第十話 勝利宴会
「乾杯!」
『乾杯ー!』
一人の女性が高々とコップを上に上げると、他の女性達もコップを上に上げた。女性は艦魂だった。ここ戦艦大和のほとんど使われてない士官倉庫の中で祝勝会てゆーか宴会が行われてる。既に何人かは出来上がっている。その艦魂の中に人間がいた。将斗や信一の他にも、男がいた。
「笹井!西沢!太田!坂井!近藤!松田!岩本!管野!飲んでるか?」
将斗が男の集まりの所に来た。信一は陸奥と伊勢と一緒に飲んでる。
「あ、隊長。いやぁここは天国ですね。こんな美少女達に囲まれながら飲むのは」
笹井が答える。実は笹井達は艦魂が見えてるのである。まぁ見えた物はしょうがないと将斗は艦魂を笹井達に紹介した。ただ、坂井だけは戦艦榛名と霧島に配属されていたため二人は坂井を知っていた。今、霧島と坂井が一緒に飲んでいる。後ろから瑞鶴、金剛、榛名、大和、飛龍、青葉が来た。
「おい、将斗飲もうではないか」
瑞鶴が声をかける。将斗は少し顔を引きつかせながら顔を瑞鶴に向ける。
「…お前さっき俺との酒勝負に負けて寝てなかったか?」
「ふ、問題ない」
「そこで司令になるなや。脚がふらふらだぞ。金剛や榛名達もふらふらやんか。座っとけ」
金剛は、酒のせいであろうか顔を真っ赤にしてる。
「何を言う。こんなめでたい日に飲まないとそんだろうがぁぁ」
完全に酔っ払らってる金剛である。
「お前ら少し寝ろ。倒れるぞ」
「脚がふらふらなのだ〜。キャハハ」
大和がよろよろしながら座る。
「ふん!私はまだ酔ってないからね!甘く見ないでよ」
飛龍はそういいつつもふらふらの状態である。
「俺はまだ酔っ払ってないぜ。鍛えかた違うんだよ」
榛名も顔を真っ赤にして言うのは説得に欠ける。
「世界が回ってます〜」
青葉はもう限界だろう。
将斗は五人を横にし、その場を後にした。すると山城がちびちびと一人で飲んでいる。
「山城。俺にもくれ」
「うん…」
山城は酒のせいか顔を真っ赤にしながら将斗に酒を入れる。
「敵機十二機撃墜おめでとう…」
酒がトクトクと注いでる時に山城がボソッとしゃべる。
「ん?いやぁたまたまだよ」
将斗は真珠湾で八機、艦隊上空で四機撃墜したからである。
「山城の方がむしろ頑張っただろ?」
酒を飲みながら山城を見る。
「私は何もしてない…」
将斗が笑顔でこちらに向けたため顔を真っ赤にしながら否定した。
「頑張ってるよ山城はな」
将斗が山城の頭をなでなでする。山城はさらに真っ赤になる。すると、山城がボソッとしゃべる。
「じゃあ頑張った褒美として、あれ吹いて」
すると将斗が驚いた表情を見せた。
「あれ聞いてたんか?」
「…」
山城がコクりと頷く。
「夜、本読んでると聞こえてきた」
「そうか…。わかった。やるよ。一回だけだぞ人前でするのは」
将斗はポケットからハーモニカを取り出す。将斗が息を吸い込みハーモニカを吹く。
『♪〜♪〜♪〜』
部屋に音楽が流れる。始めは騒いでいた美少女達も音楽が聞こえると段々と静かになっていった。酒を飲んでいた信一は哀しい表情をしながら酒を飲む。信一はボソッと声を低くして歌い出した。
『(著作権に引っ掛かるかもしれませんので歌詞は消しました)』
信一が将斗に近付く。
「久しぶりに聞いたわ、お前のハーモニカ。何回聞いてもいい音色やな」
「…防空指揮所に行ってくる」
将斗が部屋を出て防空指揮所に向かった。
「………あいつもまだ翡翠と昴を忘れられないか。それは俺も一緒か…」
信一が酒を飲む。長門が信一に声をかける。
「信一君。翡翠と昴てあの事件の?」
「将斗が喋ったのか?」
「ええ。彼、少し酒を飲んでたけど私に話したわ」
「俺らの事情を知ってる奴に話したのか。どんくらい知ってるんだ?」
「事件のことしか聞いてないわ」
「あいつすべて俺任せかよ」
信一がため息をはく。瑞鶴が横から入る。
「翡翠と昴とは誰だ?」
「……今はいえん。ただ言えるとしたら…翡翠と昴はあいつの婚約者だ」
それを聞いた瑞鶴達は目が点になる。我に返った瑞鶴以下の艦魂達が放った一言は。
『なんだってーーーッ!?』
ちなみに笹井達は事情をすべて知っているので哀しい表情をしていた。
―――防空指揮所―――
『♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜』
将斗はハーモニカを吹いていた。不意にハーモニカを吹くのをやめて広い星空を見た。
「…翡翠…昴…。ごめん俺があの時、お前らを見てたら今ここにいるのにな。ごめんな翡翠…昴。ほんまにごめんな」
将斗は泣いていた。そして泣きながら再びハーモニカを吹く。将斗の上の星空から流れ星が二つスゥと流れていった。
歌はDEENの『夢であるように』です。知ってる人は少ないですね。 御意見や感想等お待ちしてますm(__)m