第二十一話 ミッドウェイ作戦準備と呉の街
新キャラ登場です。
―――五月十八日トラック諸島―――
「…………」
瑞鶴が防空指揮所で空をぼうっと見てる。
「どうしたのよ瑞鶴?」
「ん?三河と飛龍か」
三河と飛龍が光とともに現れる。
「何浮かない顔してるのよ」
飛龍がぶすっと顔をしながら瑞鶴に問う。
「翡翠と昴が将斗といちゃつくのが嫌なの?それとも翔鶴が心配なの?」
三河も瑞鶴に問う。
「……そうではない」
「んじゃどうしたのよ?」
「……嫌な予感がするんだ」
「「嫌な予感?」」
三河と飛龍が首を傾げる。
「そうだ。今日、将斗達は呉にいるだろ?もしかしたら人間の女が出来てるかもしれないだろ?」
「うーん。大丈夫だと思うわよ。翡翠と昴がいるから」
「だといいが……」
―――連合艦隊旗艦戦艦大和第一作戦会議室―――
「失礼します」
作戦会議室に将斗、翡翠、昴が入る。中に山本長官を筆頭に小沢中将、細萱中将、渡辺戦務参謀等がいた。
「おう。将斗君わざわざトラックから来てもらってすまないな」
「いえ、ちょうど退屈でしたから。所でいよいよミッドウェイですか?」
「うむ。それで君達にも手伝ってもらいたくてな」
「お安い御用ですよ長官」
「将斗さんッ!!」
ドンッと大和が将斗に抱き着く。
「お、おい大和。抱き着くなよ」
「いいじゃないですか。久しぶりなんですから」
ぷぅッと大和が口を膨らませて怒る。翡翠と昴は少しムッとした。
「大和。抱き着いても構わんが静かにしててくれ」
「は〜い」
信一が大和に注意する。
「さて、ミッドウェイ作戦をするのだが艦隊はやはり史実の艦隊がいいかね?」
山本が将斗に尋ねる。
「いえ、別にしなくてもいいでしょう。塚原艦隊は史実通りミッドウェイを叩いて下さい」
「うむ。任してくれ」
塚原中将が答える。
「アリューシャン作戦はするんですか?」
信一が山本長官に尋ねる。
「一応する事になっている。まあ小数の部隊しか置かないがな」
「なら細萱中将の第五艦隊と小沢第三機動部隊でやらせますか?」
信一が山本長官に問う。
「うむ、そうしよう。第三機動部隊はダッチハーバーを攻撃後、キスカ、アッツを空爆してからミッドウェイに南下してもらう」
「分かりました」
小沢が頭を下げる。将斗が山本を見る。
「長官」
「何かね将斗?」
「作戦を変更したいんですが」
「作戦を変更だと?」
「はい」
「どう変更したいんだね?」
「この作戦の目的です」
「機動部隊殲滅がどうかしたのかね?」
「機動部隊を殲滅にしなくてもいいです」
「どういうことだ」
信一が口を挟む。
「つまり、敵機動部隊殲滅ではなく、敵の空母を捕獲するのです」
『……なにーーーッ!!』
全員が驚く。
「将斗君正気か?」
小沢中将が将斗を心配する。
「正気ですよ」
「けどさ将斗。どうやって捕獲すんの?」
「トラック諸島から北上してくる第二機動部隊で捕獲するんだよ」
「じゃあ第一機動部隊は囮なんか?」
信一が将斗に聞く。
「まあそうなるわな」
「将斗君」
山本が将斗に尋ねる。
「君はこの作戦が成功すると思うかね?」
「成功しなかったらこんな作戦言いませんよ」
将斗がナハハと笑う。山本も苦笑する。
「よしッ!この作戦でやってみよう!!」
「長官本気ですかッ?!」
「ああ、本気だ。それにルーズベルトの驚いた顔が浮かぶよ」
渡辺戦務参謀が反論したが山本は退かせた。山本は席を立つ。
「ミッドウェイ作戦方針は決まった。各自、健闘を尽くしてくれ」
「ハッ!!」
山本以外の全員が敬礼する。
「それでは解散ッ!!」
山本の号令にゾロゾロと全員が出ていくが将斗達は呼び止められた。理由は「久しぶりに日本の土を踏んでこい」だそうだ。内火艇で呉に行く時、大和と長門が将斗を引き止めたが山本に「たまには休暇ぐらいさせなさい」と言われ渋々引き下がった。
「あーッ!久しぶりだな〜呉に来るのは」
将斗達は現在、呉の街を歩いてる。
「そんなに久しぶりなのか?」
「ああ、真珠湾作戦以来やから大体半年ぐらいやろ」
「へぇ、そうやったのか」
「そういえばなんか街も大分変わってるよな。字の並びも変わってるし」
これは川嶋中将達のおかげである。街は木炭車等は走っておらず、オート三輪等の昭和三十年頃の街並になってる。
「あッ!あそこに喫茶店があるであそこ行こうか」
信一が三人提案する。
「おッいいね〜」
「いこいこ〜」
「たまには信一も役に立つな」
最後の言葉は昴である。四人が喫茶店に行こうとした時、喫茶店の近くで騒ぎが起きた。
「なんやろ?」
翡翠が首を傾げる。
「とりあえず行ってみんで」
将斗の言葉に三人は走りだす。四人が見るとまあ…ベタな展開がしていた。
「だからさ、俺達とそこの喫茶店でお茶しないかと言ってるんだよ」
「だからなんべんも言ってるだろ。嫌だと」
「嫌だと言ったらいやなんだッ!!」
そこには三人の陸軍航空兵と二人の女性航空兵の姿があった。女性航空兵は翡翠と昴が珊瑚海海戦で大活躍し、大本営が女性に航空搭乗員の入隊を許可したのだ。さらに予想を上回り、多くの女性が航空隊に入隊希望し、訓練を続けてる。服は海軍の服だが色は撫子をモチーフにし、薄ピンク色である。
「そんなこと言わないでさ」
「くどいッ!」
男の一人がポニーテールの女の手を触ろうとしたが叩かれた。
「ちッ!優しく声をかけてるのに調子こくなッ!」
男が殴り掛かろうとした時。
「そのへんでやめとけや」
パシッと将斗が殴り掛かろうとした手を握る。
「なんだてめー?俺達を誰だと思ってるんだッ!俺達はかの有名な加藤隼戦闘隊だぞッ!!」
男の言葉に群衆はざわめき出す。加藤隼戦闘隊は史実通りの大活躍をし、映画になった。群衆達は将斗が憲兵に捕まるのではと思い、ざわついているのだ。
「だからさっさと俺達から消える…グハアァッ!!」
将斗が男を殴った。男はのびてる。
「お前ら加藤隼戦闘隊のはけないやろがッ!加藤隼戦闘隊は今南方のラバウルやぼけぇッ!!てめぇらのどたまかちわるぞッ!!」
「お、おい大丈夫かッ?!…てめー、俺のダチをッ!!」
残った二人が短剣を出す。
「将斗。助太刀するで」
信一が前に出る。
「死ぬやぁッ!!」
男二人が右手で短剣を突く。将斗と信一の腹に短剣が刺さろうと刹那、将斗と信一は右に避け、左の脇で相手の腕を挟み、相手の右腕の下から右腕にアッパーカットをかます。
バキィッ!!
「「ギャアアアアアッ!!」」
二人の右腕は折れ、短剣が地面に落ちる。将斗と信一はさらに折れた右腕を掴み、そのまま、一本背負いを決める。
「「一本ッ!!それまでッ!!」
『ワアアアァァァッ!!』
翡翠と昴が審判をし、群衆が騒ぎ出す。群衆は将斗と信一に拍手を送った。
『ピー!ピー!ピー!』
「やべッ!憲兵やッ!逃げるで。ほらお前らも逃げるで」
六人と群衆がパアアアァァァと逃げる。群衆は将斗達に手を振り、グッジャブのサインを送る。なんとか逃げた六人。
「大丈夫だったか?」
「う、うむ、まことに有り難い。感謝する」
「あ、ありがとなッ!!」
将斗の笑顔に二人は顔を真っ赤にする。翡翠と昴はムッとした顔をする。信一はこりゃおもろいことになるぞとの顔。
「私は、呉海軍女子航空訓練兵の土方香恵だ」
「俺は原田琥珀だ。香恵と同じ訓練兵だ」
「俺は瑞鶴制空隊隊長の椎名将斗少佐だ」
「俺は連合艦隊首席参謀の鞍馬信一少佐だ。元パイロットだ」
「あたしは瑞鶴制空隊の……近衛翡翠少佐よ」
「俺も瑞鶴制空隊の……近衛昴少佐だ」
翡翠と昴は未来では将斗と結婚したがこの世界ではまだ将斗と結婚してないのであえて旧姓を名乗った。
「しょ、少佐で」
「空戦の神様の椎名将斗…」
二人は驚いた顔で将斗を見る。
「そゆことやから」
「「し、失礼しました」」
「ははは、堅苦しいのは無しや」
「「はぁ」」
「おい、将斗そろそろ戻らないとやばいで」
信一が腕時計を見て将斗に話す。
「んー、しゃーないな。じゃあな土方、原田。頑張れよ」
「「あ、ありがとうございますッ!!」」
二人は敬礼する。将斗達は走って行く。
「信一ッ!はよ走れよッ!」
「遅いぞッ!」
「運動不足やん」
「うるせーッ!!」
あっという間に四人が消えた。原田と土方がぽつんと取り残された。
「……なぁ琥珀」
「なんだ香恵?」
「私、椎名少佐に惚れたかもしれん」
「何ッ?!お前もか?」
「じゃあ琥珀も?」
「う、うるせー。惚れたら駄目なのかよ」
「いや問題ない」
「そこで○司令ならなくてもいいから」
「とりあえずだな」
「ん?」
「ライバルは多そうだな」
「負けてられるか。今は訓練を終えることが先決だ。行くぞ香恵」
「ま、まて、琥珀ッ!」
タタタッと二人も走りだす。
さてまたしても将斗に恋する者が二人増え、これからどうなることやら。
御意見や感想等お待ちしてます。m(__)m