Ep.27 異世界人、一歩外に出れば山賊に出遭う
不肖。俺、八神 八満はサンシーロちゃんの話を聞いて興奮していました。
勇者の末裔とか言われるお嬢様――――竜を殺せるらしいオクトーの【限界突破】を軽々とあしらう、サンシーロちゃん。それと同等以上の『魂力』とかいう謎パワーを持つと認定された俺。
まるでチート能力が発覚した物語の主人公のよう。ワクワクしない訳がない。
一瞬で存在しない記憶が駆け巡ったよ。
ピンチの美少女の前に颯爽と駆けつける、俺。
――――『もう大丈夫だ(歯をキラーン)』
窮地に陥った仲間をスタイリッシュに救う、俺。
――――『フッ。この程度か(髪、ふぁさぁ)』
強大な凶敵に怯えることなく不敵に笑う、俺。
――――『見せてやる。俺の魂の輝きを!(全身ピカーン)』
チート無双でイキり散らかす妄想の数々。
いいのか、異世界?
はじまっちゃうよ? 俺のチート異世界生活はじまっちゃうよ!?
『人形転生者の魂力無双~俺の魂力は勇者の末裔以上だった件~』はじまっちゃうよ!?
「魂力無双? 愚問。そんなこと出来る訳ありません」
はい。異世界はそんなに甘くありませんでしたー。
ですよねー。現実はそんなに甘くないって知ってんだ、俺。
伊達に何度も生死の境さまよってないんだわ。
ちなみにその理由を聞いてもいいでしょうか、オクトーさん。
「回答。まず――――知識と、教育と、経験と、資格と、道具と、戸籍と、認定と、人脈がなく。そして、なによりも『お金』が圧倒的に足りません」
…………つまり、どういうこと?
「補足説明。理由を大別すると三つです」
わかりやすくお願いします。
「一つ。義務教育を受けてないからです。『魔術』は取扱いに注意が必要で、教育を受けてない者が行使できないよう、術式に『魔法』が組まれています」
ほうほう?
「二つ。資格を持っていないからです。扱える魔術は保有する第五から第一までの資格試験によって変わり、資格を得ることで国から魔術行使を認められます。ちなみに国民以外にこの試験を受けることは出来ません」
ん? 国民以外?
「最後。お金がありません。資格試験を受けるにしろ、魔道具・魔法を保有するにしろ、金銭が必要になります。ハチはお金をもっていますか?」
…………もってません。
「結論。学なし、金なし、住所不定の無職・ハチに魔術を行使することは国が認めません。たとえ異世界人と暴露しても、強靭な『魂』を持っていると主張しても、それは変わることはありません。例外を認めては、法の正当性が疑われますからね」
え? じゃあ、俺の推定:勇者の末裔級『魂力』って、宝の持ち腐れ?
スキルなしじゃなにも役に立たない死にステータスってこと?
「否定。そんなことありません」
おお、希望が見えた!
教えてください、オクトーさん! 俺の『魂』はなんの役に立つんですか!
「照明。夜道で光れば道具要らず。第三霊石の節約になります」
懐中電灯!?
俺の魂って百均で買えるアイテムと同価値なの!?
「冗談。裏技を使えばこの限りではありません。ですが――――」
うん。この状況じゃあ役に立ちそうにないね
「おうおう。ガラクタ人形が人間様をシカトか? あぁん?」
「さっきからブツブツと、どっかに連絡してんのかぁ?」
「残念! 通話妨害の魔術展開中だぁ! 助けはこねぇよ!」
「あるんだろ? お宝持ってんだろ? プンプン匂うぜ!」
「ヒャハハ! 痛い目見たくないならさっさとだしな!」
俺、異世界初心者の八神 八満。異世界にきて初めての街中ぶらり。
近未来SFファンタジーを感じさせる街並み。
オクトーの中から、ワクワクドキドキのおつかい中。
『山賊』に遭遇しました。
なんでこうなったよ……。
Tips:『術』と『法』
物語によって解釈が分かれる魔術と魔法。
星廻魔導世界『アルティメシア』での扱いは、『道具』と『ルール』です。
語れば長くなりそうなので、割愛。
これからの話の展開で説明できればいいなと思います。
次の更新は12/29の7:00です




