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Ep.55 遠のく終着点


 サーニャさんを呑み込んだ裂け目。

 それはウロボロスの胴体と、別の場所から伸びる胴体の境界。彼女が呑まれたと同時に、遠くに見えていた地平線にも変化が出た。

『道』全体がうねり出したのだ。平地はもうどこにもない。


 ウロボロスが荒ぶってらっしゃる。

 まるで「準備運動は済ませたな? ここからが本番だ」とでも言っているよう。


 それにサーニャさんが言い遺した言葉が気になる。

「頭部の位置が動いた」――まさか、ウロボロス……お前。

 ゴールを動かしたのか?


「永遠に続く道の果て。汝たちを待とウ」とか言ってたくせに、待ってないじゃん。そりゃあ永遠に道は続くだろうね。だってゴールが遠ざかってんだから。


 ただでさえ、果ての見えない世界。巨大すぎるお前の身体。少し動いただけで、こっちは身体の上を一生懸命走り回らなきゃいけないというのに……。

 テメエ、コラ。攻略させる気ねえだろ。


 鬼畜の所業にありったけの語彙ごいで罵倒してやりたい気分だけど、そうもいかない。

 登頂後の下り坂。前方に流れる体表の上。眼下に広がるのはサーニャさんを呑み込んだ裂け目――――どんどん大きくなって、断崖だんがいと化してます。

 底は見えず、落ちたらひとたまりもない、と予想ができる。

 奈落への直行便に乗車中。罵倒してる余裕なんてない。


 だんだんと離れていく対岸(ウロボロスの胴体)。

 行動を起こすなら早くしないといけない。

 みんなも同じことを考えたのか、足に力を溜めている。

 数秒。みんなは互いを見合わせて、うなずき――――



「跳べ!」



 跳んだ。

 目測、五メートル。動く『道』の上という不安定な足場での大跳躍。それでも全員が余裕で向こう岸に届く――――待て。


 向こう岸動いてないか?

 いや、確実に波打ってる!? このタイミングでか!?

 着地を狙って動かしてきやがった!


 バランスを崩した護衛の何人かが奈落に落ちていく。

 それに――――俺たちも。

 オクトー!!!



「心配無用。『三相断界トリニティ・へカティア』、三相の三(トリニティ・スリー)。【境界超越ワールド・ビヨンド】――――この瞬間、距離という制約から解放されます」



 え? さっきまで奈落に落ちてたのに、一瞬で視界が切り替わった。

 奈落の上。殿下たちが立つ場所に降り立った。

 これはまさか……瞬間移動!?

『へカティア』って、そんなことも出来んの!?



(肯定。『三相断界トリニティ・へカティア』は砲手にとって必要な術式。砲撃、防護、移動を兼ね揃えた傑作武器です。本来の持ち主であるトリア姉様は、これらを駆使して戦場を蹂躙じゅうりんしていましたね)



 おお。トリアさんの物騒なエピソードが追加されていく。

 あの、ほわほわ笑顔のお姉さんやっぱり怖いかも――――って。

 その移動手段を使えば、目的地ゴールまで一気にいけるんじゃないか?



(否定。そうもいきません。【境界超越ワールド・ビヨンド】は移動距離、人員で消費霊石量が変わります。当機単体と()()があれば、地平線の彼方まで三度は跳べます。しかし、人員が増えれば増えるほど消費量は増大。いま居る人員、《《五名》》を連れて跳ぶだけの余力はありません)



 五名か……さっき、サーニャさん含めて四人落ちたのか……。

 だいぶ減ったな。


 残るは、オクトー・アヴィオール殿下・ウナさん・護衛リーダー・名も知らない護衛くんの五人。

 ウロボロスの頭に辿り着いてからが本番だっていうのに、戦力が削られすぎた。

 これはアヴィオール殿下側の士気も下がる――――



「殿下! 脱落者が多数でましたが、ご安心を! まだわたくしめがおります!」

「自分もです! 環竜の一匹や二匹の首程度、必ずや討ち取ってみせます!」

「うむ。貴君らの決意。たしかに伝わった!」



 下がってないわ。

 むしろ、いなくなった仲間の分も頑張るって気概すら感じるわ。


 なんという忠誠心。

 主君のために全力を尽くす。これが王子と臣下の信頼関係というものか。



「ところで殿下、お疲れでは? ウナ様を担う役割を代わりましょう」

「いえ。自分にお任せを。傷ひとつつけないとお約束します」

「いや、結構だ。気持ちだけいただこう」



 おや? なんか様子が――――



「いいから代われ、ロクでなし王子! テメエみたいな不義理野郎がウナ様に触れ続けんのは我慢の限界なんだよ!」

「あんたには婚約者がいるだろうが! ウナ様を離せ!」

「本性を現したな! 誰が貴様らにウナを渡すものか!」



 ちがったわ。

 これ、忠誠心は殿下に対するものじゃなくて、ウナさんに対するものだわ。


 護衛二人の顔が「魔王から姫を救い出す騎士」の顔になってるよ。

 元気だなー……。高速で流れる悪路を走っているのに、ワー、ギャー騒いでるよ。



「質問。ところで当機たちはどこへ向かって走っているのでしょうか?」



 ピタッ。オクトーの質問で騒ぐのをやめた野郎ども。

 そういえば、先導役のサーニャさんがいなくなったんだった。

 次の先導役は?



「再質問。頭部の位置は判明していますか?」


「……わからない」


「次質問。再生能力の発生源を感知できる方はおられますか?」


「……いない」


「問題多数。すべきことは沢山です。争ってる場合ではないと、当機は進言します」


「「「おっしゃる通りです……」」」



 おとなしくなる野郎ども。

 広大な世界で迷子になった危機的状況にやっと気づいたみたいだ。


 ――――てか、まじでどうする?

 動くゴールの位置が分からないじゃあ、無駄に走り続けることになる。

 このままだと、疲労で動けなくなる。オクトーも『エーテリアル』切れになるだろうし……。


 せめて、ゴールの位置が分かれば――――ん?

 なあ、オクトー。


(なんでしょうか、ハチ)


 俺って、前にトリアさんのエーテル体?ってのが見えるって言ったじゃん。


(言いましたね)


 今、ウナさんの肩に同じものが見えてんだけど――――


(疑問。ウナ姉様が? ――――まさか!?)



 ウナさん。無言で彼方を指さしてんだけど。



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