第八十七話 飛魂とは?
サブタイトルを見てると分かりますが、今回は飛魂に関する話です。
―――柱島上空―――
ブオォォォーーンッ!!
一機の戦闘機―――特戦蒼零が柱島の上空を飛翔していた。
「けど、蒼零。いきなりどないしたんや?」
操縦桿を握る将斗が後ろに蒼零に声をかける。
「うん……少し話しがあんねん」
蒼零はそう言うと黙ってしまう。
将斗ははぁとため息をつく。
朝、将斗が食堂で朝食を食べてると突然蒼零が転移してきて「話しがあるから蒼零に乗って発進して」と真剣な顔で言ってきた。
将斗は突然の出来事にア然としつつも「あぁ」と頷いて山口長官の許可を取って大空に飛んだのである。
『…………………』
重苦しい時間が過ぎていく。
二人は何も喋らない。
しかし、ようやく蒼零が意を決したのか口を開いた。
「なぁ将斗」
「何や?」
「何で飛魂て少ないと思う?」
「……え?」
蒼零の口から出た言葉に将斗はただ、呟くだけだった。
瑞鶴達は艦魂。
艦魂とは文字通りのあらゆる艦船に宿る船の守り神、又は船の魂の化身である精霊と言われている。また、容姿は若い女性である。
では飛魂とは?
魂が宿るのは艦船だけではない。パイロットや整備員に伝わるもう一つの伝説。歴戦をくぐりぬけ功績を上げた機体には魂が宿ると言われた。その名を飛魂。共に空を駆け続け、生死を共にした機体を本当に大切にして愛するパイロットにのみ見えるとされる、若い女性の姿をした魂。その姿を見たものは必ず偉大な名を残すといわれている。(赤眼黒龍先生のあらすじを参照しています。あらすじ書いてよかったかな?赤眼黒龍先生、御不満だったらメッセか感想で言って下さい)
話しを戻す。
「……いや分からんわ。何でなん?」
将斗はあえて蒼零に問う。
「まぁ、艦魂と殆ど一緒やで。霊感の強い者、また飛魂の精神波長に似ている波長を持つ奴とか機体と生死を共にするとかやけど……それは『第一の難関』を突破しただけや」
「……第一の難関?」
「人間が飛魂を見るには今言うた第一の難関。それと第二の難関があるねん」
「……その第二の難関て何や?」
「……………『愛する人を守りたい』『愛する人を殺した奴を殺したい』とそのどちらかを強く心に誓っていると人間は飛魂を見えるようになる」
「……例えば、愛する人を殺した奴を殺したいと誓ってる奴がいると飛魂はどうする?」
「勿論、飛魂はそいつの手となり脚となり、眼となり鼻となり、耳となって死線を潜るねん。でもな……復讐を誓ってる奴の心の念が強すぎると飛魂は必要ないと判断して現れへん。昔の将斗のような奴やな」
「……………」
将斗はただ黙る。
「んで、飛魂の能力は艦魂達とまぁ殆ど一緒やけど、ただ一つだけ艦魂とは違う能力があんねん……」
「……それは?」
「……飛魂が見える奴の過去を見れる能力があるねん」
「ーーーッ!?!?」
将斗は息を飲む。
「何でそんな能力があるねんと思ったやろ?……飛魂…飛行機はな、艦魂……軍艦と違って弾丸一つで死ぬやろ?そのために飛魂が見える奴の過去を見て、一心同体となって戦うねん」
「そうか……。でも何で最初に言わへんかったんや?」
「……正直に言うけど、最初は将斗の事はむっちゃ恐かってん」
蒼零はポロポロと語り出した。
「将斗の過去を見た時、あたしは泣いたよ。何でこんな悲しい想いをしないとあかんねん。これでよく身体が持ったと思ったで」
「(……よく漫画やアニメにある精神が肉体を凌駕してたんやろな〜)」
将斗は何か呑気だった。
「でも…将斗を見ている内に、将斗の恐怖感は無くなっていったんや。日頃から将斗は何かと優しいしな」
蒼零はそこまで言うと黙ってしまった。
「…蒼零…?」
「……将斗は…」
不意に蒼零が口を開く。
「…将斗は、今の話を聞いて飛魂を嫌いになった?」
将斗が後ろを振り向くと、蒼零は泣いていた。
「蒼零………」
「…将斗は…過去を見たあたしが嫌いになった?」
「……此処に座り」
将斗は膝に蒼零を乗せて、左手で蒼零を抱きしめた。(飛行中なので)
「ーーーッ?!」
「蒼零は馬鹿やな。そんなん見ただけで俺がお前の事を嫌いになるわけないやろ」
「…まざどぉッ!!…」
蒼零は将斗に抱きつき、将斗の胸の中で泣いた。
「うわあぁぁぁぁぁぁんッ!!!」
「もうすっきりしたか?」
「うん」
蒼零は赤くなっている目を擦る。
「なぁ?」
「何や?」
「将斗はあたしの事好き?」
「好きやで」
「でも瑞鶴が1番好きやろ?」
「ウグッΣ(゜Д゜)……分かってたんか?」
「当たり前やん。それにあたしは将斗の相棒やねんからすぐ分かるで」
「……俺は優柔不断な男やで?それでええんか?」
「将斗やからええんや」
「ありがとうな」
将斗は蒼零の頭を撫でた。
蒼零は気持ちいいのか嬉しそうにしてる。
「さぁ帰ろうか」
「うん♪」
特戦蒼零は約2時間の飛行を終えて瑞鶴に着艦した。
―――空母瑞鶴―――
「なぁ将斗」
「どないした瑞鶴?」
艦橋に報告し来た将斗を瑞鶴が呼ぶ。
「いや、さっきから蒼零が妙に機嫌がいいから何かあったのかと思ってな」
勘が鋭い瑞鶴である。
「ハハハ……」
将斗はただ苦笑するしかなかった。
蒼零が話した飛魂の条件はあくまでも、自分が考えた設定ですので。赤眼黒龍先生とは少し違います。
御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m