Ep.32 一目で危険とわかる『ステータスオープン』
(オクトーさん! ヒナミちゃん燃えてるよ! 魔術なしじゃなかったの!?)
存在力急上昇。あれは魂光。魔術ではなく、『魂』の輝きです。
感情の昂ぶりで『魂』が体という器から超過氾濫しているのです。ハチが昨日、ピカピカ光らせていた現象と一緒ですよ。
(たびたび聞く、存在力ってなに? 魂力とは別物――――「あぶなっ!?」
「ボーっとしてんじゃねぇぞ、オクトー!」
炎拳回避成功。説明は後回しです。戦闘に集中しましょう。
魂光は見せかけではありません。あの炎のごときは光は実際に熱を帯びています。
ヒナミ様の赤熱した炎拳は魔鉄鋼の板すら容易く溶解させます。
狙撃炎霊銃『ほうき』の通常威力と同等だと思ってください。
「なんて物騒な拳で殴りかかってんだ……ッ。それ熱くないんですか!」
「熱いだぁ? んなわけねぇだろうが――疾ッ」
「上段蹴り!? 短いスカートでそれはまずいですよ!」
「ちゃんとインナーは履いてる――破ッ」
「あぶっ!」
「ははは! よく避けるじゃねぇか、オクトー!」
炎拳連撃。ヒナミ様による怒涛の攻めを紙一重で回避。
ここまでに直撃はありません。しかし――――
「まずは一枚だ!」
「ッ!?」
装甲第一層、耐久限界超過。甲高い音を立て割れました。残り二層。
直撃こそ避けましたが、魂光の炎熱は表面強化装甲の耐久力を蝕んでいました。
このままでは危険です。一旦後方に退避して態勢を――――
「『セーフティオフ』!」
ッ!? 駆動系安全装置解除からのカウンターで肘打ち!?
「やるじゃねぇかッ」
「こっちも一枚貰ったぞ」
…………ヒナミ様の魂光を避け、腹部に痛打直撃。
装甲第一層破壊を確認。後方に吹き飛ばしました。
あの場面で退かず、一歩踏み込み。あまつさえ相手を退かせますか。
ハチはなんでそんなに戦闘が上手いのですか……。
「うう……ついやっちゃった。女の子に肘入れちゃったよ……」
……罪悪感無用。戦いの場において男も女もありません。
やらなければやられる状況で紳士を気取ってる場合ではないです。
遠慮はヒナミ様も望んでいません。
それと――――注意してください。
ヒナミ様の『存在力』がもう一段階上がります。
「いいねぇ! お前、いつからそんなに接近戦が上手くなったんだぁ!」
「おおぅ……。さらに燃え上がった……」
「「「「「おおおおおおおお!」」」」」
「うわッ、びっくりした!? 観客たちめっちゃ興奮している!?」
「てめぇらも盛り上がってんな――――オラ! もっと声上げろ!」
「「「「「おおおおおおおおおおおお!!!」」」」」
「こっわ……。あいつら目がイッちゃってない?」
熱狂。炎拳を高々と上げるヒナミ様の『存在力』に当てられています。
説明すると『存在力』は、世界に影響を与える『存在』の力。
強靭な『魂』から放たれる光輝は事象すら干渉し、身体にも影響を与えます。
時にそれは、火のない場所に炎熱を発生させ、炎のごとき魂に耐えれる身体に変え、莫大な膂力を発揮させます。万物の理を超越した現象を引き起こす『意志』の力なのです。
人は強い存在に憧れ、魅了されます。
この世界『アルティメシア』で人類生存圏は繁栄しているとはいえ、常に危険を孕んでいます。
だからこそ、危険に対抗できる強き存在力を持つ者は英雄視され、崇拝対象になるのです。ヒナミ様のように。
「アイドルイベントじゃなくて、英雄ショーだったか……」
補足。『魂』を魔力の源泉、『魂力』を階位と表すなら、『存在力』は強さを示す指標。戦闘能力といったところでしょうか。
「じゃあ今、ヒナミちゃんはステータスオープンしてる状態かぁ……。異世界初心者の俺にも一目で危険と知らせてくれる親切設計だねー……」
…………疑問。ハチはあの光輝を見て何も感じないのですか?
「うん? すげえ危険だと思ってるぞ?」
いえ、そうではなく――――。
「さあ、次だ! いくぜぇ、オクトー。もっと、己を楽しませてくれよ!」
「俺、楽しくないんだけど……――――仕方ない。五十億の石を守るために頑張りますか……っ!」
…………再度戦闘突入。ハチとヒナミ様、バトルフィールド中央で激突。
観客の社員たちは狂ったように歓声をあげています。その姿は狂信者のよう。
ヒナミ様の『存在力』の光輝が衰えてるわけではありません。
だとしたら、なぜ――――
ハチはアレを直視して大丈夫なのでしょうか?
Tips:表面強化装甲
イメージとしてはFPSゲームのアーマーです。
作中では、一定ダメージを肩代わりしてくれる魔道具だと思ってください。
このボディシールドはエネルギーシールド。
破壊されても専用の充填機を使えば再度使用が可能になります。
ダンジョン探索や危険領域に行く、戦闘職必須のアイテムですね。
次の投稿は1/3の7:00予定です。




