Ep.18 貴方に託します『You Have Ⅽontrol』
≪一方その頃。配信を見てるリスナーたちの反応≫
【緊急】タイトル変更。生中継ですわ【ダンジョン】
同時接続数:三十万
【イクシーヴァ家公式】※固定コメント
:現在、『ダンジョンの王』が降臨したF級資源世界
【鬼棲の原生林】の内部を緊急ライブ中継中ですわ
みなさん、オクトーの無事を祈ってください
あと、SNSでわたくしを叩くのやめてください。泣いちゃいますわよ
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:あれから一時間……配信風景に変化なし……
:たまに戦闘音が遠くから聞こえる程度
映ってんのは見飽きた第一層のジャングルばかり……
:なあ、これ配信結晶動かせないのか!
:こっちはオクトー様の安否が知りたいんだよ!
:オクトー様が連れ去られた方向に移動してッ
:たぶん、あの深い断崖絶壁に連れていかれたんだ
:破壊された魔導人形が捨てられる大穴……
:おいイクシーヴァ家のポンコツお嬢コメント見てるか!
オクトー様が心配ならさっさとこれを動かせ!
:大穴の下までこれを動かしてくれ!
:見に行ったところで意味がない
あそこは深すぎて人形所有者が回収を諦めるところだぞ
配信結晶で中を覗こうとしたところで途中でリンクが切れるのがオチだ
:気持ちはわかるがみんな落ち着け
下手な動きして『王』にこの配信結晶を壊されたら終わりなんだ
これが現場と俺たちを繋ぐ唯一の情報源なんだ
:それにポンコツお嬢様は現在絶賛SNSで大炎上中だ
コメントを気にする余裕はないよ
【オーヴァル家公式☆】
:炎上中のサンちゃんの代わりにボクが情報をお届けするね~
・現在ダンジョンダイブ中の魔導人形。すべて連絡途絶
・同じくダイブ中の国家公認魔術師パーティ。1PT除きすべて壊滅
・リスポーンした魔術師の情報から、全滅も時間の問題との報告
・受け取った情報を基に討伐隊を編成中
・ついでにオーヴァル家私兵を動かしてオクト―ちゃん救出隊も編成中
・ダンジョンが開かれ次第突入予定
――――って感じだよ~
:さすがオーヴァル家のお嬢様! 有能すぎます!
:どこかの役立たずお嬢様も見習ってほしいわ
【ヴァンブレイク家公式☆】
:あ? いま己のこと役立たずって言ったか?
:言ってません!
:イクシーヴァ家のお嬢様のことです! オクトー様の主の!
【ヴァンブレイク家公式☆】
:ならよし
:…………あぶね~
:危うく発言したリスナーが消し炭に(以下略)
:↑ここまでが様式美
:こんな状況でもお約束の流れをやるのか……
:それにしても、オクトー様どうしているんだろう
:エーテリアル切れに加えて、大穴に落とされた
シールドが働かないから損傷は避けれないだろうな……
:おいたわしい……ッ
俺に攻性魔術を使える資格があれば救出に向かえるのにッ
:私も第一級・回生魔術を使えさえすれば……ッ
:国家試験に受かってもいないリスナーがなんかほざいてるわ
:きっとオクトー様は大穴の底でさびしい思いしてるはず……
:もしかしたら状況を悲観して泣いてるかもしれない
:くっ。俺たちにはなにもできないのかッ
彼女の悲しみを止めることはできないのかッ
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≪一方その頃。大穴の中、悲しみ暮れると噂のオクトーwithハチ≫
◐【8 → ∞】
「歓喜。I&A社製新型射出アンカー発見。これはいいものですよ、ハチ。むむ、こっちには第四霊石内蔵携帯高性能ブレード。新式高密度エーテル榴弾もあります。やはり他所様はいいものをもってらっしゃる。当家とはちがいますね」
あの~……オクトー?
「発見! お目当てのものを見つけましたよ、ハチ! 高品質第五霊石です! やはり当機はこれでないとダメです! 身体の調子が悪くなります。さきほど手に入れた二級品第五霊石と交換しましょう(ぺっ)」
あ、吐き出した。ばっちぃ。
――――じゃなくて、おーい、オクトーさん。
「残念。惜しむべくは主力銃が貧相なところでしょうか。こんな豆鉄砲を持つぐらいなら『ブルーム』のほうがマシです。規格に合った第三霊石だけ頂きましょう」
ダメだ。このメイドさん残骸の山を漁るのに大はしゃぎだ。
異次元っぽい収納に詰めるだけつめ込んでら……。
無表情なのに興奮してるのが手に取るようにわかるよ。
「はっ。――――こほん。なにか御用でしょうか、ハチ」
いや、「この破壊された人形たちの山から使える物探して使おうぜ」って言ったのは俺だよ? ついでに「赤いヤツが追加で落としてきたからそれも貰おうか」とも言ったよ。「価値がわかんないからオクトーに任せた」 ともね。
けど――――遠慮なさすぎじゃない?
最初、「当機は人様の物に手を付ける泥棒のような真似はできません」て言ってたオクトーはどこにいったんだよ。
「反論。これは窃盗行為ではなく、供養……そう、供養です。主を亡くした物品を使い、仇を討つことで道半ばで散った者の無念を晴らす弔いの一種です。なので泥棒ではありません」
で、本音は?
「真実。あまりにも素晴らしい品の数々だったので、有効利用することにしました。心配はいりません。バレなければ犯罪ではないです」
おおぅ……この太々しい態度。
オクトーが本当に人形なのか疑わしくなるわ。
「断言。当機は間違いなく魔導機械人形です――――修復完了。さきほど拝借した、回生薬の効果確認。ならび、表面強化装甲の再充填終了。状態は万全に戻りました――――いつでもいけます」
そっか。じゃあもう一度目的のおさらいだ。
「了解。当機たちの目的はこの墓場からの脱出。そして『深淵の王』の討伐――――は、通過点です」
ああ、俺達の目的は『生きる』こと!
「補足。ただ生きるだけではなく。人々の記憶に残るほど鮮烈に生きること。後世までに語り継がれるくらい凄まじく、強烈に生き抜くこと。運命の日を越えて、これからもずっとこの世界で生き続けるのです」
そうだ! 理不尽な運命なんてブッ飛ばして、二人でずっと生きてやろうぜ!
「かしこまりました。――――では、誓いの言葉を」
俺とオクトーは対等の相棒だ。
だから、俺はお前の意思に反することをしないと誓う。
最期のその時まで俺達は一緒だ。
「続けて当機も――――ハチと当機は運命共同体です。
だから、当機はハチの生存戦略に従うことを誓います。
終わりが二人を分かつまで当機たちは一緒です」
…………なんかこれ、結婚の誓いみたいで恥ずかしいね。
「締まりませんね…………。最後までカッコつけてください。――――まあいいです。駆動系安全装置解除。『ブルーム』出力調整。第三霊石出力全開。目標『天』。目標補足――――準備完了」
じゃあ、やるか!
「了解。トリガーを――――いえ、当機の運命を貴方に託します。
<You Have Ⅽontrol>」
◐【∞ → 8】
「了解だ! <アイハブコントロール>!
これが俺達の反撃の狼煙だ! いっけーーーーーッ!!!」
観測。『ブルーム』全力射撃。天へと高く昇っていきます。
――――反応感知。高エーテル体の急速接近を確認。
『深淵の王』はこちらの熱烈なラブコールに気づきました。
到着予測――――三十秒前。
「ハッ。第二ラウンドの開始だッ!」
次回の投稿は12/20の7:00です。




