第百二話 ご都合主義とは正にこの事
まず……これは『ご都合主義』です。
将斗は辺りが真っ白い世界にいた。
「………俺て対空砲弾に命中してなかったけ?」
「何しているんだ貴様は?」
声がする方向に振り向くと、将斗を過去に送った神がいた。(プロローグ参照)
「あれ?神やん。何で此処におんの?」
「おんのて……。此処は俺の庭だ」
「……庭なん?」
「庭だ。ちなみに広さは琵琶湖二個分だ」
「広すぎやんッ!!」
「俺が知るかッ!!」
何故か漫才に移る将斗と神。
「まぁええや。何で俺が此処におるん?やっぱ死んだからか?」
「いや、お前はまだ生きとるよ。砲弾に当たる寸前に蒼零を抱きしめただろ?その時にお前のポケットに入っていた此処への転移装置を押してしまったからお前が転移してきたんだ」
「………何かあったなそれ」
詳しくはプロローグをお読み下さい。
「まぁ今のは事故にしといてやるから早く戻れ。少し時系列を変えといてやる。それと此処に間違ってやって来た代償として、視力をかなり低下させといてやる」
「……マジで?」
「あぁ、これは神々達のルールでな。間違って転移した奴の身体の一部を取るように法律で決まっている。片腕を取る神もいるが、お前パイロットだろ?流石に片腕での飛行は無理だから視力を低下させる。なぁに、失明はしないように落としといてやる」
「……お手柔らかに頼むで」
神が指を鳴らすと、将斗の身体が輝き始めた。
「そうや神様ッ!!」
将斗が神を呼ぶ。
「何だ?」
「第二次世界大戦が終わったら瑞鶴達を…………………」
「あぁ、それが貴様の願いだな?」
「そうや。それと、翡翠と昴を生き返らせてくれありがとうなッ!!」
「気にするな。(修羅場になると思っていたが……面白くない……)」
意外と腹黒い神である。(笑)
将斗の身体は完全に消えた。
「………さて、ル〇ンのカリオストロでも見るか……」
神はそう呟いて、自宅に飛んだ。
―――将斗機―――
「……ん……」
将斗が眼を覚ます。
辺りを見回すが、そこは見慣れた蒼零の操縦席である。
ひざ元には蒼零が血を流しながら気絶していた。
将斗が機体を見回すと、ぼやけながらだが、左翼の真ん中辺りに被弾痕があった。
かなり大きめの被弾痕である。
「対空砲弾が直撃ちゃうねんな……」
将斗はそう判断した。
「………ぅん……」
蒼零が眼を覚ました。
しかし、将斗の眼にはぼやけて見える。
あの神に言われた通りに視力が低下していたのだ。
『まーくん?今、爆発四散せんかった?』
無線機から翡翠の声が聞こえる。
「神様のおかげやな」
『……成る程ね』
『椎名。攻撃隊は帰還するぞ』
村田大佐が言う。
「分かりました。制空隊、全機につぐ。帰還するで」
第二機動艦隊の攻撃隊は編隊を整えて帰還した。
被害は制空隊四七機、艦爆五二機、艦攻五六機である。
ちなみに、撫子新撰組航空隊の被害は被弾機二五機で、途中で不時着水を余儀なくされたが全員無事であった。
撫子新撰組航空隊が無事だった理由は『いや、あんな対空砲火無理』であり、敵艦を爆弾と魚雷で乱す役目をしていた。
―――第二機動艦隊旗艦瑞鶴―――
「何をしとるんだあいつは……」
防空指揮所にいた瑞鶴が着艦した蒼零に呟いていた。
「将斗。大丈夫か?」
「あぁ、視界がぼやけてるだけやから大丈夫や。すぐに軍医に見せるわ」
蒼零に抱えられながら将斗が操縦席から降りて、軍医室に向かった。
―――軍医室―――
「う〜む……。恐らく対空砲弾が爆発した瞬間の閃光で視力が低下したんじゃろ。今の視力を測っとこう」
ベテランの佐治重三軍医中佐に言われた。
「……ふむ……ふむ……。右目が0.3で左目が0.2じゃのぅ」
「作者かよ……」
『うっさいわ。ちなみに左目は推定by作者』
「内地でコンタクトレンズが研究最中じゃ。しばらくは我慢せぇい」
佐治の診察が終わり、山口長官には一応の報告はしておいた。
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