第二十七話 武蔵 大鳳 信濃誕生と女子航空隊
―――八月八日柱島泊地―――
この日、三隻の軍艦が連合艦隊に加わった。
―――戦艦大和第三会議室―――
第三会議室には大和以下の艦魂達と将斗達がいた。そして将斗達の正面には三人の艦魂がいた。三人の艦魂の内、真ん中にいた艦魂が一歩前に出る。
「本日付けで連合艦隊配属になりました戦艦武蔵ですッ!!」
武蔵が敬礼する。その右にいた艦魂が前に出る。
「同じく連合艦隊に配属になりました空母大鳳ですッ!!」
大鳳も武蔵と同じく敬礼する。最後に武蔵の左にいた艦魂が前に出る。
「同じく連合艦隊に配属になった航空戦艦信濃だッ!!」
信濃が敬礼する。そして大和が前に出る。
「連合艦隊旗艦大和です。ようこそ連合艦隊へッ!!」
大和がそう言うと艦魂達からパチパチと拍手が送られた。
さて、信濃について説明しよう。元々、信濃は大和型戦艦の三番艦として竣工する予定だった。史実ではミッドウェイ海戦後に空母に改造されることになった。この世界の信濃も空母として竣工する予定だったが、これに待ったをかけた人物がいた。もちろん川嶋中将達である。川嶋中将達は史実の伊勢型航空戦艦同様に後部に飛行甲板を設置した。ただし、水上機ではなく艦上機が発着艦できるようにした。
ま、ようするに紺〇の艦隊に登場する航空巡洋艦東光をモデルにしたのである。飛行甲板は七十五ミリの装甲板である。東光は斜めに飛行甲板をしてあるが信濃のは瑞鶴達空母と同じ縦の飛行甲板である。さらに艦尾を約六十メートル程延長して飛行甲板をしいた。しかも二段空母である。
主砲四十六センチ三連装五十口径砲二基。連装砲一基(後部に配置)。十二.七センチ連装高角砲十六基。二十五ミリ三連装対空機銃四十八基。速度三十二.七ノット。外部装甲のすぐ内側にゴム層、そのまた内側にスポンジ層がある。(ちなみに連合艦隊の戦艦はすべてこれを装備している)
飛行甲板は全長二百十メートル。全体の全長三百三十メートル。排水量七万五千トンである。
現在二番艦の尾張が建造中である。
将斗が信濃に近寄る。
「信濃、大鳳。五航戦の皆を頼むよ」
「はい、貴方が椎名将斗さんですね。これからもよろしくお願いします」
大鳳がペコリと挨拶する。
「貴様が椎名将斗か?」
信濃が尋ねる。
「そうやけど」
するとズイと将斗に近寄りジっと顔を見つめる。流石に将斗も焦る。
「どないしたん?」
ジっと見ていた信濃がフっと笑う。
「いやなに貴様なら大丈夫だと思ってな」
「何が?」
すると信濃がひざまづく。
「…椎名将斗。私を貴様の嫁にしてくれ」
「…………は?」
思わず会議室にいる全ての艦魂達の目が点になる。むろん将斗達もだ。
「なぁ。今なんて言ったん?」
信一が尋ねる。
「ん?ならもう一回言おう。私を貴様の嫁にしてくれと言ったんだ」
『……………ハアアアアァァァッ!?!?!?』
瞬くまに会議室が騒然とする。そして瑞鶴、大和、長門、山城、三笠、肥前、生駒、摂津、金剛、榛名、三河、飛龍、蒼龍、龍驤、瑞穂、隼鷹、蒼鶴、長良、五十鈴、雪風、一六八、の艦魂達が刀やら銃を取り出して信濃に狙いを定める。
だが彼女達より異常な殺気を出してるのが二人いた。
「……信濃と言ったか…どうやらテメーの命は今日までだ」
「……フフフ。どうやって泣かせようかしら?」
はっきり恐い。二人の近くにいた艦魂達は口々にこう言った。
今まさに艦魂大戦争が勃発しようとしていたがここで待ったがかけられた。
「翡翠、昴やめや。瑞鶴達も」
将斗に言われ渋々と瑞鶴達が武器をしまう。しまったのを確認した将斗が信濃を見る。
「なぁ。なんでいきなり嫁にしろって言うん?」
「貴様の事は他の奴らから聞いている。だから私は貴様の刀となり戦いたいのだ」
それは若き戦姫の決意だった。そして将斗の答えは。
「嫁にするのは遠慮してくれ。一緒に戦うのは喜んでや」
信濃のは将斗の返事に少しがっかりする。
「まぁある程度は予期していた。だが必ず、貴様の嫁になってみせる」
友情みたいな雰囲気に光が光だし中からは霧島と坂井一飛曹が現れた。
「坂井どうした?」
「た、隊長ッ!!大変ですッ!瑞鶴と翔鶴の搭乗員がッ!」
「五航戦の搭乗員達は大鳳と信濃に移動したやろ。なんかあったのか?」
「そうなんです。だから早く来て下さい」
霧島が将斗の手を取って坂井と一緒に消える。信一や翡翠、昴、瑞鶴達も霧島達を追うため瑞鶴に向かった。
―――空母瑞鶴防空指揮所―――
「一体どないしたん?」
「とりあえず飛行甲板を見て下さいよ」
坂井にせかされ、将斗が飛行甲板を見る。
「……何やこれ?」
「将斗どうしたのだ?」
瑞鶴達も追い付いて飛行甲板を見る。
「………えっ?」
そこにいたのは搭乗員達がいた。新任の搭乗員達であるが少し服装が変だ。服が薄ピンク色である。さらに胸の部分が膨らんでいる。
「…って女ぁァァッ!!」
どの搭乗員を見ても女である。将斗達は急いで飛行甲板に降りる。
「やっぱり女やな」
「そうでしょ隊長。自分もびっくりしましたよ」
笹井達が艦橋から出て来る。笹井達の後ろには山口多聞長官がいた。
「山口長官。これはどういう事ですか?」
「ああ、俺も詳しい事はわからんが五航戦の穴を女子搭乗員で埋めるらしい」
「しかし女子航空搭乗員は今年から始めたじゃありませんか?」
「…実は、大本営が十五年頃にひそかに搭乗員を集めてたみたいなんだ。今回配属されるのはその時集められた搭乗員達だ。それに乗組員の大半も女子だ。なんでも女子でも艦を動かせるようにと大本営が女子海兵学校を十五年に作ったみたいだ」
山口長官の説明に将斗が溜め息を吐いた。
「大本営の奴らいつの間にそんなん作ってん…」
「制空隊隊長は将斗君だ。艦爆隊は高橋君。艦攻隊は村田君だ。嶋崎君は翔鶴の飛行隊長になったよ」
「艦攻隊はブツさんですか」
「それとこの航空隊の司令官は将斗君、君だよ」
「………マジっすか?」
山口長官が苦笑しながら頷く。
「マジだ」
「うっそ〜」
将斗もまさか自分が司令官になるとは思わなかった。
「俺は既に挨拶はすましたからな。ま、頑張ってくれ。あ、それと司令官でも出撃してもいいぞ」
山口長官が艦橋に戻る。将斗が溜め息をもう一度つくと整列している女子搭乗員達の前に立った。
「本日付けで女子航空隊の司令官になった椎名将斗少佐だ。固い事はゆわん。死ぬな。それだけや。以上」
女子搭乗員達が敬礼する。解散となり将斗達が部屋に戻ろうとすると呼び止められた。
「お久しぶりです。椎名少佐」
「お前らは確か、呉の時に…」
「土方香恵少尉だ」
「原田琥珀少尉だぜ」
「そうだな。久しぶりだな」
「実戦経験はあるんか?」
信一が二人に問う。
「うむ。我々女子航空隊は中国で一ヶ月だが中国義勇軍と戦った」
信一の問いに香恵が答える。
「そうなんだ。俺と香恵も五機くらい落としてるぜ」
琥珀が威張る。すると香恵が瑞鶴達を見ると途端に表情が険しくなった。琥珀も瑞鶴達に気付いたのだろう。殺気を送ってる。むろん翡翠と昴も殺気を送ってる。
「また忙しくなるな…」
将斗が蒼い空を見て呟いた。
御意見や感想等お待ちしてますm(__)m