第百九話 艦魂
今回は艦魂の設定です。これはあくまでも自分の考えなので。
ヤフーでブログをしています。後でプロフィールに貼っておきます。
「実は………」
将斗は山口に説明しながら、昨日の事を思い出した。
―――回想将斗の部屋―――
「んぐ…んぐ…ぷはぁ。……あ〜酒はうめぇなぁ〜」
ポニテを揺らしながらイハが呟く。
「月を見て飲むのも、またいいものだ」
富士がクイッと酒を飲む。
「舷窓からやけどな……」
将斗がつまみの枝豆を食べる。
イハと富士とは飲み友である。
もう開戦時の時から夜11時から12時まで飲んでいる。
「あ〜赤城や、大鳳がいないと柱島泊地は寂しいなぁ……」
イハが月を見ながら呟く。
第一機動艦隊と第三機動艦隊はタイ政府とインドネシア政府の要請により、売却された旧式の零戦二二型、三二型、五二型、九九式艦爆、九七式艦攻、隼、鐘馗、一式陸攻、九七式重爆、百式呑龍を搭載して航空機輸送をしていた。
二政府は日本軍撤退後に、独自の軍隊を立ち上げたが、あまり上手くいかず日本に頼る事に決めたのだ。
ちなみに二政府は、この後の第一世代や第二世代といったジェット戦闘機も日本製しか買わなかった。
後にトルコも日本製武器を買いはじめた。
話しが逸れた。
将斗が腕時計を見ると、もうそろそろ午前零時を指そうとしている。
「……そろそろお開きやな」
「そうだな、しゃーない。夜風に当たって酔いを覚ますか」
イハが立ち上がった瞬間、時計の針が午前零時を指した。
その瞬間、イハは身体の奥から何かが駆けていくのを感じた。
それは富士も同様だ。
しかし、それは一瞬の事だった。
「どうしたんや?」
将斗が不審に思い、二人に問う。
「いや……何もない」
「うむ……」
妙に歯切れが悪い二人。
将斗はまぁ大丈夫やろと思い、二人を見送った。
二人が帰った後、将斗は散らかった部屋を片付けて寝たのは午前零時半。
将斗はふと気づくと、一面花畑の中にいた。
「……あり?」
「おぉ、来たか」
声がする方向に顔を向けると、神がいた。
「撃墜した以来やな……」
「まぁな」
神は花畑の中で椅子とテーブルを出して茶をしばいていた。
「まぁ、座れ。話しがある」
神に言われるまま、将斗は用意された椅子に座る。
「まぁ、戦争が終わってお疲れさん。ゲームクリアだ」
ゲームクリアの言葉に将斗は苦笑する。
戦争は一種のゲームなのだ。
「で、特典はあれでいいのか?」
神が将斗に何かの最終確認をする。
「あぁ」
「そうか。まぁ承諾するだろうと思って先にやっといた」
「………あぁあれか」
将斗は富士とイハの様子がおかしかった事が分かった。
「『瑞鶴達を人間してくれ。そして、この先、艦魂が人間と両想いとなったら艦魂を人間にしてくれ』と言われた時は予想通りだったな」
「……艦魂が可哀相やったからな
将斗が顔を背ける。
若干、顔が赤くなっている。
「まぁ艦魂の能力は無くならないが、艦魂と交わった奴は寿命が少し長くなるぞ。何せ、艦魂は半不死だからな」
そう。艦魂は己の船が無くならない限り、消える事がない。
「……といっても、船と魂が離れるから人間より少し寿命が長いだけだ。後はかわりない」
神はそこまで言うと、コーヒーを飲む。
「………将斗。何故、艦魂が存在すると思う?」
「……………」
将斗は黙る。
「俺の先代の神が言っていた……『弟橘媛が海に身を投じた際、日本武尊を想う気持ちが強すぎたため、天に向かうはずの弟橘媛の魂が日本武尊の船に憑依した』と……。それ以来、日本が建造した船は寿命を全うしきれずにこの世を去った女性の魂が船に憑依しているのだ」
「………それじゃぁ……瑞鶴達は………」
「そうだ。瑞鶴達、蒼零の飛魂等はこの世に未練が残った幽霊の一種だ。……ただし、前世の記憶はない。彼女達は、幽霊の一種だが艦魂として生まれ変わっているからな………」
神が真顔で将斗を見つめる。
「……それでも……彼女達を愛するか?」
「………当たり前や。俺を誰や思うてるんや?」
将斗はニヤッと笑う。
「……それもそうだな。どれ、私からのプレゼントだ」
神がパチンと指を鳴らすと、将斗の身体が一瞬光りに包まれた。
「……今のは?」
「なぁに、妻が多いのだ。流石に腹上死は嫌だろう?絶倫にしといた」
「………マジでありがとうッ!!m(__)m」
将斗が神に土下座をする。
「多分、孫を見る前に死にそうだからな……(子どもだけでも三十人はいきそうだしな)」
神がそこまで言うと将斗の身体が光りに包まれていく。
「将斗。戦争が終わったのは通過点に過ぎない。戦いはこれからも続くだろう」
「……あぁ、任せろッ!!」
「……フッ、将斗に幸あらんことを祈る……」
将斗が消えた。
神はコーヒーをカップを注ぎ、それを飲む。
「………娘を頼んだぞ将斗」
神の顔は父親の顔だった。
翌朝、将斗が起きると瑞鶴が騒がしかった。
予想通りに、今まで見えなかった乗組員達が瑞鶴を見えていた。
「とまぁ、こんなとこです」
将斗が山口に説明を終わらす。
無論、神の会話は言っていない。
「………そうか。まぁ戸籍はこっちが用意しとこう。……しかし、之からが忙しくなるな」
「何でですか?」
山口はニヤリッと笑う。
「お前を想う艦魂が人間になったのだ。やることはただ一つ……」
将斗は思った。
「(………嫌な予感やな……)」
そして、それは予想通りの言葉だった。
「………お前達の結婚式だ……」
後に将斗は自伝で『あの時の山口長官のにやけた顔は一生忘れないだろう』と書いていた。
御意見や御関係等お待ちしていますm(__)m