Ep.36 百億ステラの使い道
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起動シーケンス。第五霊石補充を確認。
目を覚ましてください、ハチ。
「(ぱちり)」
「おう、起きたか」
「(すっ)」
「おいコラ。目を閉じんな。起きたのバッチリ見とるわ」
回答。完全睡眠モードに入る前の質問の答え。
ヒナミ様健在。現在のお召し物は星滅装備。完全武装状態です。
物々しいですね
(…………お願い、オクトー様。ユーハブコントロール)
逃避。ここで当機に主導権を渡しますか……。
まあ、いいでしょう。<I Have Ⅽontrol>
◐【8 → ∞】
「起動。ヒナミ様、おはようございます。素敵なお召し物ですね」
「だろ? どっかのバカが前の服を消し飛ばしてくれたおかげで着替えたんだよ」
「驚愕。それは大変な目に遭いましたね」
「おう。社員たちの前で下着同然の姿になるわ。演習場が半壊するわ。爆発の衝撃で本社の窓ガラスがほとんど割れるわ。散々な目にあったわ」
うわー……。こめかみがピクピクしてる。
めっちゃ怒ってんじゃん……。
でも、ヒナミちゃんが生きててマジ安堵しました。
「心中お察します」
「察しろ、察しろ。ついでに聞かせろ――――お前は、オクトーか?」
やっべ、これ気づいてるわ。
(当然。あれだけ当機らしからぬ行動して疑われないはずがありません)
ですよねー。――――てか、この部屋おかしくない?
窓がない部屋に、俺たちが寝るベッド。ヒナミちゃんが座るイスがひとつだけ。それと、なんか壁のいたる所に紋様が刻まれてんだけど。
(真偽判定術式検出。ここはおそらく『イグニス&オーラム』内にある取調室。当機たちは尋問の最中です)
なんで武器を売る会社にそんなものが……。
――――あ、ヒナミちゃんがイライラし始めた。
「おい。早く答えろ」
「肯定。当機はオクトーで間違いありません」
「お前の正式名は?」
「情報開示。アマデウス=ゼーレンブランド製・家政魔導機械人形ワンオフモデル。【究極の芸術】シリーズ八号機。No.8【∞の地平線】です」
「俺と戦ったのはお前で合ってるか?」
「肯定。当機 (とハチ)です」
「あの『竜の一撃』は?」
「当機が(ハチに指示を出して)やったことです」
「…………反応はなしか――――もういい、術式を解除しろ。コイツはオクトーで間違いねぇ」
おー、なんか切り抜けたっぽい。
ヒナミちゃんの指パッチンひとつで部屋の紋様が消えたよ。
よくウソ発見器?に引っかからなかったね。
(当然。嘘を言ってませんからね。ただ真実を伏せただけです)
このメイドさん、人を騙すの慣れてそう……。
「ふぅ。まあ、良かった。お前がオクトーで安心したよ」
「質問。当機は偽物だと疑われたのですか?」
「いや、お前によからぬものが憑りついたと思ってたわ」
ギクッ! ヒナミちゃん鋭い!?
「じゃねぇとあの豹変ぶりは説明できねぇ」
「…………迷走中。いま当機はキャラブレを起こしています」
「ああ……『アルテアリス』の宿命に抗ってんのか。そういえば、ウチの『トリア』も活動停止前は奇行をしていた――――オクトーも足搔いてんだな」
俺の行動を奇行で納得しちゃった。
というか、『トリア』って誰?
「(後で話します)――――商談。ヒナミ様、知っての通り当機には時間がありません。本日の取引を早急に終わらせましょう」
「ん? お前、魂が宿ったんだろ? あの戦闘でピカピカ光ってたじゃねえか。あれだけの存在力なら相応の魂をもってんだろ」
「否定。詳しくは話せませんが、まだ当機は運命を超えられてません」
「なんか事情があるのか……。――――よし! じゃあ、持ってきたもの出しな。ちゃちゃっと買い取ってやるよ」
「英断。誠にありがとうございます。それでは当機が本日持ってきた物のはこちら。『深淵霊石』。相場価格、五十億ステラの品物になります」
「え?」
あ、ヒナミちゃんの目が丸くなった。
オクトーがポーチから、ドンッと出したダークマターに絶句してる。
「約束。当機がヒナミ様に勝てばこれを倍の価格で買い取っていただける話ですので、おおよそ百億ステラ。支払いをお願いします」
「お、おぅ……」
めっちゃ目が泳いでる。
名家のお嬢様でも百億は大金みたいだ。
無理と言いたいけど、約束しちゃったし言えない!?って、内心の声が聞こえてきそうだ。
「…………やっべ、どうする? マジどうしよう……。お母様は無理だし、お父様かお兄様に頼むか? でも、あとで絶対怒られる(ブツブツ)」
ヒナミちゃん、声聞こえてる、聞こえてる。
乱暴者に見えて、実はお嬢様なんだなと思わせる声が漏れてますよー。
「提案。ヒナミ様の権限でこの大金を動かすのは難しいと当機は理解しています。なので貴方の私物と物々交換をいたしましょう」
「あぁ? 物々交換? 己はあんま高価なモンもってねぇぞ」
「心配無用。当機にとっては百億ステラ以上の価値があるものです」
「……? ――ッ!? お前、まさか――――ッ」
「御明察。当機が欲しいのは、ヒナミ様が当機の姉妹機に贈ったもの」
イメージが伝わってくる……。
これはオクトーの――――お姉さん?
「『究極の芸術』三号機。No3姉様の遺品。全武装を譲り受けたいのです」
百億ステラを手に入れたぞ! ヒャッハー!
――――と、いかないのが本作。『エイティエイト』
あぶく銭はその日の内にすべて消えます。
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