第百五話 最後の艦隊決戦2
最大のご都合主義をやってしまった………OrZ
―――連合軍旗艦フロリダ―――
「『列車戦艦』の二隻はついて来てるか?」
「ついて来てます」
ハルゼーの問いに見張り員が問う。
「二隻は何としてでも守れッ!!」
―――旗艦大和―――
「ふむ……夾叉はしているな……」
山本は呟く。
「そうですね。……恐らくは後二斉射で命中するでしょう」
大和と武蔵の五十六センチ砲弾は、敵一番艦のフロリダと、二番艦のワシントン2を夾叉していた。
「……うん?何だあれは……?」
ふと、見張り員が何かを見つけた。
「どうした?」
「敵一番艦の後方に二隻の軍艦がいます」
「何……?」
山本と宇垣が双眼鏡を覗く。
「……確かに敵一番艦の後方にいるな……しかし、単装砲だけとは……?」
二隻の軍艦は、幅はかなり広く、巨大な単装砲が搭載しているだけである。
「将斗君達はどうしたかね?」
「確か防空指揮所にいるはずです」
「そうか。なら、呼んできてくれ。将斗君達なら分かるかもしれん」
「了解」
伝令が防空指揮所に向かう。
5分後、将斗達が艦橋に降りてきた。
「長官。お呼び出しの理由はあの軍艦ですか?」
「あぁそうだ。将斗君は何か分かるかね?」
「それなんですけど……あれが何やったか忘れたんです。喉元で出かかっているんですけど……」
「将斗と同じです」
「あたしと昴はそれ程武器には詳しくないので……」
「ぬぅ……。それなら仕方ない。しかし、油断は禁物だな」
ズガアァァァァァァァァーンッ!!!
「敵一番艦に砲弾命中ッ!!」
―――旗艦フロリダ―――
「左舷の高角砲群に敵戦艦の砲弾が命中ッ!!」
「それくらい分かるッ!!」
ハルゼーは部下からの報告に一蹴する。
「左舷高角砲三基使用不能ッ!!死傷者は五十名余りになります」
「主砲の損害だけを報告しろッ!!それ以外は報告するなッ!!俺に報告するより死傷者を助けろッ!!」
「イエッサーッ!!」
ハルゼーは大和を睨む。
「敵一番艦との距離は?」
「四万一千です」
「全艦射撃準備は?」
ハルゼーがカーニー参謀長に問う。
「全艦何時でも撃てます」
カーニーがそう言い返す。
「全艦レーダー射撃横一列でヤマトを狙えッ!!奴のドテッ腹に全弾ブち込むんだッ!!」
旗艦フロリダの四十六センチ主砲が最終修正に入った。
「ターゲットはただ一つッ!!戦艦ヤマトッ!!全艦アユーレディッ!?ファイヤァァァーーーッ!!!」
ズドオォォォォォォォーンッ!!!
ハルゼーの命令と共に連合軍艦隊の戦艦群の主砲が一斉に火を噴いた。
―――旗艦大和―――
「敵連合軍艦隊発砲ッ!!」
見張り員の絶叫が艦橋に響く。
「全員何かに掴まるんやッ!!」
将斗の言葉に、艦橋にいた全員が手摺りや何かに掴まる。
ヒュルルルルル………。
ドドドドドドドドドッ!!!
大和から外れた砲弾は海面に命中して水柱を上げる。
だが、ドイツ海軍の戦艦フリードリッヒ・デア・グロッセが放った一発が大和の右舷高角砲群に命中した。
ズガアァァァァァァァァーンッ!!!
「ッ!?ゴフゥッ!!」
命中した瞬間に、防空指揮所にいた大和は口から吐血。
さらに、右脇腹が裂けて血が飛び出す。
膝から崩れ落ちそうになったが、手摺りに掴まって身体を起こす。
「……旗艦が倒れる事はこの戦の負けだ。私は倒れはせんッ!!」
大和は連合軍旗艦フロリダを睨みつけた。
「右舷二番高角砲に砲弾が命中ッ!!二番高角砲員は全員戦死ッ!!さらに、他の高角砲員や機銃員にも多数の死傷者ッ!!」
艦橋に来た伝令の服は所々に血が付着している。
「ぬぅ……奴らも中々やるな…」
宇垣が敵旗艦フロリダを睨みながら呟く。
「全艦、照準を敵一番艦につけろッ!!敵旗艦から潰すッ!!」
宇垣が命令を出す。
艦橋が慌ただしくなる中、将斗は双眼鏡で砲門が一門しかない軍艦二隻を見ていた。
「(何やったけなぁ〜。何か聞いた事はあるねんけどな)」
将斗が考えてた時、見張り員が叫んだ。
「敵連合軍艦隊との距離三万八千ッ!!」
「(距離が縮まるのが早いな。……距離三万八千やて?)」
将斗が疑問に思う。
「(確か、あの大砲の最大射程は三万八千やったよな?………まさかッ!?)」
将斗は慌てて双眼鏡で二隻の軍艦を見た。
「………ッ!?長官ッ!!」
「ん?どうした椎名?」
将斗のいきなりの叫びに山本が少々びっくりした。
「今すぐッ!!敵連合軍艦隊から離れて下さいッ!!」
「どういう事かね?」
「あの二隻の軍艦の主砲は列車砲『ドーラ』ですッ!!」
「ドーラ?」
翡翠が問う。
「八十センチ列車砲『ドーラ』や。全長3.8メートルの7.1トンのベトン弾の貫通力は七メートルのコンクリートでも撃ち抜くんや。長官、急いで下さい」
「うむ。全艦、敵連合軍艦隊から離れろ」
山本が命令した瞬間、見張り員が叫んだ。
「て、敵連合軍艦隊の単装砲艦が発砲ッ!!」
「ッ!?あかん、全員何かに掴まれッ!!」
全員が物に掴まると、何かが来た。
ガラガラガラガラガラッ!!
「なッ!?………何だこの耳をつんざくような滑空音はッ!?」
防空指揮所で大和が叫ぶ。
ズゴオォォォォォォォーンッ!!!
『うわあぁぁッ!!』
艦橋では物に掴まっていたが、衝撃に全員が床に叩きつけられた。
「く……取舵一杯ッ!!」
有賀艦長が急いで命令をする。
大和の艦体が右に傾き、左に曲がるが再び見張り員が叫んだ。
「敵艦発砲ッ!!」
グァラグァラグァラグァラッ!!!
ドゴオォォォォォォーーンッ!!!
大和の艦体が地震が起きたかのように揺れた。
『ウオオォォォッ!!』
衝撃に将斗達は堪える。
しかし、艦魂である大和は耐えれなかった。
「ガアアァァァァァァァァァーーーッ!!!」
流石の大和も、これには倒れた。
「ほ、報告ッ!!こ、後部指揮所に敵巨大砲弾が命中ッ!!後部指揮所にいた者全員戦死ッ!!さらに、後部副砲も旋回不能ッ!!」
伝令が艦橋に来た。
―――旗艦フロリダ―――
「敵一番艦ヤマトに命中ッ!!」
「やったかッ!!」
フロリダの艦橋に歓声が溢れた。
「流石のヤマトも、これで沈没ね………」
艦魂であるフロリダは防空指揮所で、黒い煙を噴きながら航行する大和を見て呟く。
―――『列車戦艦』―――
ドイツ軍が開発した八十センチ列車砲『ドーラ』『グスタフ』を専用艦に固定式で搭載したのだ。
専用艦の速度は二八ノット。
専用艦の武装は列車砲だけで、砲弾に貫かれないように甲板や舷側は装甲が敷き詰められている。
しかし、四十六センチ砲弾は耐えれるが大和と武蔵の五十六センチ砲弾は耐えれない。
固定式なので、どうしても連合艦隊に向かって航行しなければならないのでどうしても被害が出るのだが、ハルゼーは「ヤマトとムサシを沈めれるなら、損害は気にするな」と一喝した。
「砲弾の装填を急がせろッ!!ヤマトを沈めるぞッ!!」
ハルゼーはニヤリと笑い、ヤマトを見つめた。
しかし、大和を沈められるのは無くなった。
ズシュウゥゥゥゥゥゥーーンッ!!
突如、二隻の列車戦艦の舷側に水柱が上がった。
魚雷が命中した証拠であった。
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