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ラブコメディ

クリスマスQ & A〜復縁したい彼女〜

作者: 地野千塩

 復縁したい。復縁したい。復縁したーい!


 毎日そう叫びたいぐらい。事実、心の中では叫んでいた。しかもクリスマスも近い。SNSを開けば、カップルの生配信も目立つ。友達はついに婚約したらしい。


 野田メイ、20歳。フリーター女子。どうにか復縁したい。元カレが忘れられない。元カレのSNSを眺めながら、毎日のように監視してしまう。


「あぁ、復縁したい。復縁したいよぉ」


 今日もケーキ工場でのバイトの帰り、自宅につくとSNSパトロール。元彼もバイト中らしい。ふむふむと安心したが、それも一瞬。女子高生が元彼のSNSにコメントを書き込んでいた。バイトで世話になったお礼らしい。


「はぁ!?」


 メイの顔は般若と化すが、ちょうどSNSに広告が流れてきた。占いの広告だった。復縁専門の占い師らしい。


「これは運命!?」


 実際は「復縁 方法」「復縁 成功談」「復縁 結果」などで検索していたから、メイの趣向にあった広告が表示されただけだが、まんまと引っ掛かり、バイト代二日分をベットし、電話占いをやってみた。


「復縁したいんです! できますか?」

「もう諦めなさい。新しい恋の星周りが出ているから」


 占い師はメイが望む言葉を言わない。だんだんと不満になり、電話を切ってしまった。


 とはいえ、こういうカウンセリングは何か効果があるかもしれない。ちょうどスピリチュアルカウンセラーの広告も出てきたし、それも賭けてみた。


「復縁したい、したい! できます?」

「それはあなたの魂の成長次第。お互いの波動がひかれあい、宇宙的神秘の元、ソウルメイトになり……」


 このカウンセラーも適当なスピっぽい話題でお茶を濁し、メイの望む答えをくれない。結局、また電話を切った。


 次は復縁成功者が出たというお寺さんに行ってみた。


「住職さぁーん、私は復縁できますか?」

「まずは心を整えて座禅をくんで瞑想をしましょう」


 自然豊なお寺さんで瞑想は心癒されたけれど、それだけだった。メイが望む答えはくれない。


 その後も恋愛カウンセラー、引き寄せカウンセラー、縁結び神社に行ったが、メイが望む答えは出てこない。


 結局、AIに相談してみた。


 Q「私は元カレと復縁できる!? 復縁できるって嘘でもいいから言って!!!!」

 A「できますよ!」

 Q「本当?」

 A「ええ、復縁できます!」


 そんな会話を繰り返し、虚しくなってきた。数々のカウンセリングを受けてきた。中には耳の痛いことも指摘してくれた人もいたが、無視してた。本当はもう元カレとか復縁とかどうでもよくて、自分の思う通りの未来をコントロールしたかっただけだった?


 Q「本当に復縁できる!?」

 A「できますとも!」


 AIは、ある程度自分が望む答えをコントロールできてしまう。色々と忖度してくれるから、自分のエゴも満たせる。でも虚しい。逆に自分のエゴがはっきり見えてしまう。


「あぁ、もう。飽きた、辞める!」


 結局、AIとのチャットも辞めた。本来なら、未来も元カレの心も自由なはず。自分の思いでコントロールできるもんじゃない。


「あぁ、今年のクリスマスは一人かぁ……」


 そんなメイ、クリスマスは一人で過ごすことにした。復縁はできなかった。望む答えは何一つ手に入らなかったけれど、案外、一人でケーキを食べても寂しくない。


 Q「でも、やっぱり復縁できる? できるって前に言ったよね? どう思う?」

 A「AIの回答は必ず正しいとは限りません。重要な情報は必ず確認をしてください」


 なぜか、突然AIが忖度しなくなった。


 ◇◇◇


 Q「クリスマスってキリスト教のお祭りだろ? なんでそんな日本で盛り上がるんだ?」

 A「それは文化的背景によります。結婚式と同様、宗教的意味を深く考える日本人は少数です。多くは単なるイベント事と処理され……」


 AIとチャット中だが、飽きてきた。あくびが出てくる。


 気づくともう年末だ。今年も一人でクリスマスを過ごす確率が高い。まあ、どうせバイトも入ってる。仕事している人も多いはずだから別にいい。


 松井翔也、20歳。大学生。最近はバイトばっかりしている。友達からは社畜まっしぐらなんて笑われていたが、去年、彼女と別れてからはバイトしている方が楽しいんだ。


 Q「それはともかく、元カノがすごいメンヘラだったんだよな。ちょっと女子と話しただけで、猛烈に嫉妬してきて怖かった。あぁ、怖かった。たぶん、今もSNS監視しているっぽ」

 A「それはそれは災難でした。今の時代、彼女を作らず、一人でいても問題なく……」


 AIとのチャットはつまらないと思いつつも、ダラダラと続け、寝落ちしてしまった。


 翌朝、急いで着替え、顔を洗い、髭も剃り、コートとスマホと鍵だけ持ってバイトへ直行。まだ眠い。AIとチャットしていて寝不足とか本当に笑えない。


 こうして忙しく過ごしていたら、あっという間にクリスマスイブになった。スーパーでチキンやケーキを品出し、忙しく終わり、ようやく家に帰ってくる。従業員割引で買ったケーキを食べるのだけが楽しみだった。


 ケーキの画像をSNSにあげる。「ぼっちクリスマスで草」というコメントとともにアップしたが、案外、珍しい存在でもないらしい。同意のコメントやいいねもポツポツつく。


「うん?」


 そんな時、元カノ・野田メイのSNSアカウントもうっかり見てしまったのだが、メイもクリスマスケーキの画像をあげ「ぼっちクリスマス最高! 本当イエス・キリストの誕生日じゃー!」というコメントもあげていた。自撮りも何枚かあげていたが、笑顔だ。スッキリした目を見せている。まるで憑き物がとれたかのような顔。


「は?」


 てっきりメンヘラしているのかと思ったが、一人で楽しそうにしている元カノに心が騒ぐ。あの笑顔、頭に焼き付いてしまった。


 Q「これって元カノが変わったてコト!?」

 A「知りません。AIの回答は必ず正しいとは限りません。重要な情報は必ず確認をしてください」


 AIに聞いてみたが、要領を得ない。なぜか全く忖度してくれない。それでも元カノの笑顔が頭から消えない。


 Q「元カノに会いにいくべき?」

 A「知りません。AIの回答は必ず正しいとは限りません。重要な情報は必ず確認をしてください」


 あー、もうイライラする!


 AIアプリを閉じ、スマホをポケットに突っ込むと、外へ走り出す。うっかりコートを着忘れた。寒い。自分でもバカだと思うが、メンヘラから変わった彼女が気になって仕方ないんだ。


 

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