第八十九話 通商破壊中編
かなりのご都合主義です。
潜水艦無双になってます。
―――アミラント諸島沖―――
「いたぞ」
そう言葉を発したのは新型伊号潜水艦『伊二〇一』艦長の田辺弥八大佐である。
「情報通りに、小型空母が四隻いる」
実際は中型空母のインディペンデンス型のインディペンデンス、モントレイ、キャボット、プリンストンの四隻である。
「護衛艦を突破して輸送船を狙うのは無理だな。護衛艦攻撃にしよう」
田辺はそう決断した。
「輸送船団の速度は?」
「約十五ノットです」
「速度十五ノットまで上げろ」
伊二〇一は速度を上げる。
―――伊二〇一型―――
排水量二七〇〇トン。
全長八五メートル。
武装五三.三センチ魚雷発射管×六、二五ミリ連装機銃×二。
最大速度水上十五ノット、水中十九ノット。
の性能である。
「魚雷発射用意ッ!!」
魚雷係が急いで、九五式1型酸素魚雷を魚雷管に装填する。
「発射用意完了ッ!!」
魚雷長が田辺に報告する。
「輸送船団との距離八千ッ!!」
聴音手が言う。
『……………』
皆は黙っいる。
「距離六千ッ!!」
「まだよ」
伊二〇一の艦魂であるニィ(二と一でニィ)が呟く。
「距離四千ッ!!」
田辺は潜望鏡で輸送船団を見ているが何も言わない。
「距離三千ッ!!」
「今だッ!!魚雷撃ェェェーーーッ!!」
田辺が号令を発した。
艦首六基の魚雷管から、魚雷が放たれた。
ドシュンドシュンッ!!
六本の魚雷が敵輸送船団狙うべく駛走を開始した。
「次発装填ッ!!急げッ!!」
田辺の言葉に乗組員達は驚いた。
通常、雷撃後はすぐに潜行して駆逐艦からの攻撃を耐えるのだが、田辺はそれを無視したのだ。
「敵はまだ気づいとらん。徹底的にやるぞッ!!」
魚雷係は意気揚々と九五式1型酸素魚雷を装填する。
ズシイィーーーンッ!!
ズシイィーーーンッ!!
「命中ですッ!!」
衝撃音が聞こえ、聴音手が報告する。
この時、六本の魚雷のうち、三本が護衛艦隊の艦艇に命中。
三本は駆逐艦三隻に一本ずつ命中したのである。
「ッ?!駆逐艦二隻、接近ッ!!」
「潜望鏡上げェェェッ!!」
田辺が潜望鏡を見ると、駆逐艦二隻が確かに接近していた。
『魚雷発射用意完了ッ!!』
魚雷室からの報告だ。
「駆逐艦を攻撃するッ!!魚雷一、二番発射用意ッ!!」
田辺は二隻のうちの、右にいた駆逐艦に狙いを定める。
「面舵十度」
「面舵十度、ヨーソーローッ!!」
艦体が左に傾く。
「敵との距離千二百ッ!!」
「魚雷一、二番撃ェェェーーーッ!!」
ドシュンドシュンッ!!
「続いて三番、四番発射用意ッ!!取り舵二十度」
今度は右に傾く。
「距離八百ッ!!」
「三番、四番撃ェェェーーーッ!!」
ドシュンドシュンッ!!
再び二発の魚雷が放たれた。
「急速潜行ッ!!深度百二十ッ!!」
だが、潜行中に爆発音が聞こえてきた。
ズシイィーーーンッ!!
ズシイィーーーンッ!!
「聴音ッ!!今の衝撃音は何だ?」
「駆逐艦に魚雷が命中したようですッ!!」
聴音手の報告に乗組員達は満面をくしゃくしゃにして笑み崩れるばかりだった。
「よーし、もう一撃加えるッ!!潜望鏡深度まで浮上ッ!!」
伊二〇一は潜望鏡深度まで浮上する。
「……混乱しているな」
田辺は潜望鏡越しに見える惨劇にニヤリッと笑う。
輸送船団攻撃には伊二〇一の他にも五隻の伊号潜水艦が攻撃していた。
そのため、護衛艦隊はただ耐えるだけだった。
「魚雷発射用意ッ!!」
新たに、一番から四番まで魚雷を装填するのに少し時間がかかったが、まだ射程範囲内である。
「魚雷全門撃ェェェーーーッ!!」
ドシュンドシュンッ!!
鈍い音がして九五式1型酸素魚雷六本が放たれた。
「急速潜行ッ!!」
「急速潜行ヨーソーローッ!!」
伊二〇一は海水を貯めながら潜水していく。
ズシイィーーーンッ!!
ズシイィーーーンッ!!
再び衝撃音が響いた。
「だいぶ食ったな。戦闘海域から離脱する。離脱後は遣印艦隊司令部に打電する」
伊二〇一達は悠々と戦闘海域から離脱した。
―――輸送船団旗艦インディペンデンス―――
「敵潜からの攻撃はどうなった?」
中型空母インディペンデンスの艦橋で輸送船団司令官のトーマス・キンケード中将が参謀長に尋ねる。
「最後の駆逐艦の被雷より15分経過していますが、攻撃はありません。既に離脱したと思われます」
「そうか。……しかし、まだマダガスカルからあまり離れていないのに攻撃を受けるとはな……」
「全く予想していませんでした。ソコトラ島辺りで待ち構えていたと我々は思っていましたから。裏を掛かれました」
「過ぎた事は悔やんでも仕方ない。対潜警戒を厳にしろ」
「イエッサーッ!!それと司令官。これが沈没した艦艇です」
輸送船団は、伊二〇一達の攻撃により、駆逐艦十四隻、防空巡一、軽巡一、輸送船五隻が沈没した。
「積み荷の戦車二十五両と野砲二十門を失ったか」
キンケードは顔を歪める。
「しかし、まだ六分の五が残っています。断然、輸送を強行すべきでしょう」
米英独軍はこの輸送を成功させるために、軽巡十四隻、防空巡六隻、中型空母四隻、駆逐艦七二隻を送り込んだのだ。
「よし、輸送を強行する」
キンケードの言葉に、輸送船団は隊列を整えると速度を上げた。
―――ソコトラ島沖空母妙義―――
「三川長官。伊二〇一より入電です」
「ご苦労」
三川は通信士から電文を受け取る。
「……ほぅ。潜水艦達がやってくれたようだ」
三川は参謀長の大西新蔵少将に電文を渡した。
「……なら私達も暴れましょう」
「無論だ」
三川は水平線を見つめた。
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