Ep.37 想いを受け継ぐ
「トリアの遺品を、だと?」
「肯定。通常武装。さらには『星の化身』すら滅ぼす武装――『星滅装備』。トリア姉様が活動停止したと同時にヒナミ様に返却されたそれらを当機は所望します」
「…………なんでだ?」
「説明。理由としては三つです。一つ目、新たな『星滅装備』を準備するには時間が足りないこと。二つ目、トリア姉様と当機は武器の趣味が合うこと。そして、三つ目は――――」
「ちげぇよッ! なんでトリアの形見を奪おうとするのか聞いてんだッ!」
ッ!? またヒナミちゃんが燃え出した!?
この密室でそれはやばいって!
――ん? 部屋の空気が震動して……これは、スピーカーが入る前兆?
『ヒナミ様! 室内の術式が崩壊します。怒りを鎮めてください!』
「うるせぇ、怒らずにいられるか! あれは、あれは……ッ。己がトリアのために用意したもんだ……ッ。トリアが己に遺したもんだ……ッ。それをお前は……ッ。自分の言ってることの意味がわかってんのかッ!!!」
「重々承知。理解しております」
「だったら、なんで……ッ」
「継承。三つ目の理由は――――想いと願いを継ぐためです」
「ッ!?」
オクトーの記憶が見える……。
オクトーに似た、少しだけ身長の高い優し気に笑うメイド。再会を誓う言葉。別れの言葉。果たされなかった約束。深い絶望……――――と、希望?
「想念。トリア姉様の武装に込められた『運命を超える』、『運命を超えてほしい』という想いと願い。それらを当機は受け継ぎたいのです」
「…………他に高性能な武器を用意してやる。それじゃダメなのか?」
「無論。不合理、非論理的と言われようと、当機は考えを変えることはありません。なぜならば――――」
≪オクトーはどうしたいんだ?≫
――――これは俺の声?
「トリア姉様の想いと共に征く――――それが当機のやりたいことだから」
≪言葉ひとつで変えるんだ≫
≪後ろ向きな自分を。絶望的な状況を。理不尽な運命を≫
――――そうだ。やりたいことは口に出さねえとな。
じゃなきゃ、なにも変えることなんて出来ねえよ。
「お前……少し会わねぇ内に自己主張を言うようになったな」
「教示。最近、とある方に言葉にする重要性を教えて頂いたので」
「そうか――――わかった。ついてこい」
「かしこまりました。それで、どちらへ?」
「トリアの眠る場所だ」
★
≪ヴァンブレイク家所有ビル。最上階の一室≫
「トリアは高い場所が好きだったからな。家族全員で話して、街を一望できる場所に寝所を作った」
高いし、広いし、室内は豪華な装飾品にあふれてる。
この部屋の主は愛されてたんだな。
「感謝。魔導人形でしかない姉妹機に対する過分な配慮。誠にありがとうございます」
「百年もウチで働いてくれた功労者に対する礼だ。気にすんな――――んで、こっちだ。トリアはそのベッドの上だ」
天蓋ベッド……初めて見た。
カーテンを開けた中には、横たわるオクトーに似た美人さんと――――へ?
「綺麗な寝顔だろ? もう動かねえなんて信じられねぇよな……ぐすっ」
「肯定。今にも起きて、掃除をはじめそうです」
ねえ、オクトー。オクトー。
「トリア、お前の妹。オクトーがきてくれたぞ」
「再会。トリア姉様、御無沙汰しております」
「今日はお前に頼みがあるんだ。オクトーにお前の武器を貸してやってくれねぇか?」
「懇願。どうしても必要なのです。どうか当機に力を貸してください」
ちょーい、オクトーさーん! 聞いてーーー!
「…………胸の前に組んだ手の中の収納袋。そこにトリアの武器、すべてが収められている。持っていけ」
「深謝。重ね重ね感謝を」
「おう。これを使って、お前だけでも『アルテアリス』の呪縛を打ち破れ」
「肯定。必ず」
おーーーい! 超絶美少女メイド人形のオクトーさーん!
聞きたいことがあるんですけどーーー!!!
(騒音。さっきからなんですか、シリアスブレイカー・ハチ。今は大事な話をしているのです。話なら後で聞きますから――――)
この寝ている美女メイドの顔横に、手の平サイズの透けた存在。同じ顔のミニチュアメイドさんが立ってまーす!「あらあら、うふふ」と手を振ってまーす!
「はい?」
これって、俺だけに見える妖精さんじゃないよね!?
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