Ep.52 アルティメシアの試練・EXダンジョン『八極星』
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≪どこでもない、どこか。【星】が巡り廻る世界の中心≫
≪誰に聞かせる訳でもない、観測者の独白≫
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『――――ハチマンよ。コレは我のせいじゃないぞ』
『ソレは汝に絡まる因果の糸。避けることの出来ない運命』
『【必滅】・【極貧】・【不幸】――――魂に刻まれた三重の試練』
『強き魂。超越者から与えられた試練。【極】に続く扉前』
『条件は揃った。道は開く』
『汝は聞いたな? 人形を運命から解放する方法を』
『すでに汝の中に答えはあったのだ』
『欲するならば、我が整えた茨の道を進め』
『望むならば、我に大望に足る資格を証明せよ』
『願うならば、我の示した可能性を掴み取れ』
『特級の試練を越えた勇者には相応の報酬を』
『運命に足搔き、抗い越えた先には栄光に至る道を』
『我、アルティメシアの名において保証しよう』
『だが、心せよ。生半可な覚悟と力では試練を越えることは出来ぬ』
『退くことを赦そう。諦めることも赦そう』
『――――その瞬間、願う資格は失われるがな』
『我は手を貸さぬ。導きも示さぬ』
『ただ、汝の選択と結果を見届けよう』
『さあ、ハチマンよ。一等星のごとき輝きを持つ者よ』
『汝の真価。我に示してみよ』
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――――ッ!?
なんだ? いま悪寒が走ったぞ。
それにこのザワザワする感じはなんだ?
Gに気をとられたけど、このダンジョンに入ってから嫌な予感が止まらない。
『聖域』とかいう安全地帯にいるのに、危険が這い寄ってくる感じがする。
よくわかんないけど、逃げたほうがいいと思う。
でも、今はそれを言い出せる雰囲気じゃないな。
「おーい、兄上。僕が来たよー」
「キリア……か。それにそばにいるのは――――」
「挨拶。御機嫌よう、アヴィオール王太子殿下。当機はイクシーヴァ家の家政魔導人形。オクトーでございます」
「ああ、ウナを救える可能性を提供した『アルテアリス』の末子だな……。よく来た、歓迎しよう」
カーテシーでお辞儀する超絶美少女メイド、オクトー。
顔をあげて応じ、愁いを帯びた白髪金眼イケメン王子、アヴィオール殿下。
オクトーより大人びた雰囲気の眠り姫、ウナさん。
中身はともかく、容姿は兄に似た白髪の第二王子、キリアくん。
この空間、顔面偏差値たけー。
この一帯だけ、キラキラして見えるわ。
街ゆく人たちや、護衛の人たちを見て分かったけど、このルックスは異常。
上流階級に住む人たちなんだなって実感するよ。
とりあえず、逃げるにしても、行動を起こすにしても、話が一段落してからのほうがいいな。
この安全地帯を使うかもしれないから、ここの主っぽい王太子殿下に挨拶なしで、「はい、サヨナラ」する訳にもいかないしね。
「あれ? 父上と御爺様はどこいったの? 今朝までここで張り切って狩りしてなかった?」
「父上たちは今、星廻教会に協力を仰ぎに行っている」
「教会に協力を頼む? ここの主に手こずってるの?」
「ちがう。ここの主はもう討伐済みだ――――討伐したからこそ、問題なのだ」
討伐したからこその問題? なんだそりゃ?
キリアくんも同じ感想なのか、頭に疑問符浮かべてるよ。
「私たちは眠るウナを護りながら、A級ダンジョンの主。【絶禍の女王】を激しい戦闘の末に討伐した。戦闘に参加してなくても、十分に魂力が上がるほどの戦闘をだ。だが――――結果は、ダメだった。ウナの魂に成長が見られなかったッ」
「え、まったくの成長なし? ここの主の魂力って、500くらいあったよね?」
「そうだ。通常ならば成長に兆しがあってしかるべきだ。微弱ながらもウナの魂をこの目で確認した。確かに彼女はここに『在る』――――なのにッ。『経験値』が彼女を素通りするッ。まるで存在してないかのように扱われているッ」
「兄上!? 握った手から血が!?」
「たった一でいい! 一つでも上がれば取れる手段が増える! 贅沢を言っているわけではない! 百でも十でもなく、一だ! たったそれだけのことを、なぜ許されない!」
すげぇ鬼迫……ッ。
白い魂の輝きが外へ漏れ出した。
ウナさんをどれだけ大事に想っているのか伝わってくる。
「挙手。アヴィオール王太子殿下、当機は発言の許可を求めます」
「……わかった。許可する」
「仮説。殿下の疑問。それはおそらく、当機たちがアルティメシア様の姿を模したことが原因かと思われます」
「……続けよ」
え、アルティメシア様に似せたのが原因?
どういうこと?
「説明。創造主アマデウスは、当機たち『アルテアリス』を女神アルティメシア様に似せて造りました。神匠と呼ばれる技量で『神の器』を造り上げたのです。ここで問題となるのが、その『器』の大きさです』
「『器』の大きさ――――まさか……」
「御明察。おそらくアヴィオール王太子殿下の想像通りかと。砂漠がコップ一杯の水で潤わないように。大海の青を、バケツ一杯の赤で染められないように。星そのものであるアルティメシア様に似せた、当機たち『アルテアリス』にはA級程度の経験値では『器』を満たせないのでしょう」
「……それの根拠は?」
「実体験。当機も殿下が感じた疑問に直面し、考えておりました。C級ダンジョンのボスを討伐して、なぜ少ない経験値しか入らないのでしょう? 減ってるのでは?と。――当機の由来を考えれば答えは明白でした。得られる経験が減ったわけではなく、次に進むための上限が限りなく高いのです。『神の器』を満たすには絶対的に量が足りないのです」
「では、ウナも同じか?」
「肯定。おそらくウナ姉様にも経験値は入っております。しかし、『器』の大きさに対して、あまりに微量。目に見える形には表れてないのだと考えられます」
「そうか……――――理解した。有用な情報提供、感謝する」
「感謝不要。滅相もございません。お役に立てて光栄です」
おー。希望が見えたアヴィオール殿下の顔が晴れやかになった。
オクトーは優秀なメイドさんだー。
――――ところで、この場にいない国王様や先代様は、なんの協力を求めて外に出たんだ? 今の話聞いた感じ、強敵に手こずってるわけでもなさそうだし。
「(肯定。ハチの言う通りですね)――質問。王太子殿下。不在の国王陛下はなんの協力要請をしに教会に向かわれたのでしょう? 差し支えなければ教えて頂いてもよろしいでしょうか?」
「それは教会を通じ、アルティメシア様に試練を嘆願するためだ」
「理解不能……。試練を嘆願? なぜそのような自殺行為を――まさかッ!?」
「ちょっ。兄上、本気!?」
「察したな。つまり、そういうことだ」
ごめん。俺、全然察してない。
この世界の常識疎いから、アルティメシア様の試練とか、よくわかんない。
オクトーさん、説明プリーズ。
(困惑。当機もいきなりのことに混乱しております。詳しい説明は待ってください)
そんなに衝撃情報だったんだ。
じゃあ、詳しくなくていいから端的に言えるか?
(……説明。端的に言うなら――――殿下たちは、【極】に向かう道を開こうとしてます)
【極】に向かう道?
それは一体――――ん? なんか揺れてない?
「次元震観測。大きな揺れ、これは――ッ。アヴィオール殿下、キリア殿下! 早く避難を! 転移結晶を起動して外へッ!」
「え、え、え? だって、ここは王家秘伝。不可侵の『聖域』――外からの影響が出るなんて……」
「なぜだ……。父上たちはまだ教会に着いてないはず……」
オクトーが呼び掛けても、呆然とする両殿下。
その間にも、風光明媚な庭園の風景にヒビが……。
「空間遮断確認。外界との繋がりが途絶。中に閉じ込められました――非常にまずいです」
なあ、なにが起こってんだ!
(予想。今から当機たちはアルティメシア様の特級試練を受けさせられます)
特級試練!? なんか響きからしてやばそう!?
(伝承。それは八十八星座の頂点。八つの極み。
A級より上位に位置し、どこにあるかは不明。発生条件も不明瞭。
でも、確かに存在する伝説のダンジョン。その名を――)
揺れが一段と激しく――ッ!?
(特級ダンジョン【八極星】――伝説への道が開かれます)
あ、空間が割れた。
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舞台は最終局面へ。




