Ep.41 メイド流・性能確認
俺、八神八満はずっと疑問に思うことがありました。
それは創作物に出てくるバカな王子の存在です。
やれ、横柄な態度で嫌われることするわ。
やれ、短絡的に有能人材を追放するわ。
やれ、ざまぁ待ったなしに権力を振りかざすわ。
いやいや、お前ら高度な教育を受けた王族だろ。
そんな愚かなことしないって。創作で誇張されてるだけだろって。
わかりやすい悪役として描かれてるだけだろ――って。
はい。そう考えていた時期が俺にもありました。
「おい、人形。僕は消えろ言ったはずだ。なぜ、まだいる」
「キリア殿下いけません。相手はNo1様の姉妹機。イクシーヴァ家の『アルテアリス』です。礼を失した発言をしてはいけません」
「あんなガラクタに様付けなどするな! お前たちの主は誰だと思っている!」
諫める護衛っぽい人たちに叫び散らかす第二王子キリアくん(推定13歳)
気づいて。その横柄な態度と発言に護衛の人たちのこめかみピクピクしてるから。
「もういい、お前たちはクビだ! さっさと帰れ!」
「……その指示には従えません。私たちは御身の安全を確保することを陛下に命じられております。職務放棄は出来ません」
「知るかそんなもの! 護衛など連れてきた最新の魔導人形で十分だ。口うるさいお前たちなどいらぬ! 消えぬというならコイツらに排除させるぞ!」
「…………承知しました。一度、この場を離れて必要な指示を仰いでまいります。緊急時に対応できないかもしれませんが、そこはご容赦ください」
あーあ。護衛の四人を追い返したよ。有能そうな人たち行っちゃったよ。
残ったのは地味な装備した没個性の人形三体。こいつら強いの?
さっきの人たちの方が危ない感じがしたぞ。
副音声で『その邪魔な人形を壊す許可を取ってくる』って、聞こえたし、二人くらい帰るふりして物陰で隠密してるし。
「邪魔者は消えた。イクシーヴァの人形も消えろ。このダンジョンは僕の貸し切りだ」
「情報伝達不足。申し訳ございません。本日、キリア第二王子殿下がダンジョンを貸切ることを知らされておりませんでした。差し支えなければ、お答えください。それはいつ決まった事なのでしょうか?」
「今だ」
「…………はい?」
「たった今、アステリア王家の僕が決めたと言ったのだ。異論は許さん」
「………………」
なんとまあ、絵にかいたような愚王子。
横柄、追放、権力。全部やりやがった。
オクトーの呆れた感情が伝わってくるぞ。
なあ、王族ってみんなこんな感じなのか?
(否定。そんなわけありません。王族の皆様は穏やかな性格をしています。キリア第二王子殿下も一年ほど前は、おとなしい子でした)
じゃあ、なんでこうなっちゃったの?
(予想。思春期と反抗期に突入したこと。中等部に上がり、一段階上の魔術を使用許可が出て力に酔いしれていること。権力を使う楽しさに目覚めたこと。他にも色々。様々な要因が重なった結果だと思います)
つまり?
(結論。力を手にした子どもが調子にのっています)
うわ、関わりたくない手合いだな。
ダンジョンの候補はまだあるんだろ。こんな奴ほっといて、そっちにいこう。
「(了解。そうですね)――辞去。キリア第二王子殿下のご意思に従い、当機はこの場所を離れさせていただきます。ご不快な思いをさせて申し訳ありませんでした」
「ああ。――――いや、待て」
「…………当機に何かご用でしょうか?」
「これから僕の『レベリング』する。その手伝いをする栄誉をやろう。人手が減って効率が落ちているのだ」
何言ってんだこいつ。自分で減らしたくせに。
「……聴覚機能に異常あり。ありえない戯言が聞こえました」
「整備不良か? 旧式の人形は見てくれだけ立派で、中身はガラクタだな」
――――ワンアウト。
「…………失礼。当機は先を急ぎます。殿下のご要望には応えれません」
「拒否は許さん。廃棄されるのが決まったオンボロ。最後に僕の役に立て」
――――ツーアウト。
「………………力不足。当機では殿下のお役に立てません。ご自身が所有する魔導人形をお使いください」
「僕の人形の方が優れてるのはわかっている。その上で手伝えと言ってるのだ」
「ですが――――」
「まだ、渋るか。役立たずめ。イクシーヴァの者は主従揃って無能だな」
「――――ッ」
――――スリーアウト。チェンジだ。
オクトー。<アイハブコントロール>
このクソガキに世間の厳しさをわからせてやる。
「不要。当機にお任せください」
だけど――――あれ?
オクトー、さん? もしかして、スゴイ怒ってる?
「承知。キリア第二王子殿下のご命令に従います」
「はじめからそう言え。じゃあ、まずは――――」
「はい。まずは――――殿下ご自慢の人形。その性能を確かめましょう」
「え?」
引き絞った拳。
駆動系安全装置解除。全身から迸る放電。
一足飛び。ロングスカートをひるがえし、一瞬でクソガキの人形に距離を詰め。
硬く握られ、怒りの籠った拳が、いま――――
「おやすみください」
打ち抜いたーーー!?
渾身のメイドパンチがクソガキの人形。首から上を吹っ飛ばしたーーー!?
「な、な、なーーー!?」
「性能確認①、耐久性。結論、ゴミですね。殿下ご自慢の人形はこの程度ですか」
「お、お、おま、お前! ななな、なにやってんだーーー!?」
「一目瞭然。パーティ行動前の戦力把握です」
「首から上をふっとばす戦力把握があってたまるかーーー!!!」
そりゃそう。
キリアくん、元気いっぱいに叫んでら。
「忠告。殿下一つだけよろしいでしょうか」
「な、なんだよッ」
「当機を悪く言うのは構いません。ですが――――」
ああ……なるほど。
オクトーがここまで怒る理由。
それは――――
「よく知りもせず、お嬢様を侮辱するのはやめていただきたい」
サンシーロちゃんを悪く言われたからか。
なんとか今日中に投稿出来た!




