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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

我が祈りをヴァルキュリアに

作者: クレヨン

 我が祈りをヴァルキュリアに 



 我が国は、隣国との戦争が続いていた。

 資源の所有権の対立が背景にあるのだが、勝っても負けても、私のような庶民には関係ない。

 戦争に勝ったとしても偉い人々が潤うだけ、負けても今の生活が続くだけだ。

 とは言っても私のような男は、戦争にかり出される。

 徴兵を終えた私だが、強制的に志願兵として老いるまで、兵士として銃を持つ……神よ何故このような仕打ちを私に、私の家族にお与えするのですか?

 私の妻幼い子供たちは、みんな神に毎日お祈りを捧げています。

 祈るだけでは私のような貧しい人間には、恵みを与えてくれないのですか?

 コンクリートが崩れた、おそらく民家だったところで、私は数人の同士と身体を丸めていた 

 壊れた窓から、朝日が昇るのが見えた。

 昨日は、寝ていなかった。

 いや、ここ数日寝ていない。

 寝れないではなく、寝られない。

 疲れた。

 私は限界だった。

 「敵の奇襲だ!」

 見張りの男が、大声を上げた。

 私は疲れた体を引きずるように立ち上がると、外に飛び出した。

 戦うためではない。

 逃げるためだ。

 この戦線は、負けが決まったのだ。

 私には家族がいる。ここで、死ぬわけにはいかないのだ。

 動かない足を、動かし動かし家族のためにそして、自分のために逃げ続けた。

 

 パーン……


 渇いた銃声が聞こえた。

 その銃声を聞いた時、私の左胸は熱くなった。

 何故だ?

 理由は、分かっていた。

 認めたくなかった。

 しかし、間違いない。

 背中から堕ちる赤い鉄臭が、鉛玉を私の背中に埋め込んだと教えてくれた。

 それも埋め込んだ場所は、心臓らしく熱い鉄臭は壊れたアスファルトに、小さな赤溜まりを造った。

 私は力なく倒れた。

 目が、霞む。

 どこからか、子守歌がする。

 皮肉だ子守歌なしでも、目覚めぬ眠りが来るのに……。

  


 「…………きろ」

 なんだ?

 「戦士よ、おきろ!」

 戦士?

 「お前のことだ!」

 私は、目を開いた。

 そこは、空?

 そう、空だ。空に私は浮いている。

 「ようやく、目を開けたか」

 私は声のする方を向いた。

 !

 そこには美しい衣に身にまとい、黒い髪をなびかせた、目鼻のしっかり整った容姿の……女!

 それも肌の露出が、すごく目のやりどころがない!

 「何故こんなところに女が?」

 「お前を迎えに来た」

 落ち着いた静かな声に、どこか哀れむ表情が第一印象だ。

 「迎えに?お前は誰だ?」

 私が、女に聞いた。

 「私の名は、レミーだ。

 ヴァルキリーの一員だ。」

 女は応えた。

 「ヴァルキリー……。戦争で死んだ魂を天界に運ぶ、美しき使者が私に?」

 「お前は死んだのだ」

 レミーというヴァルキリーは私に、哀れな目を続けていた。

 「ヴァルキリー、私は家族がいる。帰りたい」

 私は、切実に頼んだ。

 しかし、ヴァルキリーは

 「死人は帰らない。帰れないのだ」

と、淡々と答える。

 「頼む、私はまだ生きたいのだ!」

 「無理だ諦めろ!」

 ヴァルキリーは、悲しみの目で私を見た。

 「生きたい気持ちも分かる。しかし、お前のためだ」

 ヴァルキリーは淡々と、それでいて粘り強く私に話かけた。

 どうやら私は帰れないようだ。

 ようやく諦めた私に、ヴァルキリーはこう言い放った。

 「戦士よ。よく今まで戦った。ひとつだけ願いを聞いてやろう。」

 「願い」

 「そうだお前が今、一番したいことだ。望みは何だ?」

 ヴァルキリーは、悩ましく私を見た。

 なるほど……。

 私は、ニヤリと笑った。

 「わかった。私の願いを叶えてくれ」

 私は、言った。

 「して、願いとは」

 ヴァルキリーは、私の言葉を待つ。

 「私の家族のこれからを、『祈って』ほしいのだ」

 私は、ヴァルキリーに言い切った。

 ヴァルキリーの顔に、何だそれは!の表情があった。

 「祈ってくれ。そして、私の書斎にある机の中に、小さな金庫があり、本棚の一番下にある赤い本の中に、鍵が隠してあること、金庫の中に私が家族のためにと貯めた、金の口座があることを伝えて欲しい」

 「祈りではなく、使いだな」

 「私には、それこそが祈りだ。頼む……」

 私は、心からヴァルキリーに祈った。

 「やれやれ、わかった。なんとかしよう」

 ヴァルキリーは、ため息まじりに応えた。顔に、私の負けだわと出ていた。

 「ありがとう、さすがは戦の天使だ。そして、すまない」

 「すまない?」

 ヴァルキリーは、聞いた。

 「ヴァルキリー、アナタが何故、肌を魅せる衣をつけているのか?

 何故、哀れむのか?

 何故、この願いに負けたのか?

 ヴァルキリー、アナタは自分の身体をもって、戦で疲れた男を慰めていたからだ。

 そして、それがアナタの一つ叶える願いごとだった……違うか?」

 私は、ヴァルキリーに言った。

 ヴァルキリーは、伏し目がちになった。

 しかし、表情は笑っている。

 「男は、獣だ。こういった場合は、本性がでる。お前は、死んだ後も人間であり、父であり、男だ。」

 「難しい、私の祈りを頼む」

 私はそれだけを言うと、家族という存在に後ろ髪をひかれながら、ヴァルキリーの後につき天界へと昇った。

 ある所まで昇るとヴァルキリーは、一人でこの先は行くようにと言った。

 ヴァルキリーが、私の約束のために地上に降りるとのことだ。

 「では、さらば!」

 ヴァルキリーが、地上へ落ちていく。

 では私は違う世界へ、飛び込むとしよう。

 そこが、悲しい「戦争」と言う、悪魔がいないよう祈りながら……。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 英雄ではなく、一兵士のお話良かったです。 純粋に家族を思うその心が伝わってきて素晴らしいと思いました。 [気になる点] ヴァルキリーが願い事を叶えた理由が読み取れなかったことです。(読解力…
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