Ep.57 最善の解決手段:拳
2/7。前話のセリフを一部加筆修正しました。
大筋は変わらないので読み返しは不要です。
喋れないはずなのに、喋れる――。
これに似た現象、クソ神モドキどもに怒鳴った時にもあったな。
なんでこんなこと出来んだろ。
う~ん――――ま、いっか。
喋るのに越したことはない。そんな些末なこと、どうでもいい。
今は、オクトーの姿で言いたい放題した偽者をどうにかする方が先決だ。
なんか、さっきまでの饒舌が嘘みたいに静かになって、目を見開いて固まってる。けど、今さら黙ったくらいで許すと思うなよ。
『当機のまま、あふれた魂光……。現実に干渉する力を持った、情報生命体……。精神の超越……。超越者……。まさか――ありえない』
「ぶつぶつ、訳の分からんこと言ってんじゃねーよ」
「ハチ……ごめんなさい……。ごめんなさいッ。」
弱々しい声だ。
偽者が言った事なんか気にしなくていいのに。
「オクトー、大丈夫。あとのことは任せておけ」
「ですが……ッ。当機は自分勝手にも、貴方を利用して……ッ」
「それがどうした」
「え?」
「わがままオクトー上等! 美少女メイドさんに振り回されるなら本望だ!」
この際だから明言しようか。
二度とオクトーが惑わされないように。
「異世界からやってきた俺、八神 八満! 夢は女の子とキャッキャ、ウフフな青春を送ることです!」
「…………はい?」
『…………はい?』
「はい、そこ。いきなり何を言ってんだコイツ的な声を出さない。俺は真剣で、この夢を叶えたいの」
俺以外には分からねーよ。
前の人生を病床でほとんど過ごした、俺の気持ちを。
「憧れてたんだ。昔、病院の窓から見た、同年代の男女が楽しそうにしていたのが。友だち、親友、恋人。関係性は分からないけど、本当に楽しそうだった。俺も、あんな風になりたいと願った。――――前の人生じゃあ、出来なかったけどな」
「ハチ……」
「そんな俺に対等の相棒と呼べる女の子――――オクトーが現れた。人形だろうが、人間じゃなかろうが関係ない。お前が、相棒って呼んでくれた時、俺がどれだけ嬉しかったか……。内心じゃあ、すごくはしゃいでたんだぞ」
分からなくても伝わって欲しい。
俺にとって、オクトーがどれだけ大事な存在か。
「友だちが困っていたら協力する。親友が頼るなら力を貸す。恋――――いや。相棒が困難な道を往くなら、一緒に往ってやる」
「……それが、自分勝手な理由でも?」
「それでもだ。遠慮なく頼れ。一人で背負い込むな」
「……それが、命に係わる危険な場所でも?」
「それでもだ。危険な場所だからこそ、一人にさせられない」
「……当機と離れる手段があると言っても?」
「それでもだッ! 泣いてるお前を、一人になんかできるかッ!」
断固拒否!
遠ざけようとしても、絶対に離れないからな!
それになぁ――――。
「忘れたのか! 俺たち二人で『運命』を乗り越えようって約束しただろうが!」
「――――忘れたことはありません。片時も」
「だったら、迷うな。惑うな。遠慮なんかするな! お前が望むなら、いくらでも力を貸してやる!」
「女の子とキャッキャ、ウフフな青春を送る『夢』のために?」
「女の子とキャッキャ、ウフフな青春を送る『夢』のためにだ!」
「――ふふ。ハチは本当に愉快ですね」
「おう。八満さんは本当に愉快だぞ――――というわけで」
『――――ッ!?』
なにビビってんだ偽者。
テメエが売ってきたケンカだろうが。
「あとは任せてくれ。俺たちの青春を邪魔するヤツにご退場願うから。
――――≪アイハブコントロール≫」
「委任。お任せします。当機たちに立ち塞がる厄介者の排除をお願いします。
――――<You Have Ⅽontrol>」
◐【∞ → 8】
選手交代。同時に勢いを増すハチの魂光。
幻覚に囚われた空間に無垢なる魂の輝きが満ちていきます。
「おうおう。ずいぶん好き勝手言ってくれたな、パチモン。覚悟は出来てんだろうな」
『――――ッ。表層を変更しましたか。ですが、当機のやることは変わりません。――――いま一度、己が【過去】と向き合え!』
「あん?」
警戒。ハチ、気をつけてください。
対象はこちらの表層思考・記憶を読み取り、こちらが最も嫌がるであろう幻影を見せています。
姿が変化を確認。
屈強な体躯をした青年。おそらくハチの元の姿だと思われます。
もう一人の自分の言葉に惑わせられないで下さ――――。
「先制メイドパンチ!」
『ぶッ!? ちょ、まッ――――』
「なんて? メイドボディブロー!」
『ぐふぉッ!? おま、元の自分の身体だぞ!?』
「そうだな! おかげで遠慮なく殴れる、メイドアッパー!」
『ぶふぅッ!? ま、待て! ちょっと待て! 少しは人の話を聞け!』
「了解! 渾身・メイドフィニッシュブロー!」
『がっは……ッ!? コイツ、聞く気ねぇ……』
……対象霧散。
ロクに言葉を発する機会も得られないまま消滅しました。
実体なき幻影を物理で黙らせました……。
えぇー……どうやったのですか……。
「やはり、暴力。暴力こそ、全異世界でも通用する解決手段だ」
空前絶後。
精神攻撃を物理で殴って解決するのは、全異世界の中でもハチだけだと思います。
異世界でも通用する意思伝達手段。
万国共通肉体言語:暴力。
誠心誠意、拳で説得すれば相手は何も言えなくなります。




