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Ep.49 少年の性癖をクラッシュ

 ≪しばらくして≫

 ≪ヒュドラの攻撃の影響で周囲は毒沼状態。立ち往生≫

 ≪迎えがくるまでの時間。オクトーとキリア雑談中≫



「――――では、殿下が当機に高圧的な態度をとっていたのは、他の王族の皆様への()()からくるものなのですか?」


「うん……。ひどいことを言って、ごめんなさい」



 クソ生意気な態度はどこへやら。

 憑き物が落ちたように、すっかりおとなしくなったキリアくん。

 オクトーに素直に謝ってる。こっちが素の性格か?


 え~と……たどたどしくて長い説明をまとめると――


 ・キリアくんを除く王族の男は、『アルテアリス』の長女No.1(ウナ)さんに惚れていた。表立って言ってないけどバレバレだったらしい


 ・彼女が眠りについた時、男ども全員が悲しみに暮れ、婚約者や家庭をほっぽり出して一時期荒れに荒れていた。


 ・「私とあの人形おんな。どっちが大事なの!」、「そういう問題じゃない!」などなど、尊敬する祖父や父。さらに兄までが、妻や婚約者と口論(時々飛ぶ攻撃魔術)をするバイオレンスな毎日をキリアくんは眺めていた。このころから家庭不和の原因を作った『アルテアリス』に嫌悪感を持った。


 ・そこからしばらく『アルテアリス』アンチサイトに入り浸り憎悪を増長。そんなことをして半年以上経過。ようやくウナさんが亡くなったことを受け入れた王族の男どもが妻や婚約者に謝罪。それを女性陣が許し、平穏な日常が戻ってきた。そのことにキリアくんは安堵した――――が。


 ・オクトーが稼働停止した『アルテアリス』を救える可能性を伝えたことで王族が震撼。特に先王、現国王、第一王子。


 ・先王の「初恋の人を救う」が、云々(うんぬん)かんぬん。現国王は「今度こそ、この想いを伝える」が、なんたらかんたら。第一王子なんかは「私は真実の愛に生きる」などと、どこかの溺愛系小説のセリフをほざく始末。今は眠るウナさんを担ぎ上げてダンジョンに突撃ゴー強制魂力上げ(パワーレベリング)しているという。護衛を置き去りにして。


 ・当然、再燃する家庭不和。やっと訪れた平穏の破壊クラッシュ。情報源であるオクトーにキリアくんは怒り心頭。同時に自分は「兄たちみたいにはならない!」と、芽生える反抗心。


 ・「兄たちとは違う」「僕は人を惑わす悪の『アルテアリス』に屈しない!」「その証明として、余計なことを伝えた人形を懲らしめてやる」と、決意。使える手勢にオクトーの場所を探らせて、嫌がらせすることを決めた、と。



 ……うん。色々言いたいことあるけど、とりあえず一言。

 ――――知らんがな。


 王族のゴタゴタしたラブ事情に俺たちを巻き込まないで貰えます?



「疑問。殿下がこうして謝罪を口にしているということは、もう当機にわだかまりはないのですか?」


「そうだね、ない。自分の目で『アルテアリス』が求められてること。嫌なことをした僕を助けたこと。その人気と高潔な姿を知った。ここまで見せつけられて考えを変えないほど馬鹿じゃないよ。オクトー()()()()()


 ん?


「再度疑問。殿下はウナ姉様と接する機会はなかったのですか? 当機たち姉妹の中でも特に優秀な彼女を見ていればいやが応でも『アルテアリス』がどういうものか分かるはずなのですが」


「ない。ウナは兄上の側付きメイドだったし、接近禁止令を父上が出していたから、遠目で数回見たことがあるだけ」


「意味不明。接近禁止令? なぜですか?」


「僕も今日まではわからなかった。けど、いまなら分かる――()()なるからなんだ」


 んん?


「そんなことより、オクトーお姉ちゃんの話を聞かせてよ。コロコロ性格が変わっていたけど、どれが素なの」


「回答。どれも当機です。どれも当機だと思ってください」


「へぇ、多重人格ってやつ! アイドルみたいな仕草も、男っぽい性格も、いまのクールな感じも、僕は全部いいと思うよ!」


「………………感謝」


 んんん?

 ねえ、オクトーさん。この異様な懐き具合って、もしかして――――


(予想的中。ハチの想像はおそらく当たっています。恋愛ゲーム風に言うなら、当機()()はキリア第二王子殿下を『攻略』しました)


 たち!?

 なんで俺もカウントされてんの!?


(当然。なにをいまさら。愛をわからせる、と。ほざいていたじゃないですか)


 違うよ!?

 俺が目覚めさせたかったのは友愛的なアレで、異性愛のソレじゃないぞ!?


(手遅れ。いまさら何を言っても詮なきこと。すべてハチのせいです)


 異議あり!

 キリアくんを『攻略』したのはオクトーさんの顔面偏差値せいだと思います。

 こんな超絶美少女に惚れない男はいません。

 よって、俺がなにをやろうと結果は変わらないので、冤罪を主張します!



「(では、判決を殿下に委ねましょう)――――質問。殿下はどの性格が好みでしたか?」


「え……そ、そうだな~。どの性格もいいと思うけど、強いて言うなら、男っぽいしゃべり方してた時かな? 芯の強さと頼れる感じが良かった、かな? はは、照れるね」


(判決:有罪ギルティ。やっぱりハチのせいじゃないですか)


 オクトーさん、純情な少年になんて質問してんだよ……。

「私のどこが好き?」的な。


(罪状。その純情な少年の性癖を壊した極悪非道の被告人・ハチに罪を告げます。王族を魔導人形相手に生産性のない恋をさせた罪。その恋をさせた中身が男だった罪。それ知った時に起こりえるであろう性癖が歪む未来の罪。三重の重罪を犯したことを悔い改めてください)


 すべて不可抗力じゃん!?

 あのクソ生意気だったガキがこんなにチョロいとは想像できないじゃん!

 オクトー裁判長、せめて情状酌量の余地を求めます!


(犯行予告。当機が証人として証言します。ハチはこのダンジョンに潜る前、「なぜか護衛が離れて窮地になる王族」、「偶然居合わせて救う、自分」、「惚れられる展開」と、現在の状況と合致する発言をしており。以前からこの状況を虎視眈々と狙っていたものと思われます。よって、情状酌量の余地は無しと判断します)


 違うからね!?

 それお姫様の場合であって、王子様の話じゃないからね!?


(誤差。性差など大した問題ではありません)


 大問題だけど!?

 その差は天と地ほどの差があるんだけど!?


(冗談、雑談はここまでにしましょう。確認すべきことがあります)


 確認すること? なにを?



(当然。当機の――――魂力レベルです)




 雑談&準備回。

 一章のクライマックスを目指して、あれこれ準備中です。


Tips:ラブ事情。


 キリア王子の好意に対してオクトーは無関心。

 「そういうこともありますよね」程度にしか考えていない。


 優れた容姿を持つ『アルテアリス』が好意を寄せられるのは日常茶飯事。

 特段、特別なことでもないし、性別のない人形なので恋愛事に興味なし。

 さらに諸事情で愛に応えられないので、好意を受け流してる。


 キリア少年の恋は実らなそうだ……。


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