Ep.45 配信開始!
「ば、か? お前、いまこの僕を愚弄したのかッ!?」
「おう、言ったな。権力を笠に着てワガママ言い放題のバカ王子」
「また言った!?」
「なに驚いた顔してんだよ。バカなことをやればバカって言われるのは当然だろうが」
「ぐぬぬ……。もうよいッ! 十二号、コイツを不敬罪で壊せ――――」
「また返り討ちにするぞ?」
「~~~ッ」
殿下閉口。さきほど当機が壊した人形たちを思い出して踏みとどまった様子です。言葉に詰まった顔で周りを見渡しています。おそらく、護衛の皆様を探しているのでしょう。
推定:国家認定の五つ星魔導士が相手では分が悪すぎます。
ハチ、ここは戦闘を回避するように――――あ。
殿下が護衛の皆様がいる方向を向いた瞬間。護衛の皆様、姿を隠しました。
…………どうやら面倒な命令の気配を察知して回避した模様。
この状況が殿下にとって良い薬になると判断して静観を決め込むつもりですね。
孤立無援。助けの入らない状況に殿下はちょっと涙目。
自業自得とはいえ、少しかわいそうです。
「……まれてないくせにッ」
「声が小せえ。はっきり喋れ」
「存続することを望まれてないくせにッ! 調子に乗るなッ!」
「は? 誰がそんなひどいことを思ってんだ?」
「みんなだ! みんながそう思ってるんだ!」
「みんな?」
予想。殿下が言っているのは『アルテアリス』の批判者の話だと思います。
(え? そんな奴らがいんの? こんなかわいいメイドさんに?)
肯定。当機たちは星廻魔導世界の女神。アルティメシア様の姿を模して造られた、優れた容姿を持つ偶像。大抵の者には肯定的に見られています。
ですが、創造主の意向により、宗教画に描かれた本物とは色々と異なっています。
それが信心深い者にとっては許しがたいのでしょう。
SNSに『アルテアリス』への不満を語り合う掲示板なるものを立ち上げています。
そこに、妬みや嫉みを持つ者。面白半分の者。魔導人形が嫌いな者等が合流して、汚泥のような場所が完成。連日連夜、呪詛を撒き散らしています。
おそらく殿下はそれを見て毒されたのではないでしょうか。
(淡々と語ってるけど、オクトーはそれが嫌じゃないのか?)
回答。快か不快かと問われれば不快です。
とはいえ、これは全体から見れば少数意見で、現状が上手くいかない者たちの不満の捌け口――――ストレス発散の場です。
抗議して潰し、不満が溜まった者に愚かな行動を起こさせるよりも、存続させたほうが世間に迷惑をかけずに済みます。
なので、一線を越えなければ大目に見る。
それが当機たち『アルテアリス』の総意です。
(なるほど。――――じゃあ、今のキリアくんは?)
越線。なんらかの制裁が必要――――ですが、王族である殿下に対して行える効果的な罰を当機は思いつきません。
暴力に訴えれば、さすがに護衛の皆様が飛んでくる。
これ以上の罵詈雑言も同様。ハチのあざとい色仕掛けも耐えられました。
――――どうしましょうか?
(それについては俺にいい考えがある。オクトー、配信のやり方教えて)
疑問。配信……?
たしかお嬢様から預かった収納袋に機材一式が入ってますが、一体なにをするつもりですか?
(いいから。いいから。俺に任せて)
……不安。かしこまりました。
嫌な予感がしますが、他に手立ても無し……。ハチに任せます。
「(よし!)――殿下。みんな、と言ったよな?」
「そ、そうだ! それがどうした!」
「なら、今から聞いてみようか」
「へ?」
「『アルテアリス』が存続するべきか、否か――――民意を問おう」
存在力上昇。
ハチの感情の昂ぶり――戦意と共に魂が活性化してゆきます。
「見せてやるよ。『究極』を目指す俺たちの生き様を」
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【時間は、Ep.39冒頭に戻る】
「歓喜。みんな愛してるーーー!!!」
:「「「「「わああああああああ!!!」」」」」
……呆れ。配信用結晶から宙に投影されたコメント欄は狂気喝采。
唐突に始めた『重大告知』と銘打つハチの『究極』配信にリスナーたちが狂喜乱舞しています。
冒頭、十分。小粋な挨拶から始まり。
加えて十分。近況などの雑談も交えて、もったいぶり。
明かした、『アルテアリス』が再稼働する可能性を伝えて驚愕させ。
そこからはリスナーを煽りに煽って、配信は最高潮。
同接、約百万。ほぼすべてが肯定的な意見。
この乱痴気騒ぎの滝のように流れるコメントから、王家・七大名家の関係者らしき苦情を発見。……気のせいということにしておきましょう。
姉様たちが甦るかもしれない。
その世界を揺るがす世紀の爆弾発言に世間は大騒ぎ。
当機が持つ連絡端末から「はよ出ろ!」と、催促する震動が止まりません。
一方。殿下の表情は呆然。開いた口が塞がらない状態です。
その驚きは、自身と世間の認識のズレでしょうか?
はたまた、当機の醜態を晒す姿にでしょうか?
それとも――――。
「あ、やべ」
ハチの魂の輝きに惹かれ、ダンジョンの奥地から這い出した多頭のドラゴン。
激しく湖面を突き破り、姿を現した【水星の湖面】の星の化身。
『ギガンティック・ヒュドラ―』によるものでしょうか。
ともあれ、『究極』配信は中止です。
ここからは――――戦闘配信を開始します。




