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Ep.20 運命を超える一撃



目標補足ターゲットロック出力調整セレクト・ノーマル。貴方の翼は折れ、地に墜ちました。これでご自慢の高速機動戦闘はできません――――お覚悟をしてください」


 <GAAAGAAAAAAAAAAAA。GAAAA、GAAAAAAAAAAAAAAAAA!

 (木偶人形風情が図に乗るなよ。たかが推進器を破壊された程度で余はやられたりせん!)>



 いつの間にかゴブリン語理解してんだけど、俺……。

 ――――てか、このダンジョンの王さん。自分の呼び方が『余』なんだ。

 なんでそんな偉そうなんだよ。


「回答。実際偉いですからね。時代を経て呼び名は変わりましたが、エースゴブリンの大昔の呼び名は『ゴブリンキング』。ゴブリンたちの王です」


 うわ。ガチモンの王様か。そりゃあ強いはずだ。


 <GAAA……、GAAAAAA? GAAAAGAAAAAAAA

 (独り言を……。外と連中と話し中か? 本当にヒトは奇妙な技術を使う)>


 お前(ロボ)が言うな。


「貴方が言わないでください」


 あ、やっぱりオクトー基準でもロボ(あれ)はおかしいと思うんだ。


「肯定。時代に進むにつれてダンジョンはおかしな方向に()()を――――と、無駄口はここまでのようです。きますよ」


 なんだ……? ゴブ王のロボから黒いモヤみたいなのが……。


深淵霊素ノックスエレメントテネブラエ』確認。『深淵ダンジョンの王』固有の霊素です。あれが発現したということは――――本気を出すということです」


 ――――くるッ!


 <GAAA(爆ぜ散れ)>


「脅威確認。『炎霊魔銃マギアバクルス』に深淵霊素ノックスエレメントの集束を確認。――――やらせません。『三連射ラピッドファイア』」


 あ、オクトーが逸らしたゴブ王ロボの銃口が空に向いた。

 発射された黒いビームがぐんぐん昇って――――大爆発したぁ!?



「観測。深淵霊素ノックスエレメントを融合した第三霊石イグナリウムの一撃が爆轟となり、周囲一帯を消滅させる滅撃に変化しています。くらえばひとたまりもありません――――まあ、こちらの気を逸らす囮でしょうが。『後方避難バックステップ』『牽制射撃フィールドコントロール』」



 飛び出してきたゴブ王ロボの足を撃ち抜いた!?

 あいつ、いつの間にビーム剣取り出したんだよ。しかも刀身が真っ黒だし。



「現状確認。深淵霊素ノックスエレメントの効果により、威力減衰現象を確認。脚部装甲に傷なし。牽制の効果認められず、突撃を止めることはできませんでした。――――敵機接近。このまま後ろに引きながら撃ち続けます。(ぽいっ)」



 すげえ……。高速でバック走行しながら正確に射撃を当ててる。傷ひとつつけれないけど。――――ん? いま、なに投げた?



「回答。新式高密度エーテル榴弾です――――ボン」


 <GAッ!?!?!?>


「効果確認。エーテル榴弾、【炎鬼レッドデーモン】の足下で爆発。対象を派手に転倒させました。与えた損害ダメージは軽微――――ですが、このことから密着距離なら、深淵霊素ノックスエレメントの威力減衰現象を突破できると予想します」



 密着距離か……。

 ――――なあ、【限界突破リミットブレイク】ってやつはあと何秒使える?



「回答。残存第五霊石(エーテリアル)量から、非常用も含めて五秒が限界です」



 それを全部使い切ったらどうなる?



「全機能停止。意識を保つことも出来ず。次に第五霊石(エーテリアル)を補給されるまで眠りにつきます」



 それは『死』じゃないんだな?



「肯定。『死』ではありません。少しの間お休みするだけです」



 救出はくるんだよな?



「再度肯定。『深淵ダンジョンの王』を討伐すれば、必ず。当機はお嬢様を信じています」



 ――――うっし、わかった! 俺は覚悟を決めた!

 オクトーはどうだ?



「一意同心。もう済ませています。誓いを立てた、その時に」



 わかった。じゃあ、一緒に征こうぜ、オクトー! <アイハブコントロール!>



「ええ、一緒に征きましょう――――『ブルーム』出力調整セレクト・マックス第三霊石イグナリウム出力全開。<You (ユー)Have(ハブ) Ⅽontrol(コントロール)>」



 ◐【(オクト―) → (ハチ)



「いくぞ、ゴブ王!!! 覚悟しやがれええええ!!!」


 <GAAAッ!?>


 報告。【炎鬼レッドデーモン】の音声から驚愕の感情を確認。

 当機の行動の変化。前に出たことに驚き――――ハチの()()()に戦慄しています。


 昂る感情に呼応し、ハチの存在力――――『魂』が器からあふれ、輝いています。




「ハッ! よくわかんないが。俺って、今最高に輝いてるのか!」



 肯定。ええ、魔術的に。



 <GAAA、GAA! GAAAAA――――GAAAAAAAッ!!!

(ふざけるな、人形! 余は今回こそ輪廻を――――運命を超えるのだッ!)>


「運命を超えるだぁ? 残念だったな! それは俺たちが先約済みだ!」



 深淵霊素ノックスエレメントまとった『炎霊魔銃マギアバクルス』の連射を次々に避け、距離を潰し。彼我の距離は――――ゼロ。


限界突破リミットブレイク】発動。



 <GAAAA!>


「しっ!」



 深淵霊素ノックスエレメントまとった『炎霊熱剣イグニスグラディウス』の一撃――――ブレードで迎撃、成功。

 同時に耐久限界を超え、ブレード崩壊。



 <GAAAAAAAAAA!!>


「はっ!!」



 二刀流。反対側からも同様の一撃――――蹴り上げ、成功。

 同時に反動で表面強化装甲ボディシールド、全損。護りは消えました。



 <GAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!!>


「はああああああああああああぁぁあああッ!!!」



 エースゴブリン最後の抵抗。深淵霊素ノックスエレメントの暴走兆候を確認。

 ですが――――もう遅い。


 すでに当機たちの銃口は、貴方の心臓に届きました。



「ぶっ飛べ――――運命クソッタレ



 八式狙撃炎霊銃『ほうき(ブルーム)』零距離全力射撃――――ぶっ飛んでください。



 <――――ッ!?!?!?>



 炎霊イグニスの咆哮が闇を散らし、装甲を突き破り、心臓部コックピットに突入。

 そして――――。



 <GAA(見事だ)>


「どうも」



 心臓部コックピットを貫き通し、背面に抜けました。

深淵ダンジョンの王』エースゴブリン【炎鬼レッドデーモン】。急速に存在力が消失――――活動停止を確認しました。


 当機たちの勝利です。


 同時に【限界突破リミットブレイク】『刻限超過リミットオーバー』。

 こちらも活動限界に来ました。



「ふぅ……今日は色々あって疲れた。ちょっと眠る。おやすみー、オクトー……」



 了解。おやすみなさい、ハチ。

 本当に————ありがとうございます。


これにて『ダンジョンおそうじ編』終了しました。

次回はこの戦闘を見ていたリスナーの反応です。


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