私は平凡で、彼はヤンデレてます。
私の彼氏、まぁ、反強制的に彼女にされたのですが、これがまぁ大変なのです。
彼はいわゆる美形という部類の人間だったわけで、つまり一体何が言いたいのかと言うと、よくあるファンクラブなんてものが存在し、それに初めて呼び出しされた時、私は言った。あぁ、言ってやりましたとも。
「お願いです。私の彼を誘惑して私と彼を引き離させてください。」と、もちろん土下座込みで。プライド?誇り?何それ諭吉さんと関係あるんですか?
彼女はどん引きした後数分間私を見下ろし、そして言った。「ふ、ふんっ!いいわ。あんたみたいなブスなんかよりこの美少女の私の方が彼に相応しいものね!」皮肉るのはどうでもいいのでさっささと誘惑してきてください。それから自分で美少女とか言うのはどん引きするんで言うの辞めてもらっていいかな。
とかそんなやりとりをした次の日、彼女はまさか私のクラスまで来て、まさか「あなたって愛されているのね」と儚い微笑を浮かべて、たったそれだけを言って帰っていきました。その後のクラスの男子のアホ共が一様に「やっべぇ!!!さっきのめっちゃ可愛かった!!」「お、俺、明日告ってみよう!」と騒いでいた。
それからすぐに私の彼氏がやってきて。物凄い笑顔で私を引き摺って、えぇ。比喩とかではなく文字通りに引き摺って彼のバカデカい家の地下室にポイっとまるでゴミでも捨てるように部屋に入った私は、見事な開脚前転で着地をした。余談だが彼は金持ちのボンである。
「私すっげぇー!」
今の今まで開脚前転ができなかった私はスカートだという事も忘れて悦に入っていた。私も相当なアホだった。
「いつもM字開脚してるから股関節が柔らかくなったんじゃない?」
「……………」
心中察してください。
「ところで一体今日のは何?」
「今日のは、と言いますと?」
心当たりがありすぎて困る。果たして彼は一体何の事を言っているのだろうか。彼が制限したお菓子の量よりも少し多めに食べた事だろうか。それとも男子と一緒に腹踊りしたのがいけなかったのか。いや、してないけど。女子高生がそんな事してたら大問題だろう。
「あの女子の大群」
「…………大群…」
団体で行ったんかい。
私はそっちに驚いた。
「なんかその女共が口を揃えて音の口から俺を誘惑しろって言ってたんだけど?」
彼の目に並々ならぬ殺気が込められた。
「あの、すいません。お仕置きはぜひ、監禁二週間でお咎めください」
「何言ってんの。婚姻届出したから、このまま家に住めよ。大丈夫。絶対に家から出してやらないから」
にっこりと笑った彼の口からは、表面上からでは全く想像も付かない言葉。でも、私は聞きなれているから今更。
「今夜どころか明日も離してやれそうにないな」
「ニッタリ笑って言う事が不吉…。ていうか、結婚?よく親は納得したね。」
彼も私も十八の高校生だといのに、普通なら親が許可しないんじゃないか?
「音の親なら、俺が金持ちってわかった途端に『娘をよろしくお願いします』って頭下げてきた。俺の親は『まぁ音ちゃんなら問題ないだろう。むしろ変な子、いや音ちゃんも十分変な子だけど、権力に群がる女共よりはいいだろう』って言ってた。」
「へ、変な子!?私って一夜の親公認の変な子なの!!?」
「気づかない方がおかしいだろ。とにかく高校卒業したら子が孕むまで頑張ってセックスしないとね」
今から楽しみでならない子供のように無邪気に笑う彼に、絶望しか生まれなかった。
「それと、今日は制限以上のお菓子、食べてたみたいだから、その分運動しないと」
バッチリそっちもバレていた。
END