Ep.25 Lv0とかラノベのタイトルにありそうな単語
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(説明。この世界、『アルティメシア』では『魂』の観測に成功しています)
ふむふむ。
(『魂』は魔術を行使する源泉であり、『魂』無きものに魔術を扱うことはできません。これが生物とそれ以外を分ける境界線です)
う~ん? 『魂』有る無し、魔術使える使えないって、そんなに重要か?
感情があって、意志疎通ができたら『人』でいいじゃね?って、俺は思うぞ。
(その価値観はハチが異世界人だからです。『アルティメシア』の長い歴史は魔術を至上とするもの。国防・インフラ・日常生活などでも必要不可欠。ですが、この辺りを話すと長くなるので省きます――――いま重要なのは『魂』の鑑定です)
『魂力』だっけ? なにこれ。魂に強さでもあるの?
(肯定。あります)
あるんだ。――――話の流れからして、『魂力』が強いほど魔術ってのがたくさん使える感じか?
(再肯定。補足するなら『魂』の強さ、成長曲線は個人によって変わります。生まれ持ったもの。成長で伸びるもの。様々な経験で得るものなどがあり、この世界の住人は『魂』を高めるために義務教育の過程から研鑽を積みます)
ほうほう。
(これは数値で明確に表されるので、努力を怠ったものを一発で見破ります。就職にも響きます。なので、大抵の者は『魂力』を高めるのに必死です。ちなみに例外を除いた二十代以下の平均『魂力』は20~30です)
なるほどな~。なんとなく分かった。
ようは『魂』は『MP』で、『魂力』はレベルか。
みんなはレベルアップを頑張ってる感じね。
(ゲーム脳的な考えですが、概ねその通りです)
そんで、いま中庭に『魂力』を計るための大仰な装置を設置していると。
すごいな、あれ。五芒星になるように大きな結晶配置して、地面にプロジェクター(?)で魔法陣みたいなもの投影してる。あ、魔法陣が地面に焼き付いた。
お~。魂の鑑定って、けっこう大掛かりな作業なんだな。
(…………否定。本来は手に持てる程度の簡易的な装置でピッとやって終了です。あれは『天災』級を計るためのものです。間違っても、魂の在り処が不確かな魔道人形に使うものではありません)
ディザスタークラス?
なに、そのすごそうな名前。
(不穏。嫌な予感がするので説明はあとです)
「質問。お嬢様、これは一体なにをしてらっしゃるのでしょうか?」
「あら? もちろんオクトーの鑑定ですわよ」
「休息勧告。お嬢様はお疲れのようです。すぐにお休みください。医師なら手配しておきます。異常は頭ですね」
「だれが頭の病気ですか。それにわたくしが疲れるわけありませんわ。なぜなら働いてないから!(どやっ)」
なに胸張ってドヤ顔してんだ。このニートお嬢様は。
「診断。それでは目の異常ですね。当機が魔獣に見えているようです」
「あらあら。わたくしの目にはちゃんと可愛いメイドさんが映ってますわよ」
「でしたらなぜ――――「準備できました。イクシーヴァ様、試運転お願いします」
「呼ばれましたわ。いってきますね」
「ちょ――――」
いっちゃった。
サンシーロちゃん魔法陣の中心に立ったけど、先に計る感じかな?
あ、サムズアップしてウインクした。
「予想。あれは『前座は任すのですわ♪』とか考えてる顔ですね――――ところで、ハチ。気づいてますか?」
うん。なんか周りにウジャウジャ人いるね。
庭園の庭木影から頭がのぞいたりしてる。本人たちは隠れてるつもりっぽいけど。
「警報作動無し。『屋敷精霊』たちが反応しないということはお嬢様の招待客なのでしょう。――――胸騒ぎが止まりません」
奇遇だね、俺もだ。
あ、はじまった。結晶がペカーと光って、――――収まった。
おー、かなり幻想的な光景だったな。
ん? 鑑定士のお姉さんが手元の端末を見てる。
そこに『魂力』とやらの数値が出てるのか?
まあ、ニートお嬢様のことだから、そんなに高くないだろうけど――――
「イクシーヴァ様の『魂力』は1123です。前回計測結果と同じです」
「ふむ。まあ、活動してないから当然ですわね」
インフレぇッ!? 高すぎじゃない!?
オクトーさっき平均20~30って言ってなかった!?
(説明追加。それは一般人の数値です。お嬢様はアレでも異世界人の血を引くイクシーヴァ家。『勇者』の末裔。世界有数の例外存在です)
まじか……。サンシーロちゃんにそんな主人公みたいな設定あったのか。
なのに今はニート……。勇者の末裔が遊者って、ご先祖様が草葉の陰で泣いてない?
(泣きたいのは当機です。わかりますか? 当機はあれの後に計るのですよ。草葉の陰にいる衆人環視の前で。公開処刑でしかありません)
たしかに……。サンシーロちゃんはなに考えてんだ?
「さあ、次はオクトーの番ですわ!」
「…………(ふるふる)」
「あら、首を振る姿も可愛らしいですわね。でも、ダーメですわ」
「…………(ブンブン)」
オクトーが散歩を嫌がる大型犬みたいになってる。
てか、サンシーロちゃん力強いな。頑として動こうとしないオクトーの手を引いて、無理矢理に引きずってる。地面に轍ができてるよ……。
あ、なにか呪文っぽいの呟いた。
光の帯がオクトーを魔法陣の中心に拘束した。
「……絶許。お嬢様……恨みますよ……ッ」
なんという怨念が込められた重い声……。
ねえ、これから始まるの鑑定だよね? 魔王封印の儀じゃないよね?
「さあ、鑑定士さまやるのですわ! わたくしがオクトーを抑えてるうちに!」
「は、はい……ッ」
サンシーロちゃんもそれっぽいセリフ言ってるし。
――――あ、やばい、やばい!? オクトー【限界突破】しようとしてんじゃん!? そんなに嫌なの!?
「終わりました! 鑑定結果出ます!」
オクトーからドキドキした感情が伝わってきてるからはやく言ってあげて。
「オクトー様の『魂力』は――――」
「わくわくですわ」
「…………(ごくっ)」
「『魂力』は――――ッ!」
タメが長い! クイズ番組か!
CMに入る前にはやく言えや!
「――――ゼロです!」
「「「「「オクトーおめでとう!――――…………え?」」」」」
「…………え? ゼロですの?」
「「「「「え? ゼロ?」」」」」
あー…………やっちゃった。
隠れてたやつら、サプライズ要員か。
祝うタイミング間違えちゃったよ……。
「…………最期通告。お嬢様……言い残すことはありますか?」
「えっと~……。――てへ、早とちりしましたわ☆」
「…………【限界突破】」
あ、サンシーロちゃん逃げた。
サプライズは計画的に。
次の更新は12/27の7:00です




