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Ep.9 汚物は消毒ですわ!



「え、あなた……オクトー……ですわよね?」


御明察いぐざくとりー! とーきはどこからどう見ても貴方のメイドロボ、オクトーです☆」


 完全嘘ダウト。どこからどう見ても当機以外のなにものかです。

 それと、星が散りそうなウインクと横ピースのポーズをやめてください。当機はそんなことしません。――ハチは当機を模倣する気ないでしょう。


(うん。だって俺オクトーさんのことよく知らないし。下手に真似してもボロが出るじゃん)


 だから、最初から故障のふりをして頭のおかしいしゃべり方を?


(え? そんなにおかしい? かわいくない?)


 否定。それは、可愛いではなく、あざといと言います。

 ほら、お嬢様だって乱心した当機の姿を見てあきれ果て――。



「まあ、まあ、まあ! どうしましたのオクトー! そんなにかわいくなって!」



 ……………………。

 ……いえ、それでも当機とお嬢様の間には長年(はぐく)まれた主従の絆があります。

 異物ハチが混入した当機の異変を察知してくれるはずです。



『歓喜。ありがとうございます、ご主人様!』


「呼び方まで……! いままでお嬢様としか呼んでくれなかったのに……ッ」


(口を押えて感激してる…………。異変……気づいてるかな?)


 ………………………………不服。


「まさか、約百年の時を経て路線変更ですの! 毒舌クールメイドからキャラチェンですの!」


(へ~百年かー長いね――って百年!? オクトーさんそんな昔からいるの!?)


 失礼千万。女性体に歳を探るのは無礼ですよ。無神経ノンデリカシーの化身ハチ。


(それは、ごめん――じゃなくて! そんなに長い時間を過ごしてたら、どこか悪くなったりとかないの? もしかして、さっき最期とか言ってたことに関係ある?)


 それは――――。



『……そういえば。あと()()()でちょうど百年……。貴方の()()も間近に迫ってますのね」



 お嬢様が答えてくれるみたいです。


(あ……。抱きしめられた)



「オクトーの姉妹機。最初にNo.1(ウナ)の機能停止が確認されたのが七ヵ月前。そこから一月後にNo.2(デュオ)。さらに一月後No3(トリア)が続いて。先日、No.7(セプテム)の活動が終わった……。今度はNo.8(オクトー)の番…………ッ」


(ご主人様……泣いてる?)


 ……………………。


「わかっていますの。もうすぐ貴方とお別れということは。……ですがわたくしは貴方と離れたくないですわ。お祖父様から受け継いだ貴方を……ッ」


(…………そうか。終わりが近いんだ)


 …………肯定。


「そうやって明るく振舞ってるのも、私を心配させないためなんでしょう?」


「(ちがうけど、本当のことを話すのは酷だな)…………はい」


「……そうですわよね。貴方は冷たい機械に見えて、本当は優しい……うぅ……」


(…………オクトーさん。俺と代われそう?)


 否定。先ほどから何度も試していますがダメです……。


(そうか……。なら、俺がサンシーロちゃんのためにできることは――オクト―さんの代わりだ)

「疑問。()()にしてもらいたいことはありますか?」


「オクト―……では私の()()()()をお願いしましょうか」


「了承! 誠心誠意努めさせていただきます!」


 あ


「では当機はなにをお手伝いすればいいのでしょう!」


「それはですね。私の()()()()()に出てもらい――――」


「ふむふむ」


 ちょっと、ハチ。それは――――。



()()()姿を配信してもらいたいのですわ」




 ●


 ≪しばらくして≫



「ねえ。オクトーさん――この鬱蒼うっそうとしたジャングルはなに?」



 F級資源世界【鬼棲の原生林】第一層。異界森の中です。

 


「もうちょっと詳しく」


 

 …………説明追加。

 ここは限りなき資源と、未知の宝物ほうもつ。ついでに危険な魔物も産出する当機たちの世界とは連ならない、地下に存在する隔たれた異界。


 通称『無限の深淵(ダンジョン)』の中です。



「なぜここに?」



 汚物消毒。定期的に沸く魔物を()()()するためです。



「ほんと――なぜに?」



 面倒。これからお嬢様が教えてくれますよ。



『あ、あー……。あ! 映りましたわ。配信環境に問題なしですわね』


(なんか、宙に浮いた緑結晶からサンシーロちゃんが映った画面が出てきたんだけど?)


 配信用機材です。いま、この結晶を通して屋敷にいるお嬢様と繋がってます。


(ファンタジーのような、SFのような。不思議アイテムだな……)



「オクトー……。残り時間が少ない貴方にこんなこと頼むのは心苦しいですわ」


「ご主人様……」


「ですが、我がイクシーヴァ家の置かれた状況は最悪ですの。没落寸前ですの……ッ。それもこれも、浪費癖で借金を残したお祖父さまのせい……ッ。あのおクソさえいなければ、勝ち組確定・一生安泰・人生イージーモードでしたのに……ッ」


「ご主人様……?」


「膨らみに膨らんだ借金で財政は真っ赤。一時はお金食い虫のオクトーを売却することも考えましたわッ!」


「ご主人様!?」


「だけど、時期が悪かったですわッ。せめて活動限界が知れ渡る前なら高値を付けるお好事家がいたのに、今では足元を見られて二束三文。こうなれば、売るより限界まで働かせた方が得策ですのッ。――そう、職についてない私の代わりに!」


「ご主人様ッ!?!?」


「蝶よ花よと育てられた私に労働なんて無理ですのッ。働いたら負けですのッ! 私は働かず楽して生きたいんですのーーー!!!」



「ご主人様、これだけ言わせてください――――。

 働け、ニートォーーーーーーッ!!!」



 通告。お嬢様はけっこうクズですよ。




 お嬢様がヒロインだと思った?

 いいえ。ただのニートです。


 次回更新は12/11の7:30です。

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