Ep.53 巡り廻る果て無き終点。究極の『道』
なんということでしょう。
一帯の風景がガラスの如く割れ、砕け落ちたと思ったら、その先に別世界が広がってました。
風光明媚な庭園から一転。目の前には夜空の地平線。
足元は夜空のように星が瞬く、不思議な地面。同種の空。
視界を遮る構造物や地形はなく、周囲360度は果ての見えない地平線になっています。
匠も驚きのビフォーアフター。俺もビックリです。
一緒にここに来た王家の両殿下、その護衛十数人も同じようで呆然としてます。
――――おや。呆けていたのも束の間、即座に動き始めた。
両殿下とウナさんを中心に護衛陣形を組んで、各々がヤバい気配放つ、SFめいた巨剣やら大盾やら長弓なんかの武器。たぶん星滅装備ってやつ取り出した。魔術っぽい光もピカピカしてる。
護衛さんたちの顔は真剣――――というより緊張?
発汗や、恐怖を紛らわすような大声の指示。わずかに身体も震えてる。
この状況って、もしかして想像以上にヤバい?
ここに来てから、俺の中の緊急警戒警報が鳴りっぱなしなんだけど……。起きた規模が大きすぎて、なんか漠然としてる。
それに、この全周から危険が迫る感覚……なんだこれ?
こんな感覚初めてだぞ。どこに逃げたらいいのかもわからん。
なあ、オクトー。さっき八極星とか伝説に続く道とかって言ってたけど、ここって一体なんだ――――って、首下にある蛇のタトゥーを押さえて、どしたの?
「∞の地平線……」
永遠の地平線?
それって、オクトーの正式名だっけ。それがどうしたんだ?
「……回答。当機の名称ではなく、この場の名称です」
へ? この場所の名前?
「当機たち『究極の芸術』に与えられた作品名は、八つの『究極』――【八極星】の名にあやかっています。ここは当機の由来となった、八十八星座・八つの頂点が一つ。『環竜座』――『∞の地平線』と呼ばれる【八極星】ダンジョンです」
環竜……オクトーの首下にある∞を描いたタトゥーって、尾を噛んだ蛇じゃなくて竜なのか。
じゃあ、ここにいるボスは尾を噛んだ竜ってこと?
なんかマヌケっぽいイメージがあるけど、強いの?
「伝説。大昔、この場に訪れた選ばれし者は、こう言い残しています。
曰く、それは永遠に続く地平線。
曰く、それは世界を喰らう竜。
曰く、それは世界そのもの。
曰く、それは無限と再生を司る永劫不滅の存在。
曰く、それは――――究極にして永遠の『道』
巡り廻る、果て無き終点を目指し、駆け抜けよ
――――と、数少ない文献に記されています」
世界を喰らうとか、世界そのものとか、不滅存在とか、凄さが伝わる言葉が羅列されてるけど……『道』? それがよくわかんないんだけど。
「同意。当機にも分かりません。文献は伝聞形式。映像記録や記憶保管魔術もない時代の出来事なので、この場所の詳細が残ってないのです。ただ、確実なのはここの主は、おそろしく大きい、ということだけです」
おそろしく大きいねえ……それっぽいやつは見えないけど。
これだけ開けた視界。隠れる場所もない。
もしかして、上から降ってくるのか?
「不確定。それも分かりません。ですが要警戒しましょう」
あ、トリアさんから借りた『トリニティ・ヘカティア』取り出した。
初っ端からの星滅装備。オクトー、本気だ。
「当然。本気にもなります。なぜなら、特級ダンジョン【八極星】を攻略する偉業を成せば、アルティメシア様から直々に『褒美』を受け賜わる権利を頂けるのですから」
『褒美』? それって――――ん?
空気が震えてる。地面も。……なんか空間全体に重い声が響く。
『試練に挑みし者ヨ、帯同者たちヨ。最終確認ダ。これより試練を行ウ。挑むならば留まレ。それ以外は去レ。元の場所へ戻る道は用意しタ』
なんだ、この声? 誰の声で、どこから響いてるんだ?
あ、俺たちの後ろに開いた光の扉。そこから帰れ、ってことか。
まあ、いきなりの事だし救済措置ってわけだな。
不同意試練はしないって、アルティメシア様の試練至れり尽くせりすぎ。
キリアくんが数人の護衛に引きずられて出ていく。
なんか、オクトーに手を伸ばして喚いてる。
ただ、オクトーは気にする余裕がないのか。
『へカティア』を固く握って、前だけを見据えてる。
残ったのは俺たち。アヴィオール殿下と眠るウナさん。その護衛十名。
しばらくして、光の扉が消えた。
『残ったものは同意したものとみなス――――では、始めようカ』
――ッ!? 地震!?
地面が鳴動してる!?
「否定! 莫大な存在力を感知! 発生源は下から! これは地面ではありません! これは――――ッ」
『遅ればせながら名乗ろウ。私は汝たちに立ちはだかる試練。
八十八星座の頂点。【八極星】が一つ、『環竜座』の化身。
アルティメシア様から頂いた名は――――』
足元全体が大きくうねってる……。
まさか、この地平線まで続く夜空みたいな地面って、地面じゃなくて――ッ。
コイツの身体か!?
「【無限円環の竜道】――――永遠に続く道の果て。汝たちを待とウ」
ヤバいッ! 足元全体が――『世界』が動き出した!?
第四部【ロード・オブ・THE究極】。本格始動です。




