Ep.29 いとも容易くおこなわれるえげつない行為
≪時間軸は戻り、現在≫
薄暗い路地裏。山賊に出遭いました。
現在、オクトーは壁際に追いやられて退路なし。
離れた場所には、やつらが破壊したと思わしき治安維持魔導人形とやら。
装備品が剥ぎとられています。
ガチでヤバい連中のようです。
ガチの山賊に出遭ったようです
近未来な街中で山賊とは、これ如何に?
いや、だって山賊としか言いようがないもん。
伸ばしに伸ばした不衛生なヒゲ。
野性味あふれる毛皮のコート。
他にも全体的にTHE・山賊ファッションって感じでコーデされてるもん。
(正解。ハチの予想は当たりです。アレは最近、荒くれ者の間で流行りの格好で、その名を『山賊』スタイル。見た目の威圧感と、近寄りがたい悪の雰囲気が好まれているようです。『原点回帰』スタイルとも呼ばれていますね)
たしかに近寄りがたい頭の悪そうな格好だ。
ねえ、異世界ファッション、迷走してない?
(心外。一部の頭が悪い者たちをこの世界の基準にしないでください)
「あぁん。いつまでシカトしてんだぁ?」
「ひひ、こいつビビってんぜ」
「人形のくせにいっちょ前に人様のフリかぁ?」
「ほら、フードをとって怯えた顔みせてみろよ」
「早くしな。このナイフで刻まれてえのかぁ(ペロペロ)」
なんという世紀末ヒャッハーな連中だ……。
おい、ナイフ舐め吉。そのナイフおいしいのか?
てか、なんでこいつらオクトーを人形だと分かるんだ?
認識阻害のローブとやらで姿が分からないはずだし、フードも被ってるから顔も見えないだろ。どこで判断してんだ?
(予想。この中に『魂』を感知できるものがいるようです。おそらく、人か人形かを判断して襲っているのでしょう。魔導人形を快く思わない集団のようですね)
あ? そんなつまんねえこと考えてる連中がいるのか?
それにオクトーには『魂』はあるぞ。こいつらの目は節穴か?
(鎮静。落ち着いてください、ハチ。当機はこういった扱いに慣れています)
…………聞きたいんだけど。オクトーはこいつらをやっつけれる?
(肯定と否定。この程度の輩を排除することは容易い。ですが、魔導人形は一般人を許可なく傷つけることは出来ません。そう『魔法』で定められています。でなければ当機が壁際まで追いやられる訳がありません)
次の質問。助けは呼べる? 周囲に人の目は?
(否定。現在、第一霊石通信網妨害の魔術が展開されており、通信手段を遮断されています。監視結晶の類も潰され、周囲に人気はありません)
なるほどなるほど。助けも、人の目もないか~――――良し。
オクトー交代だ――――<アイハブコントロール>
「疑問。 良し? ですがいいでしょう。
――――<You Have Ⅽontrol>」
◐【∞ → 8】
「あ? ユーハブコントロール? なに言ってんだ、こい、つ……」
認識阻害解除。ハチがローブのフードを外したのを確認。
輩たちは、フードの下から出てきた当機の容姿に言葉を失っているようです。
「この人形……オクトーってヤツだよな……?」
「かわいぃ……」
「すんげぇ……光り輝いて見える……」
「間違いない! 『究極の芸術』で稼働する最後の一機だ!」
「コイツ自体が宝だ! 売ればとんでもねえ額になるぞ!」
辟易。輩たちの目が下卑たものに変わりました。
このようなことがあるから街中で姿を現したくないのです。
ハチは一体なにを考えて――――ハチ?
「(にこ)」
「おぉ……笑いかけてくれた……」
「無表情で有名なオクトーが微笑んだぞ……ッ」
「なんて破壊力……ッ!」
「なんて尊い……。涙が出てきた……」
「なあ、オレのことをご主人様って呼んでくれよ! おかえりなさいませも!」
「かしこまりました(にっこり)」
「「「「「おおぉ!」」」」」
現状確認。輩たちの歓喜の声。ハチは当機の体で輩の一名に接近。
うやうやしく頭を下げ――――右脚を後ろに大きく振り上げました。
振り上げた足は、まるで引き絞られた弓矢のごとく。
唖然とする輩たちを他所に、力を溜めに溜め――――放たれました。
魔導人形の尋常ならざる脚力が空気を裂き、音を置き去りにし、対象の股間に吸い込まれ――――あっ。
「土にお還りなさいませ、ご主人様ーーー!!!」
「――――ッッッ!?!?!?」
衝撃。大気を震わせる非人道的蹴撃が対象の股間に直撃。
対象、この世すべての痛みを受けたかのように苦悶の表情を浮かべ、白目をむき、泡をふき、倒れました。
外道の行いですね。
ほら、輩どもは恐怖で内股になって震えていますよ。
「悪党滅ぶべし。慈悲はない。――――てか、普通に攻撃できんじゃん」
「お、お、お、お前! 人形のくせに人様を傷つけていいと思うのか!」
「あぁん?」
「ひぇッ!?」
ハチ……当機の身体でメンチを切らないでください。
顔が反社勢力並に凶悪になってます。
「おっと、それはいけないな――――(にぱっ)」
「ひいいいぃ!?」
「余計に怯えたが?(にこにこ)」
表情急変。相手側からしたらその笑顔は目標補足です。
「次の犠牲者はお前だ」と。喜びを見せているようなものです。
ほら、快楽殺人鬼を見るような目でこちらを見ていますよ。
「失礼な。こんなかわいいメイドさんを前にして――まあいいや。おい、お前ら」
「は、はい!」
あ、また邪悪に嗤いました。
「ここは人目につかない。助けを呼んでも無駄だぞ」
…………立場逆転。悪者はどちらなのでしょう?




