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第一章:その二

 高校生活初日の帰り道、俺はおそらく一般男子高校生は普通ならば経験し得ないだろうことをしていた。

 だって初日の帰り道なのに俺の隣を歩いてんのは違う中学から来た今日会ったばかりの一見超絶美人さんなんだぜ?こんなことがあっていいものなのだろうか、いやあってしまったんだから仕方ない。全国の今日入学したばかりの高校一年生の諸君、恨むなら俺を恨むんじゃなく今俺の隣にいるこいつを恨め。なぜ俺のもとに来なかったんだこんちくしょう、とな。


 だが俺はこのあとすぐ自分を恨むことになる。


 それは曲がり角から左右の確認もなしに猛スピードで前を横切る自転車なみに突然やってきた。

「ねぇ進」

「なんだ?」

「未来人っていると思う?」

 …へ?

 正直耳を疑ったね。何言ってんだこいつ?どこかで頭でも打ったんじゃないか?そう思いたかったよ。

 俺はバッチリ聞こえてたが一応念の為、冗談は通じないぞと思わせるため隣の突然奇妙な言葉を発した女に聞いた。

「…すまん、なんだって?」

 この時点で聞き流しとくべきだった。瑠璃は目をキラキラ輝かしながら、

「未来人よ、未来人!ま、あんたがいるわけないだろうって言ったってあたしはその未来人と直接出会って会話までしちゃったから人に聞くまでもなくいるのは確かなんだけどね!」

 …うわぁ。

 どうやら俺は入る高校を間違えたらしい。前言撤回だ、俺は全国の男子高校生を恨む。なぜこいつがお前らのところに行かなかったんだ、とな。未来人だと?しかも話したことがあるだと?

 バカかこいつ。

 そんなものは書籍やマンガやテレビの中のおもしろ住人達が繰り広げる世界でのみ起こりうる非現実的戯言であって、この非の打ち所のない超平々凡々な極普遍的日常に起こるわけがないのだ。

 俺が完全に引ききった目で見ているのに対し、隣のこいつはそりゃもう何がそんなに嬉しいんだっていうくらいの幸せ半分期待半分の笑顔でさらにこんなことまで付け加えてきやがった。

「ちなみにね、その未来人ってのは実はこの近くにいるのよ。誰だか教えてほしいでしょ?教えてあげるわ。」

 至極嫌な予感がする。俺が今すぐこの場を逃げ出して自分の出せるスピードをはるかに超越した速さで家に退散するか突然気絶したことにしてこの場に体の側面からゆっくり倒れようか考え始めたところで、瑠璃は体全体からあたしはいまむちゃくちゃ興奮してんのよオーラを存分に放出しながら、

「あたしが以前出会った未来人、そいつの名前は…」

 そう言いながら瑠璃は俺に人差し指を向けてきた。おいおい、冗談はいい加減にしてくれ。瑠璃はニマニマ笑いながら、

「なんてね、まだ教えるつもりは無いわ。たぶん、まだ教えちゃいけないと思うから。」

 なんじゃそりゃ。

 突然未来人に会ったことがあるとか言い出したあげくそれが誰か教えてあげるなどというでっちあげにしろもうちょいいいのを思いつくであろうことを言ったと思ったらまだ秘密だと?

くそ、そこまで言われると逆に気になっちまうじゃねぇか。

 さっきまでは知りたくもないと思ってたのに…あぁ、くそ、誰か俺に改造手術を施してこの探求心を消せ。そうだな、どうせなら中三の夏休み前くらいから記憶ごときれいさっぱりなくしてくれ。なんでこの高校を選んだかを忘れられる。ついでに特撮的超人特殊能力でもつけてくれたら俺はそいつを神と讃えてやってもいい。

 だがなにかが引っかかる。何が引っかかってるのか分からないのがむかつく。喉仏の2センチ下くらいまで出かかっているんだが、いかんせんそこから上に出てきそうにない。誰かこの場に走ってきて、それはこういうことです、と俺に教えてくれ。今回に限って特例で謝礼を払ってやろう。四万ペソくらいなら払ってやる。…一ペソっていくらだ?

 俺が相当難しい顔をしていたんだろう。瑠璃は俺の顔を覗き込んでいた。こいつが突然トカゲもびっくりしすぎて尻尾をちぎり忘れるくらいの驚天動地発言をしなければキスでもして一気に距離を縮めてやろうとかおもうのだが。いや、どっちにしろやらないけどね。

「あのな、夢矢。誰がどんなことを考えようとそいつの自由だが、いくらなんでも常識ってもんがあるだろ?おまえが夢を追うのは結構だが、もう少しまともな夢を追え。今日あったばかりのやつにいきなりそんなことを豪語したって信用してくれるやつは世界中探したって指が六本あるやつの世界合計人数より少ないと思うぞ。ミス研(ミステリー研究部のことだ)だってこいつは何を言ってるんだ?と心底思うはずだ。だからもっと恋愛とかスポーツとかに精を出してだな…」

「うるさい。あんたにそんなこと言われる筋合いはないわ。ま、そのうちあんたにもわかるわよ。」

 なにがだ。

「未来人がいるってことにきまってるじゃないの!」

そう言い残すと瑠璃はサッと身を翻して走って行ってしまった。

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