プロローグ
初めての小説です。故に最初の方はとことん文章力がないので、つまらないかと思いますが、物語が進むにつれ文章力があがっていきますので、それに期待して読み進んでいただけるとありがたいです。
気付けばそこにいたということを誰かに話して誰がそのことを説明してくれよう。
記憶はないが記録ならある。
猿が画鋲を踏んで痛がってるような顔の生まれたての写真、初めて立って歩き出したときの写真、初めて父親に向かいなぜかママと言ったときの四角い記録媒体に録画された映像。
どれもこれも単なる親バカとしか言いようがなく、いくら親がそのことをいつまで経っても思い出しては幸せそうにしたって、肝心な記録された本人が覚えてないんじゃ仕方がなかろうという疑問は親のただの自己満足ということにしておけばいいのだが、そのころ親も知らない何かが自分たちが気付かない間に自分の子供におきたところで、その子供を含め誰が覚えていられようというのか。
俺の記憶があるのは最も古いところで幼稚園の年中のときに行った遠足であり、友達とぶつかった衝撃によりチャックが半開きになっていた背中に背負っていたリュックから弁当が落ち、せっかく作ってくれた母親の苦労も虚しく、直射日光により熱されたアスファルトの上にカラスにつつかれてさらにゴミ荒らしをくらったかのごとく散乱した自分の元昼食を見て、その友達に言い知れぬ憤りを感じたくらいのことしか思い出せず、それより以前の記憶はもう頭を雑巾のようにこれでもかとしぼったところで一滴も垂れてきやしないだろう。いやはや、人間の脳みそとは所詮こんなものかと思わされる。
先程〈最も古いところで〉と俺は言ったが、その言葉の通りその部分を断片的に覚えているだけであってそれ以降のことを完全に覚えているわけではない。よってあまり大事に思わなかったことなどは部屋の目立たないところに追いやられたエアコンのコードなみにそのころのおれにはどうでもいいことであって、記憶から抹消こそしないもののよほどのことがないかぎり思い出せない脳みそのタンスと壁の隙間的場所に保管されるのであった。
このころはまだ気付かなかったんだ、あれがあんなに大事なことだったなんて。
だから…
だから俺はその未来的重大事件に関する記憶を、脳みそのわずか2センチ程の隙間に押し込んでそのままにしてしまっていた。