第二十五話 四国軍事同盟
―――七月上旬ホワイトハウス―――
「一体これはどういう事だ?」
そう言ったのは米大統領のルーズベルトである。そして机を挟んでルーズベルトの正面にいるのは顧問官のハリー・ホプキンスである。
「本当に君はそれが出来るのかね?」
ルーズベルトが口を開く。
「出来るかもしれません。相手は私達と同じ白人ですから」
「だがチャーチルが応じるかな?」
「なんとか出来るかと思います。これが出来なくては対日戦は出来ません。それにチャーチル首相も大統領もソ連が無くなった方がいいはずですよ」
ルーズベルトが苦笑する。
「それもそうだなハリー。ハリー急いでチャーチルに電話だ」
「はいッ!」
ハリーがドタバタと部屋を出ていく。ルーズベルトはゆっくりと椅子を回し窓の外を見る。
「ドイツか………」
―――イギリス首都ロンドン首相邸―――
「首相。米大統領のルーズベルトからお電話です」
年配の執事が入る。
「何?ルーズベルトから?」
「はい、そうです」
チャーチルは葉巻に火を付け、吸ってから電話に出た。
「どうしたルーズベルト?」
「チャーチル、率直に言おう。ドイツと和平して同盟を結ぼう」
チャーチルは頭にハンマーに殴られた感触があった。チャーチルはしばし思考が停止した。そしておもむろに葉巻を吸い始める。チャーチルが葉巻中毒であることは有名である。半分近くまできた時にようやくチャーチルは話し出す。
「…ルーズベルト。本気か?」
「はい。ヒトラーにソ連攻撃の支援をしましょう。我々はいずれ共産主義を倒さないといけません」
「うむ…」
チャーチルが黙り込む。
「それにヒトラー達は同じ白人です。ヒトラーは『我が闘争』にもジャップの奴をけなしています」
「うむ…」
「チャーチル。ヒトラーと同盟を結ぼう」
「……よし。ヒトラーと結ぼう。私からやってみる」
「ありがとうチャーチル。必ず同盟を成功し、ジャップを駆逐しよう」
「ああ」
チャーチルは電話を切ると急いでドイツに休戦及び同盟の通信を入れた。この事を聞いたヒトラーはすぐさま飛び付き、七月中旬にはベルリンで米、英、独、伊の四国軍事同盟が締結した。ヒトラーは日、独、伊三国軍事同盟を破棄し、日本人大使官及びドイツにいるすべての日本人をソ連経由で送り返した。
この同盟を日本が知ると動揺が起きた。首相である東条英樹はドイツに同盟を取り消すよう打診を打ったが無視された。
―――七月下旬戦艦大和―――
『………』
艦魂達が集まる第三会議室では静寂が支配していた。
「ドイツが裏切るとはな…」
長門がボソッと呟く。
「それに奴らは黄色人種を叩き潰すとか言ってます」
司会役である、大和が付け足す。
「…中国も裏切られてしまったから混乱が起きてる」
山城が呟く。
「大変な事になったもんだ…」
再び会議室が沈黙する。そこへ将斗と信一が入って来る。
「よっ」
「将斗。何故ここにいるんだ?」
「んぁ、山本長官に呼ばれてな。今後どうするか考えてたんだ」
「どうするのよ将斗?」
飛龍が問う。
「インド洋から来るのか、パナマ運河から来るの検討してたんや」
「確かにな。敵はどこから来るのかわからんからな」
金剛が頷く。
「けどよ、先にソ連からやるかもしれないぞ」
榛名が問う。皆、世界地図を覗き込む。
「いや、ソ連を倒すにはかなりの兵力がいる。米、英、伊の援軍を待ってから進撃する可能性が高いで」
信一が榛名の問いに答える。皆が考えてる時、翡翠と昴ともう一人金髪でショートカットの美少女が入って来た。
「もう着替えはすんだのか?」
「ああ、翡翠姉がエンターにちょっかい出してたけどよ」
「だって〜。エンターメイド服似合うんだもん。襲いたくなるわよ」
「うるせぇッ!!なんで俺があんな目に…」
キッとエンタープライズが翡翠を睨む。
「まぁまぁ減るもんじゃないし」
翡翠が自らエンタープライズの怒りを沈める。
「エンター。着替えたのか。こっちこい、皆に自己紹介や」
「わかってるよ将斗」
エンタープライズが大和の近くに来て、大和と向き合う。
「空母エンタープライズ、本日より大日本帝國海軍連合艦隊に編入するぜ」
「しますやろ?」
「うっ……編入します」
「よろしい」
将斗がニカっと笑ってぽんぽんとエンタープライズの頭を叩く。将斗の笑顔を間近に見たエンタープライズは顔を真っ赤にする。その行為に瑞鶴以下の者がムッとする。
「そういえば、艦名は何なのよ?」
少しイライラしている飛龍が尋ねる。
「ああ、エンタープライズは蒼鶴、ヨークタウンは翔龍、ホーネットは瑞龍や」
「いい名前ではないか」
伊勢がうんうんと頷く。ちなみにホーネットとヨークタウンは今ここにはいない。二隻は二段空母に改造中である。
「ところで何の会議してんだよ?」
蒼鶴が尋ねる。
「敵がパナマ運河から来るのか、インド洋から来るのか検討してんたや」
将斗が答える。
「いや、普通にインド洋だろ?」
蒼鶴は当然とした答えを出す。
「それはなんでですか?」
大和が問う。
「パナマ運河から来たとしても四国連合艦隊だろ?パナマ運河通る時、大艦隊だから時間がかかりすぎるぜ。ならインド洋から来るのが必然的だぜ」
「そう言われればそうなるな。山本長官に具申してみるわ」
信一が答える。
「さぁて会議も終わったし、エンターが連合艦隊に加わった宴会でもするか」
将斗が立ち上がる。
「マイペースやな将斗も」
昴が苦笑する。
「では宴会の準備をしましょうッ!!」
『おーッ!!』
大和の命令に皆が準備を始める。
「のんきな奴らだな」
蒼鶴が苦笑する。
戦いはこれから始まる。
ご意見や感想等お待ちしますm(__)m