最終話 語り継がれる未来へ
―――2011年4月大阪、椎名家―――
「……とまぁ、こんなところやな……」
書斎室で将斗は一人の青年と話していた。
「……いや、小さい頃からじいちゃん言ってたやん。ボケた?」
「いやいやボケてへんからッ!?Σ(゜Д゜)」
将斗は青年に突っ込む。
「まぁ……。それはええとして、何処の配属になったんや?」
「原子力空母瑞鶴の飛行隊第一中隊長になったわ」
「……そうか」
将斗は苦笑する。
「頑張りや」
「じいちゃん、俺を誰や思うてるん?じいちゃんの孫やで?」
青年は笑う。
「……そうか。なら、一つだけ言っておく」
将斗は真顔になり、青年を見る。
「……未来は自分で切り開くもんや。けどな、乗り越えられへん時もある。その時は信頼する人と乗り越えろ。まぁ、まだ分からんやろな」
「……言い返せない俺は悔しい……」
青年は悔しがる。
「まぁ頑張ってこい。お前の人生や、悔いを残すな」
青年は将斗の言葉を聞いて、将斗に敬礼する。
「椎名将斗日本国海軍少尉は本日を以って原子力空母瑞鶴の配属となりましたッ!!以後、自分はこの愛する国と国民を守るために働き、この身を軍に捧げますッ!!」
かつて、この国を救うために未来から逆行した人に宣誓する。
「……しっかりやれよな」
将斗も孫の将斗に応え、見事な敬礼を決めた。
孫の将斗が部屋を出ると、入れ代わりに瑞鶴達が来た。
「行ったぞ」
「……そうか」
将斗は窓を開ける。
外は近くの桜の木から桜の花が舞っている。
「……けど、何で孫に同じ名前をしたんや?」
昴が尋ねる。
「ま、あんま意味は無いけど……『歴史は繰り返される』ということやな」
将斗の言葉に翡翠と昴はまさか…と思う。
将斗は二人に苦笑する。
「ちゃうちゃう。俺らの時は戦争やったけど、せめてあいつの時は平和であるようにと思ったんや」
その時、部屋に風が吹いて数枚の桜の花が部屋に入って落ちる。
「……老兵は死なずただ去るのみ……て奴かな」
「ただ遊ぶやろ」
翡翠が突っ込む。
「んじゃ、花見でもするか」
瑞鶴達は苦笑しながら酒をドンと出す。
そこへ、一人の少女が部屋に入ってくる。
「おばあちゃん。もう用意出来たから早く来てって琴葉お母さんが言ってるよ」
「そうかなら行くか」
少女に瑞鶴は抱っこする。
「雫。ビーフジャーキーはあるか」
「あるよ三笠おばあちゃん」
「……将斗。早く行くぞ」
「……相変わらず三笠はビーフジャーキーが好きやな」
将斗達は書斎室を出る。
そして、再び歴史は繰り返される。
「だ、誰やお前は?」
「私は原子力空母瑞鶴の艦魂の瑞鶴だ」
「艦…魂……やて?」
夜の飛行甲板で二人は出会う。
また新しい歴史が刻まれたのだった。
花見も終盤になったのか、皆はぐでんぐでんとなっている。
将斗は瑞鶴に寄り添う。
「……どうした?」
「……なぁ瑞鶴は今、幸せか?」
将斗の言葉に瑞鶴は呆れた表情をする。
「……何を言っているんだ。幸せに決まっているじゃないか」
瑞鶴は将斗の肩に頭を預ける。
「……そうか。俺も幸せや」
二人は桜が舞う中、ゆっくりとキスをした。
「あ―、おじいちゃんとおばあちゃんがキスしてる〜」
「「ッ!?」」
二人が振り返ると、翡翠とその孫の誉がデジカメを持っていた。
「う〜ん、八十点やな」
「おばあちゃんにしては高いね」
「だってうちの旦那やし」
相変わらずの事なのに、将斗と瑞鶴は顔を朱くする。
「では、二次会といくか」
「雪風〜。つまみ持っていこう」
ダウンしていた全員が起き出して、二次会が始まる。
「……酒強いな…」
「ま、艦魂だしな」
二人は苦笑する。
「お〜い、将斗、瑞鶴。酒が無くなるで」
蒼零が二人を呼ぶ。
「分かった。今行くわ」
二人は手を繋いで皆の場所に行った。
書斎室の机には一枚の写真が置いてある。
それは空母瑞鶴で結婚式の時に、顔を真っ赤にしている瑞鶴をお姫様抱っこした将斗と後ろで順番待ちをしている翡翠達の写真だった。
―――完―――
これで本編は終了です。次話は後書きになります。御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m