第二十三話 ミッドウェイ海戦中編
二十四機のドーントレスは艦隊上空にいた雲の中にいた。
「敵機きまぁすッ!!」
見張り員の叫び声が防空指揮所にいた青木艦長と赤城に聞こえる。
「とーりかーじ一杯いそーげーッ!!」
青木の命令を操艦手が復唱する。
「とーりかーじ一杯いそーげーッ!!」
船体が軋みゆっくりと左へ動く。赤城はドーントレスを睨み、刀をドーントレスに切り付ける。
ボゥッ。
四機が火を噴いたが残った四機が突っ込んでる。敵機が爆弾を切り放す。
「敵機投弾ッ!!」
「総員衝撃に備えろッ!!」
青木艦長が指示を飛ばす。赤城は手摺りに捕まる。
ヒュゥゥゥゥゥンッ。
ヒュゥゥゥゥゥンッ。
ヒュゥゥゥゥゥンッ。
ヒュゥゥゥゥゥンッ。
ズシュウゥゥゥンッ!!
ズカアァァァァンッ!!
ズカアァァァンッ!!
ズカアァァァンッ!!
「グアァァァァァァッ!!」
口から吐血し、腹は裂け血が噴き出る。防空指揮所は一面血だらけである。その中に赤城が倒れてる。
「…くぅ……」
赤城の横に青木艦長は指示を飛ばす。
「消火急げッ!!」
『上部飛行甲板発着艦不能ッ!!』
『同じく下部飛行甲板発艦不能ッ!!』
「天城姉さん達は……」
赤城が手摺りに捕まり立ち上がった時、天城と加賀の上空にいたドーントレスが急降下していった。
―――空母天城―――
「敵ぃぃぃ急降下ぁぁぁ直上ぉぉぉッ!!」
見張り員の悲鳴の報告を天城艦長の有馬大佐が指示を出す。
「面舵一杯いそーげーッ!!」
「面舵一杯いそーげーッ!!」
操艦手が面舵を取る。
ドンドンドンドンッ!!
ダダダダダダダッ!!
高角砲と対空機銃が火を噴く。天城が防空指揮所にいた。
「来るなら来なさいッ!!」
直後。
「敵機投弾ッ!!」
「糞ッ!!総員衝撃に備えろッ!!」
ヒュゥゥゥゥゥンッ。
ヒュゥゥゥゥゥンッ。
ヒュゥゥゥゥゥンッ。
ヒュゥゥゥゥゥンッ。
ズカアァァァァンッ!!
ズカアァァァァンッ!!
ズカアァァァァンッ!!
ズカアァァァァンッ!!
「グアァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
天城の身体中から血が噴き出る。
赤城同様防空指揮所は血だらけである。
「み…んな……あ…と……はまか…したわ……よ……」
天城は気絶した。
―――空母加賀―――
「敵機きまぁすッ!!」
「とーりかーじ一杯いそーげーッ!!」
「とーりかーじ一杯いそーげーッ!!」
操艦手が復唱し、取り舵をする。
「敵機投弾ッ!!間に合いませんッ!!」
「総員衝撃に備えろッ!!」
ズシュウゥゥゥンッ。
ズシュウゥゥゥンッ。
ズカアァァァァンッ!!
ズカアァァァァンッ!!
「グハァァァッ!!」
加賀が吐血する。服が血だらけになる。倒そうになるが艦長の岡田次作大佐が抱き抱える。
「加賀、大丈夫か?」
「次作さん。私は大丈夫です。土佐は?」
「土佐は大丈夫だ。だが赤城と天城とお前らは戦闘不能だ」
「そうですか」
加賀はそう言うと気絶した。
―――空母土佐防空指揮所―――
「あぁ…お姉ちゃんッ!!」
「落ち着け土佐ッ!!」
姉の船が燃えてるのを見てパニックになっている土佐を艦長の森下信衛大佐が落ち着かせる。
「で、でも……」
「大丈夫だ。今三空母から発光信号があって戦闘は不能だが沈む気配はないだとさ。もちろん加賀もだ」
「ほ、本当?」
「ああ、本当だ」
「よ、よかった〜」
土佐がへなへなと座り込む。
「後は第二機動艦隊に任せよう土佐。俺達は救助作業だ」
「はいッ!!」
森下と土佐が艦橋へ降りる。
―――米機動部隊旗艦エンタープライズ―――
「スプルーアンス司令ッ!!攻撃隊より入電。敵大型空母三隻炎上しているとのことです」
「そうか…よくやってくれた…」
しみじみとスプルーアンスが話す。無理もない、今まで連戦連敗だったのだから。
「これで我が米海軍の士気も上がるだろう」
参謀達も皆頷く。とその時、レーダー室から悲鳴の叫びが聞こえてきた。
『敵来襲ッ!!敵来襲ッ!!』
一気に司令部は愕然とした。
「か、数は何機だッ?」
「敵約百五十余りですッ!!」
「急いで戦闘機を出せッ!!」
スプルーアンスが慌ただしく指示を出す。米機動部隊が戦闘準備が整わない内に第二機動艦隊から発進した攻撃隊が攻撃を開始する。
―――零戦三二型椎名将斗機―――
「零戦隊全機突入やッ!!戦闘機を一機も飛び出さすなッ!!」
将斗はそう指示すると操縦桿を倒して急降下に移る。
ドンドンドンドンッ!!
ダダダダダダダッ!!
どうやら敵機動部隊は戦闘機を出すのを諦めて対空砲火を放ち出した。愛機が新型の三二型に変わった零戦だが相変わらずの扱いやすい戦闘機である。機銃弾に当たらぬようにフットバーを右に左に蹴飛ばす。瞬くまに空母が見えてくる。
「撃ーッ!!」
ダダダダダダダッ!!
ドドドドドドドッ!!
ボゥッ。
飛行甲板でワイルドキャットが激しく燃える。そこへ高橋赫一少佐率いる艦爆隊が突入する。
ドンドンドンドンッ!!
ダダダダダダダッ!!
ボゥッ……ボゥッ。
「七番機、八番機炎上ッ!!」
「敵艦隊から出来るだけ離れろッ!!必ず味方艦隊が来るから救助を待てと伝えろッ!!」
高橋はそう言いながらも急降下していく。
ダダダダダダダッ!!
ガガガンッ!!
「左主翼被弾ッ!!けれども火は噴いていませんッ!!」
偵察員の野津が報告する。高橋は左主翼を見たかったが今はそれどころではない。直も急降下を続ける。
「高度六百ッ!!」
「撃ーッ!!」
高橋が投下レバーを押す。
ヒュゥゥゥゥゥンッ。
グワアァァァンッ!!
「隊長命中ですッ!!」
高橋が後ろを振り返ると黒煙が三ヶ所上がっている。他の二隻の空母を見るが二隻とも黒煙が上がっている。
「艦爆隊がかなり被害が出ていそうだな」
「はい、護衛艦を攻撃した艦爆隊も未帰還が十四機も出たみたいです」
実はこの時、攻撃隊は空母攻撃部隊と護衛艦攻撃部隊に分かれて攻撃していた。詳しくなると艦爆隊六十六機の内、二十七機が空母攻撃し残りが護衛艦攻撃である。ちなみに艦攻隊はわずか二十七機しかいない。理由は敵空母を足止めするための機数しか出していない。
今艦攻隊が敵空母を攻撃中だが今の所、三隻の空母に一本ずつしか命中してない。だが三隻の内一隻は魚雷が機関室に命中したのか、かなり速度が落ちている。
「まぁ俺達のやることはやったな。後は戦艦に任すか」
高橋はそう呟くと、艦爆隊を集めて帰還する。かなりの機が被弾していた。
―――米機動部隊空母エンタープライズ―――
「大分やられたな」
スプルーアンスの呟きに参謀が答える。
「ええ。護衛艦も無傷なのがわずか四隻しかいません。ですが損傷した艦はどれも沈没の気配はありません」
「ふむ……少しおかしくないか?」
「と言いますと?」
「奴らは何故空母と護衛艦を攻撃したのだ?今は空母を沈めたほうが得のはずだ。それに奴らの攻撃隊、艦爆隊は多かったが艦攻隊がかなり少なかったぞ」
「そう言われるとそうですね」
実は、護衛艦攻撃の艦爆隊は全て六番爆弾を積んでいたのである。むろん空母攻撃部隊は二百五十キロ爆弾である。
「何かあるな……」
スプルーアンスはそう考えるがすぐにある報告によって考える暇は無くなった。
「艦影ッ!!敵艦隊ですッ!!」
米司令部は愕然とした。
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