Ep.51 修羅場の眠り姫
≪しばらくして≫
さあ、着きましたA級ダンジョン『禁域:蟲毒の修羅場』とやら。
ここまでに起きた怒涛の展開に俺は驚きっぱなしです。
死んだと思った護衛の人たちとダンジョンの外で会って、「生きとったんか、ワレェ!?」と、叫んだり。
ダンジョンの中で死亡しても、外で生き返る。『救済措置』とかいう、アルティメシア様の加護に、「さす女神!」と驚嘆したり。
あれよあれよ、と。はしゃぐキリアくんに連れてこられたA級ダンジョンに続く転移門。立派なダンジョンゲートを見て「デカすぎんだろ……」と呆然したり。
今日は驚いてばかり。もう『驚き』は品切れ。
もうなにを見ても絶対に驚かねえよ――――そう思った時期がありました。
ダンジョンゲートをくぐった、その先。
広がる光景を見て、とりあえず一言。
なんじゃこりゃあああああ!?!?
草木一本も生えない赤土の荒野。
天と地。視界すべてを埋め尽くすほどの色彩豊かな蟲、蟲、巨大な蟲!?
凶悪で大きなクモやハエ。ムカデやらアリ。多種雑多なキモイ蟲どもがひしめいてる!? 遠くには天を衝く、よくわからん巨虫もいる――――あ。
待って。
こっちに向かってくる黒い津波ってまさか……。
恐怖をかき立てる擦過音。
不快感を想起させる羽音、足音。
視界に入れる事を本能が拒否する、おぞましい姿。
これは――――ッ。
Gの大群だああああああぁぁ!?
いやああああ!? キモいいぃいいいい!?
「見敵必殺。全メイドの怨敵。黒い悪魔どもを撃滅し、殲滅します」
オクトー!
「装備変更。IAー八式狙撃炎霊銃『ブルーム』。――汚物消毒。全力射撃」
いったーーー!
『ブルーム』さんのビームが薙ぎ払い、消し飛ばした!
やっぱオクトーと『ブルーム』さんなんだよ。頼りになるぅ!
でも――――まだ奥からウジャウジャ出てくるんですけど!?
「膨大。さすがは最高危険度の深淵。湧き出る速度と数が尋常ではありません」
「特にここは多いね。伊達に修羅場とか言われてないよ」
「進言。キリア第二王子殿下、連れて来ていただいた事には感謝しますが、ここは危険です。すぐに安全な場所に避難することをお勧めします」
「そうだね。じゃあ、いったん一緒に行かない? こっちに王家が安全地帯を作ってるんだ。案内するから休憩場所にでも利用してよ」
こっち?
キリアくん、指を差してるけどさ、そっちにはなにもないぞ?
――いや、蟲が避けて通る、大きな空白の場所があるな。
オクトーの手を引いて、空白の場所まで歩いて――――これはッ。
空間が波打って、景色が変わった!?
風光明媚な庭園のような場所に出たぞ!?
これって、異空間ってやつか! アニメや漫画で見たことある!
あ、中にいる物々しい装備をした護衛っぽい人たちの視線が一斉に集まった。
キリアくんはそれを無視。ずっと、オクトーを見てら。
「すごいでしょ。王家の秘術『聖域』だよ!」
「疑問。『聖域』は王族関係者以外立ち入り禁止のはずです。当機が足を踏み入れてもよかったのですか?」
「大丈夫、大丈夫。僕が許す」
本当に? 周りにいる護衛の人たちがなにか言いたそうにあわあわしてるぞ。
「どうしよう?」、「どうする?」って、感じがひしひし伝わってくる。
全然、大丈夫じゃなさそう。
「じゃあ、こっちに来てくれるかな。いま兄上が休憩でこの場所を使ってるらしいから、話を通しとくよ」
「無断。王太子殿下の許可は得てなかったのですね。本当に大丈夫でしょうか……」
オクトー不安そう。俺もそう思います。
報告・連絡・相談の重要性をキリアくんに教えてあげたいです。
そんな心配をする俺たちを他所に、ずんずんと聖域とやらの奥へオクトーの手を引いて連れていくキリアくん。
色んな花が咲く花壇を抜け、謎の機械が浮かぶ整えられた樹木の中を進み。
行きついた先は、一つの東屋。
「あそこにいるのがアヴィオール兄上と――――」
そこにいたのは二人。
白髪の貴公子然とした十代後半の愁いを帯びた男。
その男に手を取られ、豪奢なベットで目を閉じ、横たわる女性。
オクトーと同じメイド服を着てる。
けど、この人。メイドというより――――
「兄上の側付きメイドだった『No.1』だよ」
お姫様っぽい。
眠り姫――――その言葉が一番しっくりくる。
Tips:救済措置
星廻魔導世界アルティメシアに存在するダンジョンには救済措置が存在します。
それが『復活』。
ダンジョン内で死亡しても、ダンジョンゲート前に入ダンする前の状態で生き返るのです。強制排出とも言う。
まるでゲームのような仕様ですが、ちゃんと理由があります
ダンジョンは女神アルティメシアが世界に与えた試練。命あるすべての者が高みを目指すために創られたもの。殺すために用意されたものではないからです。
ダンジョンに入った瞬間からアルティメシアの加護を与えられ、退場するまで続きます。死んでも生き返れるという心理が、巨大な敵に立ち向かう余裕の心をくれるのです。
とはいえ、ペナルティが無いわけではありません
ダンジョンで死亡した場合、復活する代わりに魂力の一割を持っていかれます。
いわゆる、レベルダウン。成長を目指す者にとっては大きな痛手で、実力以上の強敵に挑むのを思いとどまらせます。
それに加え、二十四時間の全ダンジョン入場の禁止。
これも成長を目指す者には痛い罰になります。
ちなみに、これら加護の対象はレベル1以上の魂ある者に限られます。
魂をもたない魔導人形や、レベル1以下の者がダンジョン内で死亡すると――――そのまま朽ち果てます。




