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Ep.33 炎の試練

 


「正直、意外だぁ。遠距離銃撃戦が得意なオクトーがここまで闘えるのはなぁッ! ()()に新しい『魔法プログラム』でも買ってもらったのか――――オラァ!」


「ラッシュしながら喋るとは余裕がありますね――――ふッ」


「いいねぇ、今度は致命的な炎熱範囲もきっちり避けてる。よっぽど高性能な回避『魔法プログラム』を取り入れたみたいだな!」


「え~と~…………秘密です!」



 事実誤認。取り入れたのではなく、憑りついたのです。

 ただ、これを説明すれば面倒なことになりますね。


 異世界人ハチの魂が当機の身体に宿ったと言えば、厄介事が舞い込むこと必至。いまの当機たちはそのような些事さじに構っている時間はありません。

 絶対に話してはいけませんよ、ハチ。


(当然。バレてゴーストバスターが来ても嫌だしね! ところで『プログラム』って、なんのこと?)


 強化手段。魔導人形の性能を高める魔術の刻印を『魔法プログラム』と呼びます。本日、深淵霊石を売却し、新たな『魔法プログラム』や武器を入手するのが目的だったのですが――――。


(強化する前に戦闘に突入したってことか。まったく、誰のせいだよ)


 回答。ハチです。


(ですよねー。マジごめんなさい)


 謝罪受諾。とはいえ、不幸な出来事が重なった結果です。

 あまり気になさらないでください。


(なんと寛大な。オクトー……いや、オクトー様。ついでに告解させてください)


 …………却下。嫌な予感がします。


(却下を却下。実は俺、『貧乏』になる呪いをかけられてるっぽい)


 はい?


(俺をこの世界に送った神モドキの一人が言ってたんだよ。【極貧】が日常になるって。他にも一ヵ月以内に死ぬ【必滅】や、生きてる間【不幸】が襲い続けるとか言ってたな。たぶん今回の出来事はこれが関係してる)


 …………八神 八満様。当機が良い魔導人形の引っ越し先を手配しましょう。

 今回はご縁がありませんでしたが、新天地でのご活躍お祈り申し上げます。


(他人行儀からのお祈りメール!? 速攻で切り捨てないで! 俺たち一緒に運命を乗り越えようと誓った仲じゃん!)


 大丈夫。まだ契約解除有効クーリングオフ期間。

 当機は疫病貧乏死神・ハチを返品することは可能です。


(悪魔合体したコラボ神!? たしかに今の俺はそんな感じだけども!)


 冗談。ハチには当機の運命を超える協力をしてもらわなければいけません。

 多少の負債リスク――――いえ、多大な負債リスクは許容して――――いえ、やはりどうしましょう?


(迷わないで! ほら、俺ってば役に立つよ! ヒナミちゃんの攻撃もスイスイ避けてるよ!)


 ……確かに。よく当機と会話しながら避けれますね。

 あのヒナミさまの攻撃に対して、ここまで回避できる者はそうはいません。


(でしょ? 昔から危険を避けるのは得意だ。それに、オクトーの身体の性能がいいからね。ぶっちゃけ超人になった気分だよ)


 当然。魔導人形は一般人の身体能力より上です。

 特に『究極の芸術(アルテアリス)』は戦闘秀でており。その活躍で一世を風靡ふうびした時代もありました。ハチの感想はごもっともかと。

 しかし――――。



「うっぜぇッ!」


「ッ。さらに速く!?」



 当機は百年前の遺物。

 最新にして新世代の魔術師を相手取るには力不足です。


 発火イグニッション。ヒナミ様さらに燃え盛り加速。炎拳連撃回避――――間に合いません。


「まずッ……!」


「オッラァ!!!」



 顔面直撃……ッ。――――装甲シールド第二層突破されました。残り一層。

 後方に激しく飛ばされ、歓声をあげる観客と当機たちを隔てる障壁に衝突。

 ハチ大丈夫ですか?



「くらくらする……。ダメージないはずなのに世界が揺れて見える」



 衝撃が装甲シールドを越えてきましたか……。



「よっしゃあ! 一発キメたぞ!」


「「「「おおおおおお!」」」」



 ……提案。当機たちには今二つの道があります。

 早々に負けて機嫌を良くしたヒナミ様相手に交渉を持ちかけること。

 あれであの方は話が通じるお人です。悪いようにはしないでしょう。


(却下。俺の辞書に諦める文字はない――――もう一つの道は?)


 それは――――



「どうした、オクトー! さっきから逃げてばかりで反撃ひとつすらしやしねぇ!」


「しないじゃなくて、できないんですけど……。炎が危険すぎて反撃の隙がない」


「はっ、泣き言か? そんな様子じゃあ、てめぇが持ってきたお宝ってのも大したもんじゃねぇな」


「は?」



 怒り検出――――ハチ?



「気に障ったか? だが、そうだろ? さっきからてめぇは戦いに後ろ向きだ。自分の宝が懸かってんのに、だ。だったら思うだろ。持ってきたもんが大したことねぇから本気になれねぇんだって」


「おい」


イグニスの試練は真に価値があるものを明らかにする。おれの裁定じゃあ、お前が持ってきたもんはゴミ以下の価値――――」


「クソガバ認定で人様のモンにケチつけてんじゃねえ!」


「あん?」



 ハチ!?



「棚ボタでもなあ、()()は俺()()が必死に戦って得た戦利品だ! 運命に抗った証明だ! それをお前の勝手な尺度で語るな!」


「………………」


「納得がいかねえなら、わからせてやる」


「わからせるだぁ?」


「お前が無価値だなんだとレッテル貼ろうがなぁ――――()()()()!」



 …………もう一つの道。

 それは――――後の事はなにも考えず、全身全霊を賭して抗い抜きましょう。



「俺たちが持ってきたもんが最高のお宝だ! それを、わからせてやる!

 ――――【限界突破リミットブレイク】!」



 激情。存在力の急上昇を確認。

 ハチの魂。器からあふれ――――輝き出しました。



次回、決着です!


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