び歓迎会は再開された。何人かは二日酔いになった。
予断だが、内地に帰った信一は、陸奥にコテンパンにしばかれたのはゆうまでもない。
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